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行政不服審査法46条1項・2項の理解が難しいと感じる方がいらっしゃるようです。

おそらく、複雑そうに見える条文の構造が、理解の妨げになるのだと思いました。

 

そこで、いつもとは少し違った説明の仕方(さっき、お米を買ってきた帰りに思いついた説明の仕方ですw)でやってみようと思います。

法46条1項・2項の話がよく分からないという方、よかったら参考にしてみてください。

 

1 はじめに

法46条の条文見出しを見てみると、「処分についての審査請求の認容」とあります。

そのため、この条文は、処分についての審査請求において、審査請求人の主張する内容につき理由があると判断された際の審査庁の対応が定められていることが分かります。

2 法46条の内容を見てみよう

では、実際の規定をまずは見てみましょう。

まずは、法46条1項からです。

 

46条1項
処分(事実上の行為を除く。以下この条及び第四十八条において同じ。)についての審査請求が理由がある場合(前条第三項の規定の適用がある場合を除く。)には、審査庁は、裁決で、当該処分の全部若しくは一部を取り消し、又はこれを変更する。ただし、審査庁が処分庁の上級行政庁又は処分庁のいずれでもない場合には、当該処分を変更することはできない。

 

まぁこれをザッと読むだけで理解できるのなら、苦労しませんわな(汗)。

ひとまず1つずつ説明していきましょう。

 

(1) 法46条1項本文

最初は、46条1項本文からいきましょう。

なお、かっこ書の部分は、話がややこしくなるので今回は省略します。

(慣れてないときは、ひとまずかっこ書は無視するのがベター。)

 

46条1項本文
処分……についての審査請求が理由がある場合……には、審査庁は、裁決で、当該処分の全部若しくは一部を取り消し、又はこれを変更する。

 

割とシンプルになりましたね。

これだけでも、何となく言いたいことが見えてくるんじゃないかと思います。

簡単に言ってしまえば、処分についての審査請求が理由がある場合には、審査庁は、「『当該処分の全部又は一部を取り消す』や『当該処分を変更する』」という対応を裁決でするそうです。

 

では、ここまでを表にしてみます。

「審査庁の種類」という枠があります。

これは、法46条1項・2項を見ると、どうやら審査庁は1種類だけでなく、全部で3種類(3つの場合が)あることが分かるため、設けました。

具体的には、「①審査庁が、処分庁の上級行政庁である場合」「②審査庁が、処分庁自身である場合」「③審査庁が、①でもなければ②でもない場合」の3種類です。

 

けど、①②③すべて「審査庁」ですから、上記のとおり「『当該処分の全部又は一部を取り消す』や『当該処分を変更する』」という対応を裁決でするそうです。

(2) 法46条1項本文+ただし書

しかし、ここでちょっと待ってください。

先ほど法46条1項をザッと確認しましたが、この規定には、本文だけでなく「ただし書」がありました。

では、ただし書を見てみることにしましょう。

 

法46条1項ただし書
ただし、審査庁が処分庁の上級行政庁又は処分庁のいずれでもない場合には、当該処分を変更することはできない。

 

お、「できない」と来ました。

何ができないのかというと、「当該処分を変更すること」だそうです。

そして、誰ができないのかといえば、「審査庁が処分庁の上級行政庁又は処分庁のいずれでもない」場合だそうです。

 

これは、……そうです、上記の「③審査庁が、①でもなければ②でもない場合」のことですね。

 

つまり、審査庁が、処分庁の上級行政庁でもなければ、処分庁自身でもない場合には、当該処分を変更することはできないのだそうです。

 

どうやら、先ほどの表は間違っていたようです。

では、直してみましょう。

赤文字で「〇(可能)」から「×(不可)」に変更しました。

これで、法46条1項本文とただし書の内容を反映させた表が完成しました。

 

ですが、これだと、皆さんが日頃テキストでご覧になっている表とは異なるはずです。

そうです、法46条2項の内容が反映されていません。

 

というわけで、次は、法46条2項を見てみましょう。

(3) 法46条2項

それでは早速、法46条2項の規定を見てみます。

 

法46条2項
前項の規定により法令に基づく申請を却下し、又は棄却する処分の全部又は一部を取り消す場合において、次の各号に掲げる審査庁は、当該申請に対して一定の処分をすべきものと認めるときは、当該各号に定める措置をとる。
一 処分庁の上級行政庁である審査庁 当該処分庁に対し、当該処分をすべき旨を命ずること。
二 処分庁である審査庁 当該処分をすること。

 

まず、この規定はどんな場合に用いるかというと、「法令に基づく申請を却下し、又は棄却する処分の全部又は一部を取り消す場合」です。

要するに、取り消す場合ね。

 

先ほど出てきた表を見ると、①②③どの場合にも「全部又は一部の取消し」ができましたから、この規定は、どうやら①②③いずれの審査庁にも関係ありそうです。

 

そのうえで続きを見てみると、「次の各号に掲げる審査庁は、当該申請に対して一定の処分をすべきものと認めるときは、当該各号に定める措置をとる。」とあります。

2項には、1号と2号という風に、「〇〇の審査庁⇒この措置をやってね」と定めてくれています。

 

1号は「処分庁の上級行政庁である審査庁」とありますから、上記の①の場合ですね。

この場合には……「当該処分庁に対し、当該処分をすべき旨を命ずること」という措置をせにゃならんそうです。

例えば、許可処分をすべきだというのなら、「許可処分なさい」と命ずるという具合ですね。

 

2号は「処分庁である審査庁」とありますから、上記の②の場合ですね。

この場合には……「当該処分をすること」という措置をなさいとなっています。

許可処分をすべきだというのなら、「許可処分する」という具合ですね。

 

これで、号が終わってます。

 

 

……あれ?③の場合は?

③の場合に関する規定が、号として挙がっていません。

 

何となく気づいているんじゃないでしょうか。

そうです、③の場合に関しては法46条2項に定めがないので、何らかの措置をする必要はないんです。

何もしなくていいんですね。

 

というわけで、ここまでの話を改めて表にまとめてみましょう。

(4) 完成!!

これで、ようやく法46条1項と2項の規定の説明が終了しました。

 

表の清書をすると、以下のような具合です。

この完成した表は、もしかすると皆さんがお持ちのテキストに似たようなものが載っているかもしれませんね。

3 まとめ

以上で、行政不服審査法46条1項・2項の規定に関する説明・整理は終わりです。

今回は、法46条1項本文⇒ただし書⇒2項という風に分解したうえで、1つずつ内容を確認しつつ・表に整理して修正しながら、内容を追いかけてみました。

 

この整理の手法は、実は、行政不服審査法47条(事実上の行為についての審査請求が理由がある場合)や49条3項(不作為についての審査請求が理由がある場合)にも用いることができます。

上記の規定がよくわからないという方は、今回お話しした手法を参考に、1つずつ整理しながら内容を確認してみてください。