亜鉛は人間が生命を維持するうえで必要不可欠で、さまざまな化学反応に関わっています。亜鉛は人体でどのような働きをしているのでしょうか。また、亜鉛を多く含む食品にはどのようなものがあるのでしょうか。

亜鉛は人体に重要な必須ミネラルであることを知っていても、人体においてどのような働きをするかを知らない人は多いのではないでしょうか?亜鉛がなぜ必須ミネラルに分類されるのかを知っておきましょう。
亜鉛とは
亜鉛は、食事やサプリメントで摂取することが必要な必須ミネラルのひとつです。人体が生命を維持するために必要なさまざまな化学反応(代謝)に必須である酵素を構成するミネラルです。代謝が行われることで、人体は食品からエネルギーを作りだしたり、細胞分裂を行い成長したりします。
亜鉛の働き
人体には3000種類を超える酵素がありますが、亜鉛はそのうちの300種類以上に関わる重要な物質です。酵素として人体のさまざまな代謝を促進させる働きをしています。亜鉛を構成成分とする酵素の代表的な働きは以下のようなものになります。
- 細胞分裂
- 新陳代謝
- 皮膚や髪の毛の健康を保つ
- 性機能の維持
- 味覚の維持
- 免疫力を高める
細胞分裂に関わる必須ミネラルのため、胎児や乳幼児など細胞分裂が活発な時期に特に必要になります。仮に不足してしまうと成長障害などを引き起こす可能性があります。大人の場合であっても新陳代謝に関わるため、傷の治癒や肌のターンオーバー、爪や髪の再生のために必要です。
亜鉛と酵素の関係
亜鉛は70種類以上の酵素の活性中心になっています。また、酵素タンパクの構造の安定化にも一役買っています。亜鉛酵素でなくても、亜鉛によって活性が調節されている酵素もたくさんあります。
- 炭酸脱水素酵素・・・・酸塩基平衡、肺や組織における二酸化炭素の交換促進に必要です。
- 骨アルカリフォスファターゼ(骨ALP)・・・・骨芽細胞に多く含まれ、骨代謝に必要です。
- タンパク代謝に関わる酵素・・・・プロテアーゼ、カルボキシペプチターゼなど
- 糖代謝に関わる酵素・・・・アルドラーゼ、コハク酸脱水素酵素など
- 核酸代謝に関わる酵素・・・・RNAポリメラーゼ(RNAを合成)、DNAポリメラーゼ(DNAを合成)、チミジンキナーゼなど
- アルコール脱水素酵素・・・・アルコールの代謝に必要です。
- 乳酸脱水素酵素・・・・乳酸の代謝に必要です。
- Cu-Zn-スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)・・・・活性酸素を消去します。
- 細胞外スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)・・・・活性酸素を消去します。
生体内での亜鉛の分布
亜鉛は代謝に関わるため、人体のすべての細胞に分布しています。精子の構成成分でもあるため、男性の場合は前立腺に多くに分布しています。また、眼の脈絡膜にも多くに分布しています。
全身では、成人で亜鉛は約2g存在しており、鉄は4g程度なので半分の量です。鉄についで体内で2番目に多い微量金属といえます。
亜鉛の吸収と排泄
亜鉛は主に小腸(特に空腸)で吸収されますが、その吸収率は3割程度です。
また、代謝された亜鉛は胆管や膵管を経て、胆汁や膵液などの消化液に含まれて未吸収の亜鉛とともに糞便中に排泄されます。
上皮細胞に貯蔵されていた亜鉛も、腸管粘膜の剥離とともに排泄されます。これは、体内の亜鉛が過剰にならないようにする生体システムです
亜鉛は一部、汗や尿でも排泄されます。消化液として排泄された亜鉛の大部分は腸管から再び吸収され、腸肝循環を行います。
亜鉛の60%は骨格筋にあり、飢餓および筋肉の分解は、亜鉛の尿と便への排泄を増加させます。
男性の前立腺液は高濃度の亜鉛を含んでおり、1回の射精で1㎎に達する亜鉛が含まれています。一方、女性の月経にともなう亜鉛の喪失は小さく、1日あたり0.01㎎です。
亜鉛の喪失は、炎症性の内臓疾患では小腸からの損失が増大します。また、腎疾患やアルコール中毒では尿からの損失が増大することが報告されています。
アルコール多飲者は亜鉛不足
お酒などを飲んだ後、体内でアルコールをアルデヒドに分解するときに必要な「アセトアルデヒド脱水素酵素(アルコールデヒドロゲナーゼ)の活性」には亜鉛が必須です。アルコールの解毒には亜鉛がたくさん消費されるというわけです。そのため、アルコール多飲者は通常、亜鉛欠乏にあります。肝臓中亜鉛濃度とアルコールデヒドロゲナーゼ活性の間には明らかな相関があります。二日酔いを起こしやすい人は亜鉛不足も一因かもしれません。
不足しがちな亜鉛を摂取するためには
亜鉛は必須ミネラルの中でも特に不足しやすい成分です。亜鉛の吸収率は約30%と考えられています。吸収率が低いため亜鉛が不足しないように摂取するためには、亜鉛含有量の多い食品を摂取することが必要です。亜鉛は比較的動物性食品に多く含有されており、特に牡蠣、レバー、牛肉、カニなどに多く含まれています。
植物性食品では、凍り豆腐やきな粉といった豆類、アマランサスやオートミールといった穀物類、抹茶やココアといった茶葉類などに比較的多く含まれています。しかし、動物性食品と比べると少なく、どれも大量に食べられるものではないため、ベジタリアンの人などはサプリメントなどで摂取するとよいでしょう。