リオンは思い出していました。高校生になってモデルのバイト代を自分の進学のためにとタンスに入れていたのに、母親に持っていかれて泣いたことを。母親はそのお金をパチンコですってしまって戻ってこなかったこと。それでもリオンは母親を恨むことはありませんでした。


「情が深い人なんだね。だから自分は完璧な家族を持ちたいと考えていた。幸せになるために選んで結婚した人がいる。でも…。愛する人ができてしまった。」

リオンはびっくりしました。心を全て見透かされているようでした。

「二人のどちらについて行こうかと考えているね。」

「どうしてわかるんですか?」

「私らみたいな商売しているものは、時に人の運命に携わる時がある。まぁ、毎回ではないんだけどね。今回はあんたの周りに飛んでいる天使が教えてくれた。あんたの迷いやあんたの不安を。あんたは守られているから大丈夫だよ。もしかしたらあんたは天使の生まれ変わりかもしれないねぇ。そんなに沢山の天使が周りを飛んでる人なんてそうそういないからね。」

不思議な話でした。リオンだって、にわかには信じがたい話でした。でも今の自分の問題をズバリ言い当てられたからには何か答えを与えてくれるのだろうとリオンは思いました。