DHA・EPAの効果
脳によいとして知られるDHA(ドコサヘキサエン酸)ですが、実際にどのように脳に作用し、記憶力や学習能力の向上に役立っているのでしょうか?DHAの脳への働きと、記憶力を活性化させるメカニズムついて解説します。

DHAと記憶力の関係
DHAは「脳によい」とされていますが、実際に記憶力にどのような影響を与えるかを調べるため、18歳~45歳にDHAを摂取してもらい、コンピュータのテストで記憶力を調べる研究が行なわれました。この実験結果によると、DHAを摂取してもらった方が記憶力は高まるとわかりました[1]。
また、DHAが含まれた母乳と含まない粉ミルクをそれぞれ与えた未熟児の赤ちゃんでは、母乳を与えて育てた方が、そうでない方に比べて知能指数が高くなったという報告もあります[2]。
そうした研究はほかにもあり、2017年にも、初乳の中でのDHAを含む多価不飽和脂肪酸の水準が高い場合ならびに母乳で育てる期間が長い場合に、子供のIQが高くなると報告されています[3]
このように、脳の活性化と深く関係していることがわかったDHAですが、これはどのような作用によるものなのでしょうか?
実は、DHAは脳を構成するおよそ140億個の脳細胞膜に存在しており、特に、記憶力や学習能力と関係する海馬には、脳のほかの部位に比べて2倍以上存在しています。そのため、DHAは脳の栄養素とも呼ばれ、海馬にあるDHAの量が頭のよさにつながるともいわれています[4]。
また、よく「頭がやわらかい」「頭がかたい」などと表現しますが、DHAはその言葉どおり、頭をやわらかくしてくれる成分でもあります。というのも、脳内に取り込まれたDHAは細胞膜をやわらかくしてシナプスを活性化し、脳の伝達性を高める働きをするためです。つまり、DHAには、神経伝達物質を受け取る脳の神経細胞(ニューロン)の感度を上げる働きがあるのです[4]。
DHAは脳に入りこめる成分のひとつ
前述のとおりDHAは脳の中に多く含まれている成分であるため、DHAを摂取すると、まず脳に優先的に取り込まれます。脳の入口には血液脳関門というものがあり、ここで脳に必要な物質とそうでない物質がふるいにかけられ、必要ないものは排除されます。DHAは、この血液脳関門を通過できる数少ない物質であるため、継続して摂取することで、記憶力はもとより、脳細胞全体の活性化が期待されるというわけです。ちなみに、同じオメガ3系の脂肪酸であるEPAは、ここを通過することはできません[5]。
受験勉強中の学生や、認知症の予防に熱心な世代に向けたDHAサプリメントが多いのも、上記のように脳を活性化して記憶力を向上させる働きが知られるようになったためです。
人間の脳細胞は20歳を過ぎたあたりから減少し始め、1日に約10~20万個ほど死滅していくといわれています[4]。しかし、DHAを摂取することで、残った脳細胞を活性化して減少する脳細胞を補い、記憶力や学習能力全般の維持、向上は可能と考えられています。DHAの脳に対する効果に年齢は関係がないともいわれているので、脳細胞の活性化のためにも、DHAが多く含まれた魚などを意識的に食べましょう。食事での摂取が難しい方は、サプリメントでの摂取も選択肢になります。
参考文献
- [1]Stonehouse W, et al. DHA supplementation improved both memory and reaction time in healthy young adults: a randomized controlled trial. Am J Clin Nutr. 2013 ; 97(5): 1134-1143
- [2]Lucas A et al. Breast milk and subsequent intelligence quotient in children born preterm, Lancet 1992; 339(8788): 261-264(参照2017-06-30)
- [3]Bernard JY, et al. Breastfeeding, Polyunsaturated Fatty Acid Levels in Colostrum and Child Intelligence Quotient at Age 5-6 Years. J Pediatr. 2017; 183: 43-50
- [4]富士フイルム. ”脳を元気にするDHA” 富士フイルムヘルスケア未来研究所. http://info.fujifilm.co.jp/healthcare/dha/3-1.html (参照2017-06-30)
- [5]マルハニチロ. “DHA FAQ” マルハニチロ. https://www.maruha-nichiro.co.jp/dha/dha70000.html (参照2017-06-30)