先日、患者さんから質問をいただきました。
「長谷部さん、高血圧の治療って昔からほとんど変わってないって聞きましたけど、最新の治療法とかないんですか?」
という質問です。
たしかに、ガンの治療法はどんどん進化しているのに、
高血圧や糖尿病の治療法は全くと言っていいほど変わってませんね。
ですが、実は最近注目されているものがありますので、
今日はそのことについてお教えしますね。
どんな治療法かと言いますと、
ズバリ 、、『高血圧ワクチン』です!
ワクチンと言うと、ほとんどの場合、インフルエンザや麻疹(はしか)をイメージしますが、近年では高血圧に対する「ワクチン」の開発も進んでいます。
説明すると少し難しい話になりますが
しばしお付き合いいただければと思います。
そもそも血圧というのは、アドレナリンの作用によってコントロールされていますが、
この他に血圧を上昇させる物質の1つに『アンギオテンシン』というものがあるんです。
活性化したこのアンギオテンシンが、
作用するための受け口であるアンギオテンシン受容体に付着すると体内で血圧上昇作用が生じることになります。
実際の臨床でも、アンギオテンシンを活性化させないためのACE阻害薬や、
ARB(アンギオテンシン受容体阻害薬)といったものが降圧薬として広く応用されています。
(※ちなみにアンギオテンシンという名前の由来は、
アンギオ(血管)・テンシン(tension:収縮、緊張)からきています。)
高血圧ワクチンは血圧を上昇させるホルモンが作用しないようにする効果があるとされています。
つまり、高血圧に対する免疫物質を体内でつくるということです。
まさにワクチンですね。
実はこれは以前から研究が行われていて、私も何度か論文を読んだことがあります。
それが最近になってようやく、人体に対する効果が確認され、
スイスにあるローザンヌ大学のJuerg Nussberger先生によって、アメリカ心臓病協会の学術集会で発表されたんです。
ですが、実用化されるまでにはまだまだ時間がかかります。
このとき発表されたデータは比較的小規模なものであったからです。
内容を確認しましたところ、比較的若年層(18~65才)での統計でした。
これから副作用も出てくることでしょう。
こうした薬を心待ちにされている患者さんは多くおられます。
しかし、これらは臨床応用されてから問題が出現する可能性もあるので、やはり注意が必要なんです。
まずは確立された治療を行いながら将来に期待しましょうね。
高血圧ワクチンだけでなく、近年は禁煙ワクチンや肥満症に対するワクチンなどの開発も進んでいるそうです。
日進月歩の医療の進歩ですが、
基本となるのはやはり、個人の日常生活です。
このことを忘れることなく健康的な生活を送りましょうね。