※ウォンキュ小説です。
苦手な方はUターンしてくださいね。
あれからいくつの季節を迎えただろう。
俺たちの一年は早い。
本当にあっという間だ。
海外の仕事が多いせいもあって
両親、恋人、友人に会う時間も限られてる。
もちろん
メンバーでさえ、キュヒョンとでさえ会えない日が何週間も続く。
そんな中、少しでも両親と会える時間を取った。
少しずつだが普段通りの会話が出来るようになった。
アボジは数年経った今もその話には触れてこなかった。
オンマは今まで以上に俺の身体を気遣うようになった。
きっと将来のことを考えてだろう。
結婚すれば妻が夫の体調を気遣ってくれるが、
相手が同性だと将来独り身ということも考えられる。
まあ、俺はキュヒョンと離れるなんて考えたこともないが。
親としては色々考えるんだろう。
幸い相手の事は一切聞いてこないのが救いだった。
もう既に知っているかもしれないが。
このままでいいんじゃないか?
キュヒョンの存在を隠して付き合っていれば、
誰にも何も言われずに済む。
と言っても、メンバーには知られてしまった訳だが。
あれは
今思い出しても珍事件だった。
「な~な~。
今日、ラーメン食べに行かね?」
ヒョクが言い出した。
俺達はレッスン終了後、シャワールームで雑談をしていた。
「いいね。
この前オープンした所で、気になる店があるんだけど。」
トゥギヒョンが話に乗ってきた。
「あ、僕、
これから仕事が入ってるから。」
「キュヒョンは仕事し過ぎだろ。」
ドンへが呆れた顔で言う。
「僕はこの後ラジオだから~。
もう行くね。お先~。」
「リョウクもかよ~。」
リョウクが慌ただしく出て行った。
「俺、串カツ食べたい。」
ヒチョルヒョンは相変わらずマイペースだ。
「俺は・・・。
この後用事があって。」
本当はなかったのだが、
少しでもキュヒョンと二人になりたくて咄嗟に嘘をついた。
「じゃあ、シウォンとキュヒョンはまた今度な。」
「なんか腹減ってきた~。」
「その店で良いだろ?」
「そこさ~美味いの?」
髪の毛を乾かし服に着替え身支度をする。
俺逹メンバーは本当に仲が良い。
いつも話題が尽きる事なく冗談を言いあったり、じゃれあったり。
たまに喧嘩はするけれど、
なんでも言い合える間柄で、家族以上に絆を感じる。
俺はこんなメンバーといるのが
たまらなく好きだ。
わちゃわちゃと部屋から出て行くメンバーを見送って
俺はキュヒョンと二人きりになった。
キュヒョンはレッスン後は相変わらずテンションは低いけれど、
ごはんに行く時は必ずヒョン達の後に着いて行っていた。
「残念だったな。」
「え?」
「ラーメン。」
「ああ。仕方ないし。」
「何の仕事?」
「打ち合わせ。」
「そっか。」
「ヒョンは?」
「ああ、俺は・・・その・・・。」
しまった。何も考えてなかった。
「ヒョンも仕事?」
「いや・・・。」
俺たちは細心の注意を払っていた。
会社でも二人きりにならないようにし、
仕事中も他のメンバーと一緒にいる時だけ
キュヒョンに絡むようにしていた。
ずっと我慢していた。
当たり前だけど。
どんなにキュヒョンに触れたくても
ずっと我慢していた。
当たり前だけど。
手を伸ばせば掴める距離にいたのに。
掴める距離にいるのに。
人目を気にする俺たちにはあまりにも遠い距離だった。
隣りで話しているキュヒョンを感じ、
声を耳で覚えさせ
キュヒョンの姿を目に焼き付ける。
公で耳元で囁くのが唯一のスキンシップ。
ライブ中は身体を抱き寄せ何度も愛を囁いた。
キュヒョンは俺のものだと宣言したかった。
時々やり過ぎだと注意されることはあったが
キュヒョンが俺に微笑んでくれると
ブレーキがきかなくなった。
ほら、今だって。
「ヒョン?」
上目遣いで俺を見てくるキュヒョンに
自制がきかなくなりそうだ。
「実は、少しでもキュヒョンと二人きりになりたくて。」
「ヒョン・・・。」
キュヒョンは咄嗟に俯いたが
少し口角が上がったのを俺は見逃さなかった。
キュヒョンが照れている。
それだけで俺はMAXに達しそうだった。
「キュヒョナ・・・。
やっと二人きりになれた。
ずっと二人で会えなかっただろ?
