そんな時、急に警察から連絡が入りました。


「健ちゃん、ママが事故にあったって。どうしよう。ママが…。」


「リオン、待ってろ。すぐに帰るから。」


警察に着いた時にはリオンの母は、もう冷たくなっていました。


あんなに憎んでいたはずなのに、現実に母の死に直面するとリオンは動揺しました。ひとりで立ってられなくて、健斗の腕にすがって泣きました。


健斗は小さい頃、リオンを守ると決心したことを思い出しました。あの頃に戻ったように、健斗はリオンを支えてそばに寄り添い心配してくれているのがわかりました。葬儀の時に側にいてくれた健斗。リオンも健斗とずっと一緒に過ごすのは久しぶりでした。その晩リオンは、健斗の腕の中で眠りました。


多分このタイミングでなければ、こんな事もできなかったし、しなかったでしょう。これも運命なのかとリオンは思いました。


母の死がきっかけで夫婦の距離が一瞬、縮まった気がしました。なんだか付き合い始めの頃のようにぎこちない距離感ではあるものの、いい方向に向いている気がしました。


「これで良かったんだ。宗を諦めてでもあの子をもう一度迎えたかった。」


そして…。リオンは再び妊娠しました。