何度も後悔をしました。


でもリオンの守ってきたモラルや母や祖母に対するプライドが、リオンをがんじがらめにしていました。


「ママのように人様に後ろ指刺されるような事をしたらいけない。」


「結婚しているのに恋愛なんてもってのほか。」


「結婚を失敗するなんてやっぱり出来損ないの娘。」


そんなふうに言われるのが嫌で、なんとか自分の心にストップをかけて、自分の気持ちにフタをして、健斗との再構築を望んだのですが、それが何のためだったのかと後悔にしかなりませんでした。


健斗は、出掛けるときにドアをバタンと乱暴に閉めます。リオンは何度も


「静かに閉めて!」


と、お願いしていました。何度言っても治さない健斗にイラつくことも度々でした。その度に音にびっくりした赤ちゃんが泣き出すので大変でした。でも、



『ドアにクッションを挟んで音が響かないように工夫すればいいや。』


と考えて、諦めることにしました。


こんなふうに日常を荒立てないで、やり過ごすことにリオンは忍耐強く耐えました。


健斗は、ゴミをゴミ箱に捨てずにその辺にポイポイと置いて片付けません。


「テー分の上はゴミ置き場じゃないのよ。」


ゴミ箱を健斗の近くに置いてもだめでした。前のリオンならガミガミと文句を言って健斗と喧嘩になっていたでしょう。

でも今のリオンは、何も言わずにそっと片付けて掃除しました。


『綺麗にすれば自分が気持ちいいから』


と考えるようにしました。