『マイレージ、マイライフ』オフィシャルサイト
独身中年男が知る人生の“荷物”の重さ
【解説&ストーリー】
「JUNOジュノ」のジェイソン・ライトマン監督が、ドライな人生を送ってきた中年男の心の変化を描く人間ドラマ。リストラに代表される企業の効率第一主義や、家庭という責任を背負いたがらない男の増加など、今日的な問題に切り込んでいる。
年間322日間、出張で全国を飛び回り、企業に代わって従業員にリストラを通告するリストラ宣告人のライアンは、他人と深くかかわることを避けて生きてきた。家族や恋人、友人など、人生に余計な“荷物”はいらないと考えていた彼だったが、2人の女性との出会いが、かたくなな彼の心をほぐしていく。
[劇場公開日/2010.3.20][DVDレンタル日/2010.8.29]
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【感想】
会社の上役に代わって従業員に解雇通知を行う敏腕“リストラ宣告人”のライアン(ジョージ・クルーニー)。仕事で年間322日出張する彼のモットーは、人間関係のしがらみをたち切り、キャリーバッグに入らない荷物は持たないと云う超効率主義。目下の生きがいは、航空会社のマイレージを1000万マイルためること。そんな彼がある日、同じ旅暮らしのキャリアウーマンのアレックス(ヴェラ・ファーミガ)と出会い、そして新入社員ナタリー(アナ・ケンドリック)の教育係を任された事から、完璧であった筈の人生設計が狂わされていく。
まずライアンとナタリーに施された、人間関係の希薄な現代社会を象徴するアンビバレンスなキャラクター設定が抜群に上手い。例えばライアンは他人に深入りしない人生を送っているにも関わらず、仕事でクビを宣告する際は本人を思いやり、直接会う事を主張する。一方、現代っ子の申し子であるナタリーはコスト削減を掲げ、ネットを介しての解雇通知を提案するものの、実生活では恋人に首ったけで理想に生きている。(それがメールで一方的に別れを告げられ、動転してしまう皮肉なエピソードが傑作だ)そんな二人が衝突を繰り返して科学反応を起こし、結果、自分の信じていた人生観に疑問を持つ展開が実に鮮やかである。
しかし、そんなライアンの価値観を一変させる転機となる妹の結婚式シーン等のインパクトが薄く、ラストの一連のシーン並びも唐突で、心境変化にいまいち説得力がないのがツライ。とは云え、前半においては、宣告シーンにおける本物のリストラ経験者演じる心の叫びには時勢柄、どうしても身を乗り出して観てしまうし、ライアンこだわりの出張術も大変興味深く、その上、上記した二人のかけ合いが随時笑いを提供する為、飽きさせる事がない。
それにやっぱり役者陣が揃って好演をみせているのが高ポイントだ。ジョージ・クルーニーはもちろんの事、脇を固める2大女優が素晴らしい。ヴェラ・ファーミガは妖艶な魅力を撒き散らし、アナ・ケンドリックは等身大のチャーミングな魅力を発散、二人とも個性を見事出しきっている。この3人のアンサンブルが、とにかく完璧!

知らず知らずの内に真の幸福からかけ離れた理想を、人間に追い求めさせてしまう社会。それに気付いて、生き方を変えようと決断したライアンの行き着く先は…?!ラストをあえて客にゆだねる幕切れとなっている本作。これはこれで余韻があっていいが、それまでのノリを考えるとやっぱり重い。個人的にはハッピーエンドにして欲しかったところである。
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