※私のどっぷり妄想のウォンキュ小説です。ここからは優しい目で見れる方のみお進みください。ウォンキュの意味が分からない方や苦手な方はUターンしてくださいね。尚、お話は全てフィクションです。登場人物の個人名、団体名は、実存する方々とは関係ございません。
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「シウォン、覚えてる?昔一緒に海に行った時、キュヒョンの声はよく伸びるし、ステージで映えると思う。キュヒョンの甘い声で歌ったら、みんなメロメロになる。キュヒョンなら絶対なるって俺に言ってくれたこと」
「ああ、そんなこと言ってたような…」
「あの言葉、俺の胸にものすごく刺さったんだ。シウォンのおかげでミュージカルに興味を持って、本気でやりたいと思った。知ってる?俺、ミュージカル俳優やってんの」
「実はさっき初めてテレビで知ったんだよ。情熱〇陸みたいな番組で」
「へぇ〜今日だったんだ放送日。テレビの取材が来るぐらいになるまで時間はかかったけど、やっとここまで来た。最初は片っ端からオーディション受けまくって生活するだけでいっぱいいっぱいだったけど、仕事が貰えるようになるとギャラも増えて安定した暮らしが出来るようになったんだ。しかも主役まで勝ち取って。向こうのミュージカル俳優のギャラってすごいんだよ。初めてだったな。お金の心配をしなくて良くなったのは…」
「そうか。頑張ったんだな」
「だからさ、責任とってよ」
「ん?キュヒョナ?ちょっと言ってる意味が…」
「トゥギヒョンの病気も完治して今は元気で過ごしてるみたいだし、今度会いに行こうと思ってる。ミュージカルは海外で成功したから、今後は国内でやってみようかなって。まだどうするか分かんないけど。でもひとつ叶えられてないものがあるんだよね」
「え?」
「シウォンがまだ俺にメロメロになってない」
「は?」
「だから、帰って来たんだって。メロメロになってもらうために」
「へ?」
「俺のこといるんじゃなかったの?」
「い、いります!いります!」
「うん。じゃあそういうことで」
「え?」
「ただいま」
「お、おかえり?」
「うん」
キュヒョンの顔が近い。
自然に重ねた唇は柔らかく、初めてのキスぐらいドキドキした。久しぶりのキュヒョンの唇の感触だ。
さっき抱きつかれた時は頭の中がパニックでそれどころじゃなかったが、今はこの腕の中にキュヒョンがいる。
本当にこれは現実なのか、ギュっと抱きしめるとキュヒョンのぬくもりを感じて泣きそうになった。
「本当に帰って来たんだな」
「うん…」
長い長い夢を見ていたような気がする。あまりにもいろんなことがあり過ぎた。
シウォンの背中に回されたキュヒョンの手がじんわりと温かい。キュヒョンを思い出すかのようにもっと強く抱きしめた。
「シウォナ、一緒にシャワー浴びる?」
「ん、うん?」
あまりに唐突な言葉に戸惑ってしまう。
抱きついたまま下を向いているキュヒョンの表情は分からないが、こんな積極的なことを言われるなんて早くも理性が吹っ飛びそうだ。
ああ、ほら。
また、だ。
俺の知らないキュヒョンだ。
何を考えているのか分からず、驚きの連続だ。結局これからもキュヒョンの気まぐれでこうやって過ごすのか?
嬉しいことを言われたり、行動に腹を立てたり、なのに馬鹿馬鹿しくて可笑しくて笑ってしまった。
「何?俺、変なこと言った?」
照れと気まずさもあって口を尖らせて怒っている。
ああ、俺はこんなキュヒョンも見たかったんだ。
「いや、さっきの俺の葛藤は何だったのかと」
「何考えてたの?」
「内緒」
「なんだよー」
「キュヒョンのこと考えてた」
「…そうなんだ」
顔が赤くなったり青くなるキュヒョンはリトマス紙みたいだ。今度は思い切りキュヒョンを抱きしめて、キュヒョンの肩におでこをくっ付けた。
「痛いよ」
「うん…」
「なんだよシウォナ、泣いてんの?」
「気が抜けたんだよ。キュヒョンだってだろ?」
「泣いてないし」
そう言ったキュヒョンの声が少し震えて聞こえた。
「キュヒョナ、桃の花言葉知ってる?」
「え、ああ、何だっけ?」
「私はあなたのとりこ」
「へぇ~」
「さっき初めて知った」
「何それ」
「後で話すよ」
そっとキュヒョンの頬に手を伸ばし、今度は深く唇を重ねるとぎこちないキスが返ってきた。
「久しぶりなんだよ。キスするの」
「え?」
「シウォンに会うまで貞操は守ってきた」
ますます顔を赤らめての告白にドキリとする。今すぐここで押し倒したい。こんなにも可愛いことを言うやつだったか?ああ、そうだ。俺はまだキュヒョンのほんの一部しか知らない。一緒に居た時間は大抵が『藍』だった。そう考えるとキュヒョンの素顔を見たのはあのドライブデートをした1日だけ。
