ずっと気になってた映画。やっと見ることができました!見終わったあとに何とも言えない余韻が広がる、素晴らしい作品でした。この作品で2023年のアカデミー主演男優賞に輝いた、ブレンダン・フレイザーの奇跡の復活も話題となっていましたね。
この映画は、体重272キロ。引きこもり生活の中年男性チャーリーが、自らの死期を悟り、疎遠になってしまった娘エリーとの絆を取り戻すための、最後の5日間を追った感動のストーリーです。ああ、このストーリー読んだだけで映画みなくても泣ける。大きめのハンカチ必須の映画ですおねがい

見どころ①…なぜチャーリーは極度に肥満してしまったのか
暴飲暴食を重ね過食症となったチャーリー。彼がこうなったキッカケは、愛する恋人(彼)を自死で失ってしまったから。愛する人を救えなかった後悔から自暴自棄となったチャーリーは、体にまとわりついた脂肪の重み以上に、心に重たい十字架を抱えているよう。「決して自分を許さない」と言わんばかりに、どんなに体調が悪くても病院に行くことを拒み続けます。太りすぎて歩行困難。普通の生活を送れないチャーリーなので、この映画のシーンはほぼ彼の部屋だけ。いわゆる密室劇なわけなんですが、光があまり入らない暗めの部屋がチャーリーの心そのもののようにずどんと淀んだ感じを表しています。
見どころ②…娘との関係はどうなるのか。一人娘エリーとの関係は最悪。エリーは父親に対して憎しみや恨みの感情をあらわにし、むき出しの悪意をぶつけて攻撃してきます。父に対して怒りをぶつける理由は、エリーがまだ8歳の頃に、チャーリーが家族を捨てて恋人のもとにいってしまったから。また、恋人が男性(父がゲイ)という事実もショックだったのでしょう。エリーは大好きな父親に捨てられたショックから、誰のことも信じることができず、家族にも周囲にも攻撃的な態度でトラブルメーカーとなっていました。でも、エリーの気持ちもわかる。甘えたいときに甘えられず、寂しいときに大好きなパパはいない。去勢をはることで、必死に自分を守ってきたんだと思います。悪態ばかりでひどい態度のエリーに、チャーリーは怒ることもなく、「どんなに君は素晴らしいか」「君には価値がある、才能がある」「君の未来は素晴らしいと信じている」と伝え続けます。チャーリーの無償の愛は、最後に娘に響くのか、届くのか。
見どころ③…タイトル「ザ・ホエール」の意味直訳どおりで、「クジラ」なんですが、なぜ「クジラ」なのか。巨漢のチャーリーであることは容易に想像できますが、小説の「白鯨」や、劇中に度もでてくる「白鯨」に対するエッセイともリンクしていて、これがまた謎が深い。。映画を見進めていくうちに、この伏線が回収されていき、ラストで「ああ、そうゆうこと?」と、ずしっと衝撃がはしります。
最後は圧巻です。
ちなみに「白鯨」は世界的に有名な小説らしいですが、わたしは読んだことがないので、いまいちピンとこなかった部分ではありますが、他の方が書かれている考察を読んで、なるほどーーとなりました。
見どころ④…ブレンダン・フレイザーの大復活
ブレンダン・フレイザーといえばハムナプトラ。かなりヒットした超大作ですよね。わたしも映画館にいきました^^相当な人気俳優さんだったと思いますが、近年はスポットライトから遠ざかっていたようです。というのも、どうやら彼はトラブルが重なり(セクハラ、離婚、母の死など)、鬱状態になり、実生活でも体重が増えてしまったようなんですね。どん底を経験したブレンダンだからこそ、チャーリーを演じることができる。そういっても過言じゃありません。アカデミーをとった迫真の演技は必見です。
見どころ⑤…この映画が伝えたかったことは何か。わたしが1番感じたことは、自分以外の人生を変えることは難しい。でも、自分で自分の人生を変えることはできる。自分の人生が変わることで未来が変わり、思いもよらない方法で誰かを救えるかもしれない。と思いました。
チャーリーはずっと辛く苦しんでいた。愛する人を救えなかったこと、愛する人を捨ててしまったこと。後悔して引きこもり生活を続けているうちに、醜く太ってしまい、さらに心も体も引きこもってしまったチャーリーが、自分の死期を悟って、最後に何が残せるか、最後に自分ができることは何か、と自らの意志で重たい扉を開けたことで起きる感動的な奇跡。絶望から希望に反転していくかのような壮絶なラストが素晴らしかったです。
もし自分の死期がわかったら、どう過ごすのか。誰と一緒にいたいのか。わたしも考えちゃいましたね。
監督は「ブラック・スワン」や「レスラー」を手掛けたダーレン・アロノフスキー監督とのこと。これらの作品が好きな方だったら、ぜったいハマると思います。


『ザ・ホエール』わたしはとても大好な映画でした。傑作です!