皮肉なもので、結婚して子供も出来て家族の形を作ったのに、健斗との結婚生活は我慢と妥協の日々でした。


むしろ秘密の関係を守ってきた、何の約束も保証もない宗との関係の方が、濃厚で甘美で愛情に満ち溢れていました。


なのに、健斗は去らなかったリオンに愛情を確信したと言うのです。


甘美な「愛してる」は言えなかったけど、何もかも許してくれてずっとそばにいることに、「深い愛情」を感じたのでした。

自分勝手な健斗を大きな愛で許してくれて日々変わらず過ごしてくれたリオンに深い信頼を感じていたのでした。



少しの咳を苦しげにすると、健斗は笑って言いました。


「僕は君と結婚できて幸せだったよ。とても満足してるんだ。ありがとう。」


そう言うと、静かに目を瞑ったのでした。


それから数日して、健斗は旅立ったのでした。