健斗は夜の盛り場で遊ぶようになっていました。


キャバクラ遊びで、若い子との浮気が始まったことに気づいた時にリオンは言いました。


「健ちゃん、家庭を壊すつもりなの?」


「そんなつもりはない。」


リオンは家庭生活を継続するための最後の約束を健斗にお願いしました。


「じゃぁ、私を悲しませないようにバレない浮気をして。私を完璧に騙して。そしたら私も黙って騙されるから。そして、私がおばぁちゃんになった時に、実はあの時浮気してたんだよって告白して。私は初めて聞いたフリをするから。」


「わかった。」


ちょっと若い娘が寄ってきて、胸躍らせる行為をするから、くたびれた親父になった男は青春を取り戻したかのように、夢中になってしまうのです。でもそんな若い娘は本気になる訳もなく一過性の浮気は熱が覚めればすぐに変わらない日常に戻る。遊びの浮気にカリカリとして大切な家族を壊すような事をして、騒ぐ必要はないとリオンは考えていました。


家庭を守れるのなら他のことは寛容に受け止めて我慢しました。


でも、そうして行くうちにリオンが持っていた健斗への愛情はすっかりすり減ってしまいました。


そして、もう愛していないと自覚するくらい寂しいものになってゆきました。


それ以降リオンは、健斗に二度と体を重ねる事はありませんでした。やはり健斗を、心の底から許す事は出来なかったのでした。

少しずつまた、2人の距離は離れて行きました。


あの時は自分の選んだ結婚が失敗だったと思いたくなくて、再構築を望んで努力しました。でも、その努力はリオンだけのもので、健斗からは、なんの謝罪も、なんの協力もありませんでした。