久しぶりの笑顔でした。

生きているという実感がありました。

立ち上がり、叫び、飛び上がって声を上げて、鏑木選手を応援することがリオンに生命力を与えてくれていました。そしてやり遂げた達成感は素晴らしいものでした。


「こんなに沢山の人を感動させられる鏑木選手って凄い!」


リオンはたちまちファンになりました。リオンにとってこの試合に来ることが生きる希望でした。唯一生きてる実感が持てる瞬間でした。


帰り道、リオンも誰もいない道でパンチを繰り出したりキックをしたりしてにわかボクサーになった気分でした。でも、赤い門が近づくにつれて顔から表情が消えていきました。悲しい顔になり深いため息をついて赤い門を見つめると肩を落として門の中に入るのでした。


そんな時でした。昔のモデル仲間から連絡きました。

「急な仕事なんだけどその日どうしても都合がつかなくて代打でやってもらえない?」

「なんの仕事?もし雑誌とか残るものはちょっと…」


「ボクシングのラウンドガールの仕事なの。ただプラカード持って立つだけ。」