先日、コストコで買い物した時のことである。空腹に耐えながらも別の場所でじっと待ち侘びているワガコを哀れと思い、ソーセージを単に挟めただけのホットドッグを一つ買ってあげたのだったが、「タマネギのみじん切りがトッピングされていないじゃんっ!」と、普段穏やかな目つきを、その時ばかりは形を三角に変えて、不満を強く訴えてきたのである。こちらとしては、まさかそんなオトナの風味の効いたトッピングを所望するとは夢にも思っていなかったので、やむを得ず緊急避難的に、奥羽山脈と見まちがう程に高く長くホットドッグの上に盛り付けた自分のタマネギを少しだけ分与して、とりあえず何とか急場を凌いだのだった。


 それにしても、典型的な偏食男子を本人も堂々と自覚しているワガコ。しかし、周囲の人が耳にすると俯かれてしまう程に深刻だった偏食の幅が、ここ最近になって目に見えて大きく狭まってきたのは、喜ばしいことに紛れようもない事実である。例えば、彼の可食野菜といえば唯一レタスぐらいだったのに、ついこの間の冬休みあたりから、生のピーマンに加えて生のニンジンまでも、「今夜は、ないの?」と、彼自ら積極的に求めてくるよう変化したのである。

 さて、そんなワガコの食料事情だが、先日の日曜日に、ワガコと(ワガコからみて)おばあちゃんとの3人において餃子の王将でランチした(オカクンは仕事により欠席)。その際、これまでの彼の生涯において初めてニラレバ炒めを注文し、見事にペロリと丸々一皿平らげてみせたのだった。おそらく、今後、可食のメニューは彼の成長に比例して、更に増加の一途を辿るであろう。高額なメニューを選択さえしなければ、親として全面的に嬉しい。


 病んでいる左眼の中に入れても、決して痛くはないであろう愛おしいワガコよ! わんぱくでもいい。逞しく育ってほしい。

 …そう願っているのだが…。自分の知る限り、強く逞しく育っている場所は、いつも目をキラキラと輝かせながらチャット(会話)を楽しんでいるスマホの中に、どうやら限定されているようだ。とりあえず、でも、まあ、いいか…。


〈注 手前の餃子定食は、ワガコのものではない〉