その4
その日は仕事から帰ってきてすぐに上から旦那が凄い勢いで降りてきた。
「火!火!燃えてる!」
「え?」
私は急いで二階に上がった。電気の配線スイッチのところから漏電したのかカーテンに炎🔥が見えた。
さて、どうしよう。水をぶっかけたら畳が濡れちゃうしな。バスタオルを濡らして持ってこよう。
わりと冷静だった。
下に戻ってバスタオルを取ろうとしたときにタバコに火をつけている旦那が見えた。
コイツこんなときにタバコ?ダメだ。コイツとはもうやって行けない。離婚を決意した瞬間だった。
水で濡らしたバスタオルを燃えてるカーテンと電気のスイッチにかぶせた。
その程度で炎は治まった。
私が素手でバスタオルをはがそうとすると息子が
「おかん!感電するからやめろ!」
そう言うと息子は靴を持ってきて手にはめて靴でバスタオルを取った。
「このまま捨てるよ。」
「あぁ、そうだね。」
この期に及んで旦那は呆然としながらタバコを吸っていた。
「なんで、今、タバコ吸ってるの?火事起こすとこだったんだよ!」
「あ、あぁ。」
旦那は思考も止まっているようだった。
それにしてもなんというタイミング。5分早くても5分遅くても火事を止めることはできなかっただろう。旦那だけなら多分2階の炎🔥をそのままにして下でタバコに火をつけてから、自分を落ち着かせてるうちに炎🔥は燃え広がっていただろう。
5分早くても私が帰ってきたことで旦那は下の部屋に降りてきて酒を飲み始めただろうから燃え広がるのを気がつけなかっただろう。
あの程度のボヤで済んだのは、◯ツ岩様のおかげだろう。感謝しした。と同時にそのご利益に驚いた。母親は地元に住んでばぁちゃんが信仰していたんだからご利益に預かるのはわかる。でも、田舎を離れ遠く関東にやってきてただ一枚の御札を娘に渡しただけだ。なのに名も名乗らずその住所も告げていない私を二回も助けてくれた。それも出火したときには私はおらず、私を呼び帰して消火にあたらせた。
私も護られていると実感したのだった。