カルシウムの仕事は、丈夫な骨を作るだけではありません。骨粗鬆症や高血圧などの生活習慣病を予防し、精神を安定させる効果があるとされています。

カルシウムは、人間にとってとても重要な栄養素です。どのような効果があるのか解説していきます。
骨粗鬆症の予防
骨粗鬆症とは、骨の密度が粗くスカスカになった状態のことです。カルシウムの不足は、骨粗鬆症の最も重要な要因になります。
血中のカルシウムが不足すると、骨のカルシウムを溶かし出して補充するため、骨が隙間だらけになる可能性があります。
これを防ぐためには、毎日カルシウムをしっかり摂取することが大切です。人体に必要なカルシウムを毎日とり入れることで、骨粗鬆症を予防することができるとされています。成人に必要なカルシウムの量は、1日600ml程度とされています。
骨粗鬆症は、摂取するカルシウムが不足するとすぐに異常があらわれるものではなく、自覚症状のないまま時間をかけてじわじわ進行していく恐ろしいものです。
歳を取ってから骨がもろくなっていることに気づき、慌てて摂取しようとしても、老化のせいで腸の働きが衰えているので、カルシウムの吸収率も下がっています。
そうならないためには、若いうちにカルシウムを骨中にしっかりと蓄えておくことが必要です。
高血圧や動脈硬化の予防
カルシウムが不足している時、私たちの身体は血液中のカルシウムを一定に保とうとします。そのため、副甲状腺ホルモン(PTH)のはたらきによって骨からカルシウムが溶かし出されます。
このとき、骨のカルシウムを必要以上に取りだしてしまう現象がしばしば起こります。
余ったカルシウムイオン(血液などの液体に溶け出しているカルシウムをカルシウムイオンと呼びます。)は、血管の細胞膜など体のあちこちに蓄積し、高血圧や動脈硬化、尿路結石、骨粗鬆症といった生活習慣病を引き起こしてしまうのです。
このように、「細胞外のカルシウムイオンが不足すると、骨から過剰にカルシウムが溶かし出されてしまい、余ったカルシウムが身体のあらゆる場所に溜まる」ことを「カルシウムパラドクス」と言います。
カルシウムを十分に取っていれば、カルシウムパラドクスが原因で起こる高血圧や動脈硬化、尿路結石などを予防できる可能性があるのです。
次に高血圧に関してです。先天性の高血圧の人には、細胞内カルシウム代謝異常がみられることがあります。実際にこのような方にカルシウムを投与すると血圧が下がることがあります。
食塩などの摂り過ぎによる高血圧や、ストレスなどが原因で起こる低レニン性高血圧の人に対しても、降圧効果が高いことが報告されています。
カルシウムを積極的に摂取すれば、カルシウムパラドクスとそれによってもたらされる病態を予防することができるとされています。
糖尿病とカルシウム
糖尿病は、血液中にブドウ糖が増えすぎてしまう病気です。すい臓から分泌されるインスリンの量や作用に異常が起きることで発症します。
カルシウムは、このインスリンと強い相関関係にあるのです。
カルシウムが不足すると、カルシウムパラドクスに陥る可能性がありますが、このカルシウムパラドクスによって、食後のインスリンの分泌に異常をきたす恐れがあるのです。
つまり、カルシウムを適切に摂取できていれば、カルシウムパラドクスが原因となって発症する糖尿病を予防することが期待できるのです。
カルシウムはイライラ防止にも役立つって本当?
「イライラには、カルシウムがいい」とよく耳にします。しかし、そういった世間一般の認識は、少し間違った部分もあります。
イライラを鎮める役割をになうのは血中のカルシウムですが、これは不足すると骨から調達されます。それゆえ、摂取するカルシウムの量が不足しても、急に血中のカルシウムが不足することはありません。
つまり、イライラするときにカルシウムを摂ると気持ちが治まる、といった現象は起こりません。
しかし、カルシウムとマグネシウムのバランスを整えると、情緒不安定が改善する効果があるとされています。最適なバランスは、カルシウム:マグネシウムの割合が『2:1』です。
マグネシウムが多く含まれる食品には、大豆製品・魚介類・ごまやアーモンドなどナッツ類があります。
ただし、カルシウムとマグネシウムは、一方を多く摂りすぎるともう一方が減少するという関係があるので、両方をバランスよく摂ることに気をつけてください。
カルシウムは骨を作る以外にも、人間の体にとって重要な役割を果たしてくれます。日本人はカルシウムが不足しがちな傾向があるので、意識してしっかり摂るとよいでしょう。