全ては健斗がしたことにリオンが変化していった結果でした。健斗に傷つけられるたびに健斗から気持ちは離れて、宗へ気持ちが傾いていきました。



リオンは健斗との人生を選んで全うしようとしていました。それを少しづつ壊してしまったのは健斗でした。


もし健斗がリオンとの暮らしに努力していたら

もし健斗があんな事をしなかったら


もっとリオンは健斗寄りの人生を歩んでいたかもしれません。


リオンは、健斗との結婚生活に期待せず、事を荒立てず、静かに暮らすようになりました。いや、むしろ健斗の家の家政婦になったつもりで、家に行ってたのかもしれません。


宗がいてくれるという気持ちはリオンにいつでも還れるところがあると思わせました。この愛に還れると思う気持ちは心の厚みとなって何にでも立ち向かえる強さを持たせてくれました。


宗とリオンはよく手を繋ぎました。手が語るというのでしょうか、2人の気持ちは手からも伝わりました。車に乗っても宗の左手はリオンの右手をつかんでいました。


「運転中は危ないから両手でハンドル持って。」


「この車は自動運転だから大丈夫なんだよ。」

「そんな訳ないじゃない。」

「俺の手はリオンと繋がるためにあるから」

「もう、しょうがないなぁ。」

右手だけで器用に運転する宗は、どんな時もリオンの手を握っていました。

どんなに深い眠りについていてもリオンが手に触れると優しく握り返してくれました。優しく撫でて愛してることを手で伝えてくれました。リオンもギュッと握り返してそっと手を離しました。ゆっくり眠ってもらうために。