オカクンと中華料理店フーロンでランチしたことは記憶に新しい。紆余曲折した詳細については前々回『翔んでユーラシア』で記述済みである。その際、二人合流する前に各自所用を済ませたのであるが、オカクンは料理を扱った生涯学習に参加し、自分は当時絶好の散策日和だったので散策した。その記憶を辿ってみたい。


 互いに再会を誓い合った約束の時間は午後12時30分。場所はJR宇都宮駅に隣接する大型商業施設の地下に設置された小さな休憩スペースで落ち合うこととした。

〈注 JR宇都宮駅から散策を開始した〉


 特に散策のテーマを決めず、感じたままそのままに足を運んでみようと思った。出発に当たって直感的に思い浮かべたのは、見頃を迎えていた田川沿いのしだれ桜だったので、先ずはそれを見に行った。川沿いに等間隔で植栽されているしだれ桜は想定通り見頃を迎えていた。宇都宮市中心部を南北に貫く田川は河幅およそ50メートルの一級河川で、両岸には遊歩道が整備されているため、のんびりと散策を楽しむことができる。


〈注 春のうららの田川沿いの遊歩道〉


 想定通りに咲き揃ったしだれ桜を見送った後、しばらく川沿いの遊歩道を下流に向かって歩いてみた。渓流を住処とするカワセミに会えるかと期待しながらシャラシャラと柔らかな音をたてている川沿いを歩いたが、運命的な出会いはなかった。

 左手に趣のありそうな寺院が視野に入ったので立ち寄ることにした。門前の石柱には達筆な字で光徳寺と記されていた。折角なので手を合わせていこうと思い境内へ足を進めると、表面をツルツルに磨き上げた石へ足の形に彫り抜いた「佛足石」なるものが目に止まった。横にある解説板には「額を石につけて、何処に花を咲かせたいか念じると、念じた場所に花が咲きますよ」と記されていたので、トイレに入りたい…というちょっと前からつきまとっていた生理的煩悩を下腹部に抱えながら試しにやってみた。今後夏へと向かう我が家の玄関先に期待したい。

 さすがに仏様の膝元でトイレを拝借する事には良心が許さなかったので、生理的煩悩に従い最寄りのドラッグストアで何も買わずにトイレを借りた。

 気持ちが楽になったので、オカクンとの待ち合わせ時間を考えて散策の方向をここで東へと変えた。途中、ネコさんが香箱座りで「みぃ~」と声をかけてくれた。見上げると、そらいろのぺんしるで染め抜かれた世界が一面に広がっていた。

 
 次号へつづく。