「ザリガニの鳴くところ」
よくわからないタイトル。
タイトルだけだとミステリー要素は感じられませんが、世界的にヒットしたミステリー小説の映画化です。
物語は1960年代のアメリカ
ノースカロライナ州の湿地帯の森で、青年チェイスの変死体が見つかった場面からスタート。
事故か、他殺か。
程なくして、容疑者として浮かび上がってきたのは、近くの湿地に住む美しい女性カイア。
湿地に1人で住む変わり者として、町中の人から距離を置かれ社会に見捨てられているカイア。
カイアは過去にチェイスと付き合っていたこともあり、彼女がやったに違いないと小さな町で噂があっという間に広がり、物的証拠がないに等しいにも関わらずカイアは逮捕され起訴される。
唯一の証拠はチェイスの衣服に僅かに付着されていた赤い羊毛。これがカイアの持っていた帽子と一致したことが決め手となり逮捕される。
今の時代では考えられないですね。
カイアを担当する弁護士ミルトンは彼女の無実を信じ弁護にあたるが、カイアは徹底して黙秘を続ける。
困りかねたミルトンから差し入れされた一冊の本を見たカイアは、徐々に心を開き始め自分の半生を語り始める。
そこには幼少期に家族に見捨てられ、町の人からも避けられ、1人孤独に湿地の森で自然と共生しながら成長してきた壮絶な過去があった。
彼女は無実なのか、それとも有罪なのか。
カイアの過去を振り返りながら現在とシンクロしていく法廷ミステリー。
湿地帯って、あまり日本じゃピンとこないですよね。日本で有名な湿原ともちょっと違う感じ。
映画を見たイメージでは、マングローブが近いかな。あとは規模感小さめのジャングル?
移動手段は小型のモーターボートで、小さな子どもでも器用に運転してました。
映画では湿地帯の豊かな自然、そこに共生する、鳥、動植物、虫の姿がイキイキと描かれていて、それだけでも見る価値がありますね。
貧しいカイアは自然から教わることが全て。
学校に通っていなかったため読み書きができず、初恋の彼テイトから読み書きを教わって、10代半でやっと文字が読めるように。
最初は友人だったテイトとの関係が、徐々に恋愛へと変化していく描写が瑞々しく描かれていて、これぞ初恋って感じ。
キラキラ世界が輝き始めとっても素敵なシーンが続きます。
しかし相思相愛でラブラブな2人でしたが、テイトの大学進学をキッカケに破局しちゃうんです。
都会にいったテイトは、カイアのもとを訪れることがなくなくなり、木綿のハンカチーフ的な別れ方になるんです。ヒドイよテイト。
裏切られ、また1人になったカイアは、数年後に町で有力者の息子チェイスと出会うことになり、お互い惹かれ始めます。
チェイスは少しモラハラ的な傾向があるなーと感じる場面があったんですが、物語の後半ではカイアに手をあげたり、部屋をメチャクチャに破壊するなど、最初は優しかった彼がどんどんバイオレンス野郎に変貌していくんですよ
湿地に1人で住む彼女には、助けてくれる家族もいなければご近所さんもいないので、またいつ襲われるか気が気じゃないですよね。
そんなときに、またふらりとテイトが現れるんですねー。
チェイスと付き合っていることは知った上で、カイアに未練があるテイトは自分の愚かさを謝り寄りを戻しに訪ねてくるんですが、
一方でチェイスの素行の悪さを知ってるため、カイアが心配で忠告しにくるんです。
過去テイトに傷つけられたカイアは、彼を追い返すんですが、やはり初恋の彼が忘れられないのか、去っていくテイトを見つめるカイアの眼差しが切ない。
テイト、チェイス。
タイプの全く違う2人の男性から愛されるカイアは、美しいし何より純粋無垢で芯が強いところも魅力的。
映画の大半はカイアの恋愛に絡む喜怒哀楽シーンばかりなので、この映画がミステリーだったこと半ば忘れちゃってました。
でもですねー、キャッチコピーは
「事件の真相は、初恋の中に沈んでいる」
ですからね
この恋愛要素がとっても重要なんです。
最後の法廷シーン。
緊張に包まれた法廷で言い渡された判決は、
「無罪」
当初カイアに偏見的な目をもっていた陪審員から無実を勝ち取ったカイアは、もう誰にも誤解されたり蔑まれることはないでしょう。
湿地での暮らしからフィールドワーク的に得た知識で専門書を出版したり、
初恋の彼テイトと結婚して静かで穏やかな日々を手に入れるなど、カイアはやっと幸せをつかみ、めでたし、めでたし、になると思いきや…。
ラストにゾッとする真実が待っています。
オチは予測はついてはいたもののすっきりしないのは、真の犯人が誰かは明確になってないんですよね。
チェイスが事件当日身につけていた貝殻のネックレスがカイアの遺品から見つかったことで、やはりチェイスは殺されて犯人はカイアだったと示唆するようなラストですがどうも腑に落ちない。
裁判でも論点になったカイアの当日のアリバイ。事件当日は遠く離れた場所にいたことが立証されているし、仮に現場に戻ってきたとしとも、女性1人で短時間でできるような犯行としては難しすぎる。
赤い帽子はもともとはテイトのものだったから、私はテイトを庇っているのかなと思ったんだけど、テイトの驚いた表情をみるとやっぱり違うのか?
それともチェイスの似顔絵を見て、カイアがチェイスに対する本当の気持ちに気づき苦しくなったとか?
ふつう、殺したいほど憎いひとの思い出を残したり、自分の首を絞めるような証拠を大切にしまったりしないですよね。
結局、カイアはどっちの男性を愛してたのか、と
疑念がわきます。
じゃあ他に犯人として考えられるのは、カイアに唯一優しくしてくれて、まるで我が子のように可愛がってくれた町の雑貨屋の黒人夫婦か?
動機はカイアを守るため?
または黒人差別を受けていたから?
いやいや、だとしても危険を冒してまで殺す?
また法廷でカイアがお腹をさすり妊娠を匂わせているシーンがあるけど、その後カイアに子どもがいるようなシーンはなかったような。
あとから、あとから、湧き上がるモヤモヤ。
消化不良が残ります。
エンドロールは原作ファンでもあるテイラー・スウィフトによるオリジナル・ソング「キャロライナ」で、歌詞には物語の核心に迫るキーワードが盛り込まれているとのことなので、あとでじっくり聴いてみよう。
面白いか、と言われたら面白いけど、
それ以上にモヤモヤでスッキリしない映画でした。それだけのめり込んで見れた、ということですかね。
これはストーリー以上に気になったんだけど、
カイアは森泉に見えてくるし、
テイトはヌートバーにまじでそっくり。
と、思いながら見たのは私だけでしょうか