※私のどっぷり妄想のウォンキュ小説です。ここからは優しい目で見れる方のみお進みください。ウォンキュの意味が分からない方や苦手な方はUターンしてくださいね。尚、お話は全てフィクションです。登場人物の個人名、団体名は、実存する方々とは関係ございません。
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自分がどんなに器の小さい人間かと呆れ果ててしまう。
なぜもっとキュヒョンを本気で探さなかったのか。
ドンヘの時と同じで2度目だったこともあるが、俺の前から何も言わず去ってしまったことに腹が立ち、キュヒョンの気持ちを考える余裕なんてなかった。
あの時は女将から年季があけたと聞かされたこともあり、警察に捜索願いを届けようとも思わなかった。
ただ、キュヒョンはどこかに行ってしまいたかったのだと自分に言い聞かせていた。
悔やんでも悔やみきれない。
長い時間、シウォンはパソコンの画面を開いたままそこから動くことが出来なかった。キュヒョンになぜ自分に『しおり』を渡したのか聞いてみたくなったが、今となっては叶わない。シウォンはパソコンの電源を落とし、深い溜息をついた。
今はキュヒョンが元気でいたことにホッとしているが、複雑な感情があるのには違いなかった。一体いつからキュヒョンは渡米していたのか。
いつかまたキュヒョンに会えたら、俺は最初にどんな言葉をかけるんだろう。
ピンポーン…ピンポーン…
誰だ?こんな遅く…
時計は23時を指している。
インターホンの画面を見ると、帽子を深く被り黒のマスクで顔を隠した人物が立っていた。
男?
気味が悪く居留守を使おうとすると、男はマスクを顎まで下ろし帽子のつばをクイっと上げた。
「キュヒョン!」
慌ててインターホンのボタンを押し、声を掛けた。
「キュヒョンか?」
「なんだ、いるじゃん」
これは夢なのか現実なのか、さっきまでテレビに出ていたキュヒョンがインターホン越にいる。
「シウォナ?俺だけど、今会えない?」
「会えないって、お前そんな急に」
「ダメだったらいいよ。このまま帰る」
「いや、ちょっと待て。今開ける」
オートロックを解除し、キュヒョンが部屋に着くまでの数分シウォンの頭の中はパニックだった。散らかった机の上を片付け、何か見られてまずいものはないか意味もなく寝室のチェックをする。ダイニングとリビング、水回りはハウスクリーニングを頼んだばかりで部屋は綺麗だ。
よし。
ドアの前で再びチャイムの音がし、ドアを開けるやいなやキュヒョンが「久しぶり」と言って抱きついてきた。
オイオイオイ、熱烈な歓迎だな。それはアレか、帰国子女のフレンドリーな挨拶の一部か?
シウォンの頭の中は整理できるはずもなく、とにかくこの状況をひとつずつ把握していかなければならない。久しぶりにキュヒョンの温もりを感じていたかったが、平常心を装い肩に回っているキュヒョンの腕をそっと外した。
「ちょ、待て。待てってキュヒョン。お前、いきなり抱きついてきて、俺が結婚してたらどうするつもりなんだ」
「結婚してるの?」
「いや、してないけど。じゃ、じゃあ引越ししてたらどうするつもりだったんだ?」
「どっちもしてないじゃん」
「そうだけど。と、とりあえず落ち着いて話そう。中入って」
落ち着いていないのはシウォンのほうだった。目の前に居るのは紛れもなくキュヒョンで、スリッパを出すと「ありがとう」と言って微笑んだ。
本当に訳が分からない。数時間前にテレビに映っていたキュヒョンが目の前にいる。もう何年も会ってなかったんだぞ?そんな偶然てあるか?俺は今夢でも見てるのか?
「へぇ〜相変わらず綺麗な部屋だね」
帽子とマスクを取りソファーに置くと、髪をかきあげながらキュヒョンは辺りを見渡した。確かにあの最後の夜から配置はほとんど変わっていない。
変わったのはテレビとパソコンぐらいだ。
「よく覚えてたな。場所と部屋の番号」
「覚えるのは得意なんだ」
キョロキョロしているキュヒョンの後ろ姿は数年前よりもしっかりしているように思えた。ひとりで抱え込んでいたものが無くなって肩の荷がおりたのか、あの頃は触れたら折れそうな感じだったが今はない。
「ごめんね」
「え?」
「成功するまではシウォンに会えないと思ったんだよ」
「だからって」
キュヒョンが振り返るとシウォンの肩にコツンとおでこを乗せた。
「もう俺のこといらない?」
「え?」
ふわりと香るシャンプーの香りに混じった汗の匂いがシウォンを刺激する。
初めてキュヒョンと会話をしたのはピンク界隈近くの路地だった。今でも覚えてる。カメラのシャッターを押すと横切ってフレームに収まった男がキュヒョンだった。洗いざらしの髪からはほのかにシャンプーと石鹸の香りがした。
今も鮮明に思い出せるスト〇ップショーでの衝撃的な出会い。あの日から俺はキュヒョンに捕われたままだ。
「俺のこといらない?」
「え…あ、う…」
さっきまでの腹ただしさは一体どこへ行ったのか、シウォンはまた会えて嬉しいの気持ちが勝るなんて思ってもみなかった。
「ん?」
「い、いらない訳ないだろ!」
「だよね」
「いや、そうじゃなくて。俺に恋人がいるとか考えないのか?」
「いるの?」
「い、いないけど」
「いたとしてもきっと俺のこと好きになるだろ?シウォンは」
「どこから来るんだよその自信。しかもキャラ変わってないか?なんだ?俺はこうやってお前に振り回されるのか?」
「嫌?」
肩に腕を回され、今度はキスができそうなくらい顔が近い。
「あ、あ、あ、当たり前だろ。俺は急に居なくなられるのも振り回されるのも嫌だ」
「ふぅ〜ん」
パッと腕を離し、拗ねたように口を尖らせるキュヒョンはやっぱりまだあの頃のままだ。
「じゃあここに住もうかな」
「は?」
「帰国して住む所、まだ探してないんだよね。借金も返済したし。あ、もちろん自分で稼いだお金だよ。過払金もあったから全て清算した」
「そうなのか?本当にもう大丈夫なのか?」
「うん…」
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数年前の夜、キュヒョンは『藍』の一室で涙を流した。
つづく。