【ウォンキュ小説】踊り子 17 | むらたま SUPER JUNIOR キュヒョンブログ

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※私のどっぷり妄想のウォンキュ小説です。ここからは優しい目で見れる方のみお進みください。ウォンキュの意味が分からない方や苦手な方はUターンしてくださいね。尚、お話は全てフィクションです。登場人物の個人名、団体名は、実存する方々とは関係ございません。


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一仕事終えたドンへからシウォンに電話が入った。

「ドンヘです。今、どこですか?」


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ドンへから電話がかかってくるまで、キュヒョンはシウォンにドンヒに会った時のことを話していた。

キュヒョンはこの街から出て行く前、ドンへに宛てたメールを最後に姿を消した。

イトゥクが入院しているサナトリウムは、住んでいた街からバスで1時間ほど南に走った隣町の高原にあった。
終点の停留所の周りは一面コスモスが咲き、風にゆらゆら揺れているのが印象的だった。
裏が雑木林の垂直な木立に囲まれた白い二階建ての建物で、開口も大きく取られた病院は風通しも良く、全体的に清潔感がある。
病棟は全て個室で、二階にある一番奥がイトゥクの部屋だった。そこにあるベッドと椅子と棚は白で統一されていたが、無理矢理部屋を明るくしているようで、キュヒョンはそれがかえって病院特有の白々しさを生み出しているように思えた。

「トゥギヒョン、何も心配しなくて大丈夫だから」

無菌室でベッドに横たわるイトゥクは今にも折れそうなくらい細く、キュヒョンは久しぶりにお互いの顔をゆっくり見たような気がした。

もっと早く病院に連れて来るべきだった。

後悔しても時間は元に戻らない。キュヒョンはバイトとダンスに夢中で、兄がこれほどにまで弱っていたのに気付かなかった自分を責めた。

病院の費用はイトゥクがキュヒョンの為に学生の頃から貯めていたお金である程度支払えた。それまでキュヒョンはイトゥクが自分の為に貯金をしていたなど全く知らず、本来なら嬉しいはずが、これからのことを考えるとまだ到底足りなかった。

追い討ちをかけるように、イトゥクが結核でサナトリウムに入ったことを知った周りの人達の態度が一変し、非難を浴びることになった。

ドンへだけが力になると言ってくれたが、飲食店に結核患者の弟がいるというのは世間からの風当たりは冷たい。
実際、感染しているかもしれないという恐怖心を持った人々から責められ、言われるがままにバイトで貯めた僅かな蓄えを検査費用に充てた。 
その時は接触者検診があるのを知らなかったのだ。
幸いキュヒョンを含め感染者はゼロだったが、掛け持ちのバイトも辞めざるを得なくなり、冬が始まる頃にはお金も底をついて気付いた時には借金を抱え途方に暮れた。
心身共に疲れ果てたキュヒョンはこれ以上迷惑はかけられないと、イトゥクに会いに行った日を最後にこの街から出ることを決心をした。

『ドンへヒョン、今までありがとう』

ドンへに短いメールを打ち、その場で携帯を解約した。
駅に向かったキュヒョンはあてもなく飛び乗った電車を適当に乗り継ぎ、山あいに見えた温泉街で電車を降りた。

初めて来た街は少し寂しそうで、行き交う人もまばらだった。冷たい雨が降るホームのベンチでぼんやりと線路を眺めていたキュヒョンに声をかけてくれたのがオーナーのドンヒだった。

「どうした?具合でも悪いのか?」

余程ひどい顔をしていたらしい。
後から聞いた話では、思い詰めて自分の目の前で飛び込まれたら困ると思ったからと言っていたが、それもドンヒの優しさからくるものだったのかもしれない。

「お金も行くあても無くて…」

なぜ初めて会った人にこんなことを言ってしまったのか分からない。

「ウチに来るか?」

今思えば半ば自暴自棄になってドンヒの後に着いて行ったが、当時は怖いと思う余裕すらなかった。所持金が数百円しかなく、もう何も考えたくなかったからだ。
キュヒョンがドンヒに連れて来られたのはスト◯ップ劇場の二階で、休憩用に使っていた部屋だった。
小さなキッチンにソファーベッドがあるだけで、テレビがないのは情報を遮断したいのにちょうど良かった。
部屋に入ってもドンヒは何も聞かず、そっと暖かいココアを淹れてくれた。

「…多額の借金があるんです」

ポタッとマグカップに波紋ができた。
初めてキュヒョンの目から涙がこぼれ落ち、今まで溜まっていたものが堰を切ったように溢れ出した。
もう一人ではどうすることも出来なくて逃げてきたことを話すと、ドンヒはキュヒョンの涙が乾くまでずっと傍で見守り、疲れ果てそのまま眠りについた後も起きるまで隣に居てくれた。

訳ありなら住み込みで従業員になって劇場で働いてみないかと言うドンヒの提案を退け、一日も早くまとまったお金が欲しいとスト◯ッパーを志願したのはキュヒョンからだった。
人前で裸になることに抵抗はなかったと言えば嘘になるが、孤児の頃初めて恋をしたのも三つ年上の男の先輩だったからか、男だからという概念は無かった。

男のスト◯ッパーは珍しさもあり、口コミで噂が広がるとキュヒョンが店に出る日は連日満員になった。
いつの間にか常連がつくようになり、初めは物珍しいものを見るような者も多かったが、熱心に通ってくる一人の初老がいた。
ある日、付き添いの男から連絡が入り、初老の相手をしてほしいと頼まれた。
その男は初老の秘書で、初老はどこかの大企業の名誉会長らしかった。
70半ばのその男性は食事と添い寝を希望し、相手と言ってもキュヒョンのからだを触り、眺めるだけのものだった。

そこで紹介されたのが『藍』だ。

金持ちだけが知っている贅沢な遊びを始めて知った。秘密厳守の『藍』はほんのひと握りの上流階級の人間しか会員になれない。
キュヒョンの初めての客はいい値をつけてくれた。それがあの元ラガーマンの会長だった。
自分にはそんな価値があるのかと考えたりもしたが、世の中にはこういった店も必要で、それを望んでいる人がいるのを知った。

キュヒョンが相手にするごく限られた一部の人間は店側が身辺調査をする。
稀に豹変する客もいるが、店が守ってくれた。
シウォンの前の客は二度と敷居をまたぐことは出来ないだろう。
口外すると自分の性癖も全て分かってしまうこともあり、表に出ることはない。
店がひっそりと続いているのはそんな人達のためだった。
『藍』で兄のことを話したら援助してくれるご贔屓もいるかもしれないが、キュヒョンは一切話さなかった。

その後、スト◯ッパーと『藍』で働くことで毎月信じられないほどのお金を手にしたが、ドンヒにイトゥクの入院費や治療費、借金の返済の手続きを踏んでもらい、毎月の振り込みで支払うことになり今に至っている。


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「キュヒョナ、ずっと探してたんだぞ」

「ごめん…」

シウォンとキュヒョンはランチタイムが終わったドンへの店に戻って来ていた。
表の看板をクローズにし、すっかり片付いた店内は空気の入れ替えが済んでまた客を迎え入れる準備が整っていた。



つづく。