夏至を境に少しずつ冬に向かいます。
わたしたちが冬の気配を感じるのはずっと先で、
これから夏の盛りがやってくるけれど、
自然の流れは、わたしたちの意識よりずっと前に
新しい世界への舵をきっています。
春の花が終わり、明治神宮の森も初夏の景色に変わってきました。
準絶滅危惧種に分類されるというタシロラン。
明治神宮でもこのところのまとまった雨のおかげでたくさん咲き始めました。
キノコ狩りと同じで、ひとつみつけると、ここも、あちらも、とみつかる不思議も楽しみのひとつです。
参道にある百合の花も蕾をたくさんつけて、
花開く日を楽しみに待っているようです。
ところで花は香りを出しているのではなく、
すでに空間にある花の香りの要素を集めている、
ということを聞いたことがあります。
わたしたちもきっと同じように、この空間にあまたにある事象から
そのときの自分にふさわしいものを選びとって
「わたし」を作り出しているということなのでしょうか。
この空間のバラの香りという要素を集める力を持っているのが
バラであるとするならば、
わたしという人がいるのではなく、
この宇宙にあるすべての要素の中から
「わたし」を作り出しているのに過ぎないということ。
わたしたちの多くは、
花が香りを作っていて、自分という人間が存在して、
個性を発揮している、とだけ信じているけれども、
花も、自分も、「要素を集める」という性質もあって、
両面が合わさって、揺るぎない事象があるのかもしれません。
それは、夏至の日が、一年でいちばん日が長い(夏の至り)と同時に、
夜がいちばん短い日であり、冬にむけての起点であるのと同じように。