私は家庭裁判所に持ち込むことにしました。


家庭裁判所からの通知が来て夫は向き合ってくれるかと期待していました。でも、何も変わりませんでした。


「なんだよ、これ。」


「家庭裁判所にかけたから!」


「何勝手なことしてんだよ!」


「暴れたら不利になるからね。」


「あー、もうむしゃくしゃする!」



夫は部屋の扇風機を蹴っ飛ばして壊すと暴れ始めました。


「やめてよ!暴れないでよ!警察呼ぶわよ!」


「てめーが勝手な事してんだろーがよ!」



怖くて話などできる状況ではありませんでした。


この繰り返しだったからもう、あの人は変わらないと諦めて、未来に希望がなくて病気を招き入れて死のうと思っていたのでした。 


でも、今、その私が、あの人に離婚を突きつけて真剣に取り組もうとしていました。



「もう、一緒にいたくないの。夫婦なのにレスで、触れると嫌がられて、毎日毎日怒鳴られて暮らすのは嫌なの。」


「怒鳴ってねーだろ!お前が怒らすようなこと言うからだろ。」


「そうね。あなたを怒らせないように起きる時間も、寝る時間も仕事する時間も変えて同じ家に住んでるのに顔を合わさないように暮らしてた。気を遣ってあなたの自由を尊重してた。でも、そんな暮らしになんの意味があるの?私に触れられたくないくらい私を嫌いならそばにいなけりゃいい。夫婦でいる価値はない。」


「俺は不便を感じない。このままでいい。」


「歩み寄ってくれって頼んだよね。簡単なことだったよ。朝会ったらおはようと挨拶をする。起こしてもらったらありがとうとお礼を言う。子供だって出来ることだよ。」


「そんなこと気にすんなよ。大したことじゃねーよ。」


「大したことじゃないけど、お願いしたよね。でも、努力してくれなかった。」


「そんなキーキーすることじゃねーよ。」



私は一呼吸置いて、静かに話しました。


「わかってるよ。あなたはまともなことをするのが照れ臭いんだよね。真面目にすることに対して嫌悪感が働いて、ぶっきらぼうにしてしまう。だからきちんと挨拶をすることができないんだよね。なんだか気恥ずかしいとか、なんだかそんな真面目な奴のすることなんて俺には向いてないとか考えているからだよね。だから私に対する態度を改めてられないんだよね。」


あの人は少しクスッと笑って、


「わかってるじゃん。だからいいだろ。」


「私といる時だけならそれも理解してあげる。でも、私の大事な家族にまでそんな態度で許されると思ってる?私の子供、私の親、私の妹、私の友達、知り合い、仕事の人。」


彼はふてっくされたようにタバコに火をつけました。


「嫁の家族に会わないって、それで通用すると思ってるの?」


「ダメなのかよ!」


「ダメだったじゃない!娘の結婚式にに妹と喧嘩してみんなを不愉快にした。」


「それは、しょうがねーだろ!お前の妹がわけわかんねーこと言うからだろ。」


「私の大切な人たちから嫌われて疎遠にされた。」


「悪かったよ。」


「悪かった?そこはごめんなさいじゃないの?すみませんでしたと謝罪するところでしょ?」


「だから俺は謝ったりするのが苦手なんだよ。うっせーな。すいませんでした!これでいいんだろ?」


「そんな態度で謝ったと思ってるの?かえって相手を馬鹿にしてるわ。」


私は、気持ちがヒートアップしていくのをなんとか抑えて落ち着いて話そうと努力していました。


「いいよ。あなたは自分を変えられない。私がお願いしたことは一つもできなかった。だから離婚しましょう。」


「なんでそうなるんだよ!」


「あなたは改善できなかったし、変われない。もう、終わりよ。」


「あー、もうなんだよ!」


彼は苛立ちを露わにしてまたタバコに火をつけて、ライターを投げつけてきまた。



この後いつも暴れて暴力を振るって私を制圧して、問題をうやむやにしてしまうのが夫の常套句でした。

それが怖くて諦めていましたが、今回はちがいました。

私は息子を呼びました。



「ただの夫婦喧嘩じゃないからちょっと見届けて貰える?約束を決めたいの。」


改善して欲しいところを紙に書いて、譲歩するところも書いて、約束を取り付けることにしました。


期間を設けて、やり直すので有れば約束を守って改善に努力する。期限は6ヶ月。


息子の前で話し合い、譲歩するところは譲歩して、時間をかけて少しずつ改善してくれたら、離婚もしないと話しました。


まずは期限を決める事から始めたのでした。