俺はお前に触れたくてしょうがなかった。」
「ヒョン・・・。」
「シウォナって呼んでくれないか。」
「何言ってんだよ。ここは会社だよ?
誰かに聞かれたりしたら。」
「大丈夫だよ。
みんなラーメン食べに行ったし。」
俺は微笑みながらキュヒョンを覗き込んだ。
口を一文字に閉じて斜め下を見る。
キュヒョンが照れてる時にする表情だ。
ゆっくりと顔を上げキュヒョンの瞳に俺が写った。
「シウォナ・・・。」
キュヒョンのぷっくりした唇に俺の唇が吸い寄せられる。
30センチ。
10センチ。
あと数センチ。
「あ~。あのさ~。」
え?
一瞬、周りの空気が止まった。
俺の両手はキュヒョンの肩を抱き寄せ
キュヒョンの両手は俺の腰に添えられている。
二人で同じ方向を振り返り、
目にしたものは。
ドンへだった。
「ド、ドンへ?」
「ド、ド、ド、ドンへヒョン!!
い、い、い、いつから!?」
「え?あ~。最初っから。
俺、トイレ行ってて~。」
キュヒョンが口をパクパクして
声にならない叫び声を上げて頭を抱えその場にしゃがみ込んだ。
「うわぁぁぁぁ。」
「キュ、キュヒョン?」
ドンへがオロオロしながら覗き込む。
「俺、スジュ辞める!!」
「ええ!?」
ドンへと声が揃った。
「何言ってんだよ。こんな事ぐらいで。」
「こんな事?
ドンへヒョンには分からないよ!!」
顔を真っ赤にして、
今にも泣き出しそうなキュヒョンを見て俺は動揺してしまった。
どうしよう。
何か言わなきゃ・・・。
「キュ・・・。」
「お~いドンへ~。
何やってんだよ~。
何で着いて来てないんだよ~。」
その時タイミングが悪く、
ヒョクがドンへを迎えに部屋に入って来た。
他のメンバーも次々戻って来た。
「早く行こうぜ。腹減って。
あれ?キュヒョン?お前そんなとこで何やってんの?」
トゥギヒョンが不思議そうにしゃがんだままのキュヒョンを見る。
涙目になったキュヒョンがパニックを起こしていた。
「ぼ、僕、
スジュ辞めるから!!」
「はあ!?」
みんな一斉に声がハモった。
「キュヒョン、お前どうしたんだよ。」
トゥギヒョンが目を丸くして問いかけた。
キュヒョンはもう周りが見えてない様で、
慌ててその場から離れようとし立ち上がった。
そんなキュヒョンをドンへが呼び止める。
「キュヒョン!!待てって!!
大丈夫だから!!」
一体何が大丈夫なのか。
そんなのキュヒョンの耳には聞こえないはずだ。
「俺だって。俺だってヒョクと付き合ってるから!!」
「はあ~!?」
今度はみんな、一斉にドンへの方を振り返った。
「ド、ドンへ。
お、お、お、お前何言ってんだよ。」
ヒョクが慌てふためく。
「あ、ヤベ。言っちゃった。」
俺達は口をポカンと開けたまま、ドンへを見ていた。
もちろん、キュヒョンも。
つづく。
[画像はお借りしています。ありがとうございます。]