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1 はじめに

行政法を勉強していると,「事実行為(事実上の行為)」という用語が出てきます。

 

事実行為」とは,行政機関の行為であって,法律上の効果を有しないものだとされています。

 

 

しかしながら,おそらく「事実行為」だけでは何のことだかわからないと思います。

 

そこで,ここは「行政行為(行政処分)」とセットで見ていくこととしましょう。

 

 

行政行為(行政処分)」とは,行政機関の行為のうち,国民の具体的権利義務の変動をもたらす行為だとされています(今回は「事実行為」との対比なので,簡略化してます)。

 

要するに,「行政行為」が行われると,例えば私の権利義務に何らかの変動(変化)が生じるというわけです。

権利が発生・変更・消滅したり,義務が発生・変更・消滅したりするというわけだ。

この「権利や義務が,発生・変更・消滅すること」を法律上の効果と呼びます。

 

「事実行為」は「法律上の効果を有しない」のですから,「事実行為」が私に対して行われたとしても,私の権利義務には何も変動は生じないことになります。

 

 

まとめると,

  • 行政行為(行政処分)…対象となる国民(相手方)の,権利義務に変動をもたらす
  • 事実行為…対象となる国民の,権利義務に変動をもたらさない
となります。
 

2 具体例

ではここで,「違反建築物に対する除却命令に基づく建築物除却義務」の場面を例にして考えてみましょう(建築基準法9条1項)。
 
例えば,私がX県内に建築基準法に違反する建築物(違反建築物)を所有しているとします。
 
 
建築基準法は,一定の要件を満たす場合に,都道府県知事(特定行政庁)に対して,違反建築物の所有者に除却義務を課す旨を命ずることを認めています(建築基準法9条1項)。
 
なので,この場合,X県知事は,私に対して,違反建築物を除却するよう命じることができます。
 
建築基準法第9条
1 特定行政庁は、建築基準法令の規定……に違反した建築物……については、当該建築物の……所有者……に対して、……相当の猶予期限を付けて、当該建築物の除却……その他これらの規定……に対する違反を是正するために必要な措置をとることを命ずることができる。
 
この命令(除却命令)は,違反建築物の所有者に対して,「違反建築物を除却する義務」を課しています。
つまり,国民である私の権利義務に変動をもたらしています(義務がない状態→ある状態)から,除却命令は「行政行為(行政処分)」ということになります。
 
X県知事は,私に対して,行政行為(行政処分)を行ったというわけですね。
 
 
さて,こういう風に除却義務を課して素直に応じてくれるのならいいのですが,中には素直に応じてくれない人もいるわけです。
 
では,私も,素直に応じなかったとしましょう(笑)。
 
 
除却義務を履行しなければならないにもかかわらず履行してないのですから,義務違反ということになりますね。
 
そこで,X県知事は,私の義務がきちんと履行された状態を確保するために(違反建築物がない状態を実現するために),その義務を“無理やり果たした”状態へともっていこうします。
それが,いわゆる「行政上の義務履行確保」のための手段です。
 
今回の場合,私の義務は代替的作為義務に該当しますので,代執行を行っていくこととなります(行政代執行2条)。
 
 
この代執行も,もちろん行政機関の行為ですね。
 
では,代執行は,「行政行為(行政処分)」と「事実行為」のどちらに該当するでしょうか。
 
上記の通り,代執行は,すでに生じている私の義務を実現する(履行する)ために行うものであって,代執行自体が私に何らかの権利義務をもたらしているわけではありません。
 
したがって,代執行は,「行政行為(行政処分)」ではなく「事実行為」に該当します。
 
 
こんな感じです。
 
「事実行為」の理解に,少しは役に立ったかな?