映画『精神』公式サイト
精神病院の“カーテン”の向こう側
【解説&ストーリー】
「選挙」の想田和弘監督が、タブーとされがちな“精神病”に光を当てたドキュメンタリー。前作と同じようにナレーションや音楽を一切使わない手法で、心の病と向き合う人々の素顔をありのままに映し出していく。
岡山県の精神科診療所“こらーる岡山”。虐待でわが子を死なせて以来、幻聴に悩む女性や過労でノイローゼになり40年近く精神科に通う男性など、冷静に己の病状を語る患者の姿から、正常と異常の線引きの難しさを訴えかける。
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【感想】
『精神』というドキュメンタリー映画が公開されていることは、あるブロガーさんが観た感想を読んで知り、地元でも単発1日で公開されたのですが、都合がつかず観れずにいました。7/24にセルDVDが出たことは知ったのですが、レンタルはしないのかと思っていたら、9月に入ってレンタル開始になったようで、早速借りて観ました。
監督は「精神障害者と健常者との間の見えないカーテンを取り払いたかった」そうです。また今まであまりメディアが触れてこなかった精神疾患の世界を扱ったことが、この作品の評価を上げる一因でもあると思います。しかし今の時代、うつ病や統合失調症などなど、程度の差こそあれ、なんらかの精神疾患を患っている人は結構な割合でいると思うのです。そんな中で「カーテン」と言われても、むしろストレス社会の中で戦う現代人にとっては、他の生活習慣病などの病気と同じく、精神疾患も「明日はわが身」と言う方がぴんとくるのではないでしょうか。
監督の主張するタブー視するほどの偏見がはたして本当に存在するか、正直私もよくは分かりませんが、自分自身がうつ病という精神疾患を患い、精神科に通院している身にとっては、この作品で描かれていることはわりと想像の範囲内ではあったかと思います。なので、もう一歩踏み込んだ内容を期待していました。作中描かれる診療所はアットホームな雰囲気で、先生も患者さんの話を親身に聞いてくれる方のようですが、個人的には、もっと都心部や他の病院の様子も見てみたかった気がします。『精神』と題するからには、もうすこし普遍的な現状を伝えて欲しかったです。
統合失調症やうつ病や躁うつ病の方が出てきました。病名は分からないけれど、非常に怒りっぽい方や、非常に賢くユーモア満点の方、そして世間一般に言う“まとも”にしか見えない方もいらっしゃいました。患者さんは、どの方も『精神病患者』とは思えません。むしろ、純粋で感受性が豊かで思いやりがある、とても味わい深い人たちという印象でした。 この映画を観た後、健常者と精神病者のちがいが、分からなくなりました。概してカメラの前で彼らは雄弁でした。非常に感じ入る言葉があり、いくつかの詩が胸に響きました。病と闘う姿に学ぶ事が多々ありました。色んな病気があり、色んな症状があるにせよ、みな個性的なのでした。みな違ってそれでいいじゃないかと思いました。病気もひっくるめてその人の個性なんだと、そう思える社会になったらいいなと思いました。
最後に亡くなった方の名前が出てくるんですが、映画の中では笑ってみんなと話していた人が亡くなったんだって知ると辛かったです。 死因は明らかにされていませんでしたが、多分どの方も自殺のような気がします。普通の顔をして普通に生きてる人のはずなのにぽっといなくなってしまう。残念でなりません・・・
現在、精神疾患を患っている人にも観ていただきたいですが、ぜひ、精神疾患とは無縁の方にも、一度観て頂きたいと思いました。
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