こうして健斗とリオンはやっと、夫婦としてのスタートラインについたのでした。
リオンの妊娠がつかの間の安らぎをもたらせてくれました。
大切に育んだ命を立派に十月十日育て上げて、立派に母として生みの苦しみを乗り越えて、この世に命を産み落としてあげたのでした。
「やっと会えたね。お還えりなさい。」
子供が生まれたことで、これから二人でやっとやり直すスタートに立てたとリオンは思いました。
しかし子供が生まれると健斗は、
「子供の泣き声がうるさいからした(実家)で寝るよ。」
と言ったり
「ちょっと出かけてくる。」
とか
「サウナいってくる。」
とか時間を作って一人で外出する事が多くなって来ました。
子供の前では家族の装いを演じていましたが、リオンと健斗はもう壊れていました。
リオンはまた暗い顔をするようになりました。
「私がこんなに頑張っている事は何の意味も持たなかった。健斗との結婚は間違いだった。だからあの時赤ちゃんは消えてしまったのね。なのに私はそのことに気づく事が出来なかった。あの時、全部を捨ててリセットしてたら…。」