冷たいようだが、こんなシーンを長く記憶させるのはいづれにしても酷だろう。手早く捜査員に合図するとすぐにパトカーに乗せて連行する。被疑者だってこの時ばかりは辛く、後悔もするだろう。

「この家族に戻って来れるように頑張って罪を償ってこい。」

「はい。」

この想いが刑期が終わる時まで続いて欲しいと願うばかりだがそうともならないことも多い。

「今朝は早出だったし、今日は早く上がってちょっと飲みに行くか。」

と先輩に誘われて俺は

「いいですね。」

と返事した。

俺はその夜、しこたま酔っていた。

「刑事として犯人を捕まえても世の中はちぃっとも良くならない。犯罪は無くならない。ブチ込まれた犯人の奴らも刑期を終えるまでに改心して真っ当な人間に生まれ変わる訳でもない。暴力を暴力で制して押さえつけても、恨まれて復讐されたり、もっとすさんだ心で自分よりも弱い者に報復する悪循環を生むだけだ。罰を与えてもそこから学び、考え、心から反省して更生するような奴などいない。むなしくなるよ。」

「そうだなぁ。刑務所から出てきてもまたすぐに犯罪を犯す奴も多いしな。」

「捕まえるだけじゃダメなんだ。刑務所じゃあダメなんだ。犯罪者が改心して更生し、真っ当に生きて行くためのシステムを確立しなけりゃ今の仕事をどれだけ頑張っても世の中は良くならない。なんの意味もないんじゃないか。」

「でも、悪い奴を野放しにしとくわけにもいかないしなぁ。」

その夜は酒も深くなり、話も終わらなかった。