ご主人さまは無料で、国立音楽大学にオルガン演奏を聴きに行ってきました
「今日の大学のホールは、あの有名な前川国男設計のホールだったよ」
「そお、知らないわそんな人」
「上野の駅の真ん前の、文化会館設計した人だよ」
「あらそう」
「それがね,つくずく考え込んでしまったよ」
「どうしたの?」
「ホールの内壁がコンクリートの打ち放し仕上げだったんだ」
「それがどうしたの」
「それがね、そのコンクリートの見た目が、なんともいえないんだ
まるで木のようにあたたかく、ほんのり色ずいて、何ともいえない雰囲気があるんだ
あれは職人さんが丁寧にじっくり、コンクリートを打ち込んだんだね
それは前川事務所の監理方針のなせる技、ということだよ
俺が考え込んだのは、あれは絶対工業化製品では作ることができない物、ということがはっきりしていた
ことなんだな。
本当に質の良いもの、心のこもったものは、手わざ、職人の手ずくりでしか、達成できない
それを目の前に突きつけられた気がした
そうすると、工場で前もって作られるほとんどの製品というのに囲まれている我々は
本当の豊かさ、質の良さとは、違った環境で暮らしているということだよ...
そういえば納豆も子供のころ食べたのと、どうも味が違うんだよな
あのころのはなんかこう、滋味みたいなものがあった
最近のはなんかさっぱりしてるんだよ
ぜったい工場で大量に作ってるせいだよ
マグロも手軽に食べられるが、こちんこちんの冷凍じゃ
肝心の味がどっか行ってるよね」
「まあそれは、あなたの稼ぎのせいね
本当のマグロもあるところにはあるんだし」
ワン