つい、出来心で手を出してしまった…。イケナイコトと、頭では分かっていても、気持ちはついて行けなかった。魂の奥底から沸々と湧き出た恋心にも似た欲望は、時として理性をも支配してしまうのだろうか。そして、してしまった事に対する満足感の後にくるものは、例えようのない後悔の念と激しい罪悪感。両手で頭を抱え込む程に…。

 何の事かというと、泣く子も黙る夜の10時を過ぎたにもかかわらず、しょう油味のおかきをペロリと完食してしまったのだ。11時には床に入る身であるというのに…。焦点の定まらない目で天井の片隅をぼんやり見つめながら、「食べちゃおうか、それとも、健康のためにやっぱりやめておこうか…。」と、考え倦ねていたのだが、最終的に天使は悪魔の微笑みに勝つことができなかったのだった。何故か! それは…。

 おかきを完食するおよそ2時間前、ソファの近くに設置してあるシュレッダーを掃除した。仕事帰りで、体は疲れ果てているのにもかかわらずである。食後、普通にシュレッダーを使おうとしたのだったが、機械の調子が今ひとつ良くなかった。どうやらダストボックスが紙片でギュウギュウに詰まっていたことによるものだった。これは何とかせにゃイカンと思い速やかに紙片を取り除こうとしたところ、機械の周囲に紙片が散乱してしまい、掃除機までも使用せざるを得ないという、思ってもみない大惨事に発展したのである。この処理に要した時間は、およそ20分。疲れは正しい判断力をも奪い取った。

 つまり、食べるか、それとも我慢するかで、食べる道を選んだ決め手となったのは、シュレッダー事件を解決した自分への褒美が欲しかっただけ…と、いうことである。

 11時を、大幅に過ぎた。

 大きなあくびを一つ。

 小さなため息を一つ。

 寝よう…。

〈米菓の袋と紙片の入った袋の ツーショット〉