「だから…その…久しぶりだから上手く開くか分かんないけど。でも、シウォンに触られると電流が走ったみたいにビリビリして身体が熱くなるっていうか」
「え?」
「俺、シウォンとでしか体が反応しなかったんだ」
「それって…」
「すごくない?あんな商売してたのに、シウォナ以外全然気持ち良くなかったなんて。シウォンが初めてだったんだ。今にもとろけそうな感覚」
「キュヒョナ、それがどういうことか分かる?」
「え?」
「惚れてたんだよ俺に」
「何言って…」
「ずっと好きだっただろ俺のこと」
「あ、あのさ、向こうでよく海に行ってたんだ」
「え?何?海?」
「うん」
照れ隠しなのかキュヒョンの目線が下を向いた。
「何でこの流れで海?」
「辛いことや苦しいことがあると海に行って思い出してた」
「んん?」
「シウォナとの思い出は海なんだ。俺はあの時、本当はシウォンにどこか遠いところへ連れて行って欲しかったんだ」
「キュヒョン…」
「ずっと心が折れそうで、すがりつきたかった。あの日、全然知らない土地に行ってふたりで暮らすのもいいなって夢見てた。リュックに必要な物だけ詰めて持って来てた」
「ああ!だからあの日リュックだったのか!」
「うん」
「気になっていたんだよ。もしかしてお泊りセット入ってる?とか思ったりして」
「アハハ。確かにお泊りセットは入ってた。言いそびれて出せなかったけど…。今考えると甘いよね。あの時シウォンに背中を押されなかったら今の俺は無いよ。ここまで頑張れなかったし、漠然と歌をやりたいと思ってたけど、ミュージカルは考えもつかなかった。あの後いろいろ調べて辿り着いた答えだったんだ」
「そんなことを考えていたんだ」
「まさかデートで昔住んでた所に行くとは思ってないじゃん。どんな確率だよって」
「だよな。俺自身やってしまった感が強くて、焦ったよ」
「でもおかげで道が開けた」
「それはどうも。今度はドンへにもきちんと連絡を取って謝ろうな。俺が側にいるから」
「うん」
「その時はキュヒョンのお兄さんにも会いに行こう。そして帰りはあの観覧車に一緒に乗って夕日を見よう」
キュヒョンがキョトンとした顔で大きい目をパチクリさせた。
「…シウォンてさ、スーパーマンみたい」
「アハハ。お兄さんからお父さんになって今度はスーパーマンか。次は何になるか楽しみだな」
「恋人じゃないの?」
「え?」
「さ、お風呂入ろ?」
「え、ちょ、キュヒョナ、もう一度言って」
「ヤダ」
「もう一回!」
「やだよ。恥ずかしい」
「大丈夫。俺はもうキュヒョンにメロメロだから。恋人だし全部受け止める。だからもう、どこにも行くなよ?そしてもっと俺だけに自分をさらけ出して。俺だけに見せて」
「…考えとく」
「ええ!?なんだそれ、ツンデレか?」
クスクス笑いながらスタスタ歩いてリビングのドアを開けようとする。
ほら、だからキュヒョンは分からない。きっと振り回される。それは本能で分かってる。
初めて会った時はこんなよく笑ったり拗ねたり表情がコロコロ変わる性格だと思ってもみなかった。いつもどこか寂しそうで人を寄せ付けないオーラを出し、自分の人生を諦めていた感じがあった。
今はあの頃の危うさは無いが、また急に目の前から消えてしまったらと不安はある。
なのにそんなことはどうでもよかった。
ドアを開けるキュヒョンの手を慌てて止めて後ろから抱きしめた。
「な、何?」
「もう二度と離したくない」
本当に馬鹿だな。キュヒョンを忘れようとしても忘れることなんて到底無理なことだった。そんなこと、最初から分かっていた。俺はキュヒョン無しでは生きていけない。会えない日もずっと想っていた。二度と会えないと思っていても、ずっとキュヒョンを想っていたかった。
キュヒョンは俺にとって唯一無二の存在だ。
「…好きだよシウォナ」
「初めて聞いたな。キュヒョンからの告白」
「伝えてあったじゃん。しおりで」
「何だよ。やっぱり知ってて渡したんじゃないか」
「アハハ。バレた?」
そう言って振りむいて笑ったキュヒョンは今まで見たどのキュヒョンよりも一番最高の笑顔だった。
「俺も好きだよ。初めて踊る姿を見た時からずっと…」
「今度はシウォナのために踊るよ」
「そうだな。特等席で見てるよ」
話したいことがたくさんある。
聞きたいことがたくさんある。
大丈夫。俺たちの時間はこれからたっぷりある。
気まぐれな猫のように振る舞う姿も、柔らかい髪も透き通るような肌も、頬を赤らめて恥ずかしそうに斜め下を向いた睫毛も、目の下のホクロも全てが愛おしい。
ずっと冷え切っていた心が嘘みたいに溶けていく。
今度はキュヒョンとふたりで始めればいい。
何度でも。何度でも。
俺だけの可愛い踊り子。
~END~