湿疹やかゆみ、肌荒れといった症状を引き起こすアトピー性皮膚炎を、乳酸菌・ビフィズス菌が改善してくれるというのは本当なのでしょうか。その効果について、詳しく紹介します。

最近の研究で、乳酸菌やビフィズス菌がアトピー性皮膚炎に効果があることがわかってきました。では、どのように作用してアトピー性皮膚炎を抑えてくれるのでしょうか。また、どのような種類の乳酸菌やビフィズス菌が効果的なのでしょうか。
アトピー性皮膚炎を緩和させる乳酸菌・ビフィズス菌の作用
以前は子どもがなるものと考えられていたアトピー性皮膚炎ですが、現在では大人になってから発症する人も増加中。アトピー性皮膚炎の原因ははっきりとはわかっていませんが、遺伝によるアレルギー体質のほか、ストレスや食生活など生活環境が関係して発症することもあるといわれています。
●アトピー性皮膚炎のメカニズム
アトピー性皮膚炎を含むアレルギーは、人間の体に備わる免疫機能が異常な反応を示したときに起こる症状です。
免疫機能の主役は、白血球内のリンパ球に存在する免疫細胞です。免疫細胞には、NK細胞やキラーT細胞、B細胞などさまざまな役割を持つ細胞があり、ウイルスなどの外敵が侵入すると攻撃して退治します。その際、次に同じ敵が攻めてきたときに即攻撃ができるよう、「IgE抗体」を作ります。この抗体が過剰に作られることで、アレルギー反応を引き起こす要因になります。
また、免疫細胞である「Th1細胞」と「Th2細胞」も、アレルギー反応を起こす要因に。「Th2細胞」にはアレルギー反応を促す働きがあり、「Th1細胞」にはアレルギー反応を抑える働きがあります。このふたつのバランスが崩れることで、アレルギーが発症します。
●乳酸菌やビフィズス菌がアトピー性皮膚炎を緩和させる仕組み
アトピー性皮膚炎患者は、腸壁のバリア機能がもろくなっている特徴が見られ、その部分からアレルゲンが侵入しやすくなります。乳酸菌やビフィズス菌には腸内環境を整えて、腸壁を修復する働きがあり、アレルゲンの侵入を抑えます。
また、「IgE抗体」の働きを抑えたり、「Th1細胞」と「Th2細胞」のバランスを整えたりする働きもあり、これによってアレルギーの発症を抑える効果も期待できます。
アトピー性皮膚炎に効果が期待できる菌の種類は…
アトピー性皮膚炎のアレルギー反応を緩和させる効果が期待できるものには、以下のような乳酸菌やビフィズス菌があります。
●L-92乳酸菌
アトピー性皮膚炎に悩む小児に対して、 L-92乳酸菌の粉末を含む食品を摂取したグループと摂取しないグループに分けて皮膚の症状の変化を数か月間観察。すると、摂取したグループの方が、あきらかに症状が改善される結果が得られました
。
●乳酸菌KW3110
マウス実験において、「LgE抗体」の増加が抑えられ、「Th1細胞」と「Th2細胞」のバランスが整い、アレルギーの症状緩和が確認されました。
●ビフィズス菌LKM512
生きたまま腸まで届き、腸内で善玉物質であるボリアミン(細胞の新生を助け、腸を元気にする物質)を作りだします。このLKM512を含むヨーグルトを、成人型アトピー性皮膚炎患者に4週間摂取してもらったところ、かゆみの自覚症状が改善。また、腸内のボリアミン濃度の上昇も認められ、ボリアミンによって弱くなっていた腸管バリア機能が回復し、アレルゲンの侵入を減少させる効果も確認されました。さらに、Th1細胞とTh2細胞のバランスが整い、アレルギーを抑えるTh1細胞が高まったこともわかっています。
●植物性ラクトバチルス乳酸菌
酒粕から分離された乳酸菌で、花粉症やアトピー性皮膚炎などのアレルギー症状を緩和する効果があります。アトピー性皮膚炎の成人患者を対象にした試験では、植物性ラクトバチルス乳酸菌100mgを摂ったグループに、アレルギー症状を緩和する効果が確認されました。