街には赤と緑のコントラスト。ポインセチアがネオンに輝らされていた。

『コマ前で待ち合わせなんて初ですよ!』

『そう?私は京王線で大学に通ってたから、みんな待ち合わせは歌舞伎町なんだよね〜』

『あれ??まさか迷ってる?八ッ木くん』

大学生がワイワイガヤガヤ…

周りには店明けのお水のお姉さんとホスト。ホストはシラフだが、お姉さんがしゃがみ込み今にも吐きそう…大丈夫かなぁ??お姉さんもだけど付き添うホストも仕事でも大変そう。そんなことを考えていると

『すみませ~ん!!』

人混みから聞き覚えのある声。両手を振るオーバーリアクション。やっぱ役者仲間だよね~エキストラも似合いそう。そして脇役も。八ツ木くんだ。遅刻する姿も存在感。主役より脇役が上手くないとドラマとして成り立たない。またピンとこないことはよくある話。そんな芝居のことが日常のこんなシチュエーションでも浮かんでしまうなんて職業病??いや本職はキャラクターショップ店員だ。

『迷った??』

ハァハァ…フゥー…

『あ、あの…寝坊です…昨日、バイトで』

素直なところが憎めない。

『やっと4人揃ったね~じゃマック食べたら行こうかぁ!夜のディズニーパレード』

コマ側のマック2階へ。

4人は、あっと言う間に食べ終わりマックの階段を降りた。すれ違い様に…

『え?男3に女1。何あれ!ホストと客?』

『まさか~スーツ着てないじゃん!
大学生じゃない?イケメンだけど…』

歌舞伎町で男女の割合間違えると…こんな要らぬ噂を他人から立てられる。まっ、それが歌舞伎町。ホストとお水、本引き、そして…大学生。キャッチバーに引っ掛かった客は交番に押し掛け…お巡りさんは休む暇なし。困ったもんだ…

4人で駅に向かい、電車でディズニーランドへ向かった。

『まさかクリスマスに、この4人でディズニーランドに行くとは…』
『良かったんですか??俺らで…』
『え?なんで??クリスマスにディズニーの夜のパレード行ってみたかったんだよね~』

シゲちゃんがドア付近の角の椅子を見る。

『あの人、荷物まとめてるから降りるかも?ちょっとい~すか??』

そう言うと人の隙間を縫うように移動。立ち上がった瞬間にサッ。椅子取りゲーム。

『里桜さ~ん!!取りました~!座って座って~!早く〜』

嬉しいやら恥ずかしいやら…天真爛漫、太陽のように明るいのがシゲちゃんだ。そして優しい。

『ありがとうね~けど、みんなは座らないの??ひとつだけだし…』
『俺らはいいよな~』

さっきまで黙ってた鈴木くんが口を開いた。

『じゃぁ…ありがとう!』

内心ちょっと行く前から足が棒だった。助かった…気がする。慣れないブーツ履いたからだ。

『あ、そうそう!!私、夜のパレードもクリスマスも初めて〜めっちゃ嬉しい!!』

『マジっすか???』
『え~!!俺らが初??』
『なんか…気安く誘っちゃってすみません』

『イイじゃん!!楽しいからイイじゃん』

『そう言ってもらえると…気が楽だな~』
ハハハハハ…

ん??何?この微妙な笑い方。役者なのにみんな。気遣いが逆に切ない。ホントに初めてなんだけど。クリスマスのディズニー。

今までは、年越しLIVEに同級生と行き盛り上がりすぎて終電逃し巣鴨の大伯父の家に泊まらせてもらうとか全然ロマンチックじゃないしキャラでもない。

かわいい、からかけ離れたところにいる。それも全部、弟のせいだ。きっと。そう思えば気が楽だ。モテナイ理由にピッタリ。

4人で会話していると窓の外には遠くにディズニーランドが。

『ホントに来たね~楽しみ!!ところで電車降りてから、どうやって行くか知ってる?誰か??』

…………え??

『俺ら初めてだし…ディズニーが…』
『なぁ??』『あ、うん…』

『まっ、みんなに着いてけばいっか~!』

ただの勘だけで人生どうにか生きてきた里桜らしいこたえ。

『そうっすよね~!ホラ、あのコ。行く気満々じゃないっすか!!』

シンデレラみたいなカッコしてるとは思っていたが…恥ずかしくて…日常では出来ない。かなり勇気がいる。CLUBでボディコン着たり雑誌で水着着るくせに…シンデレラはムリだ。まだ気ぐるみの方が自分に合ってる気がする。

『いつも店ではどんなカッコですか??』
『あ~制服のスカート、カーディガン。
頭にミニーの耳。髪は下ろしたり三つ編みかな??ブラウスはピンク指定』

『へ~!仕事場にも行ってみたいな~!』
『ディズニーランドとあまり商品は変わらないよ?ランドで買えば限定もあるし帰りにお土産買えば??』

急に浮かない顔に…ん??私、何か変なこと言ったかな?…また。

『もしかして…ですけど…俺、遠回しに断られた感じ??里桜さんの店行くの』

『え??違うよ~そんな風に聞こえたらごめん…お店に来てね~!!』

ん??思いついたこと何も考えずに言っちゃうからモテナイのか??原因そこ?…何か心当たりたくさんありすぎて分からない。

『またみんなで今度は里桜さんの店に行きます!!な、次の予定も決まりだな~!』

そんなこんなでドアが開くと早足に。改札を通過。突然、周りが走り出した!良くわかんないけどみんなも走る。

『ね~なんで走ってるの~!!』
『俺も分かりません!』
『みんな走ってるから取り敢えず走んなきゃって感じっす!』
『じゃ走るか~!大丈夫ですか~??』

コンコンコン…カッカッカッ…

なんでブーツ履いてきちゃったんだろ…ヒールよりマシだけどランニングシューズにすれば良かったぁ…

入り口では人にぶつかったりぎゅうぎゅうに。なんだかんだで漸く入場。

ん~どこもいっぱいだな~やっぱり。
しかもカップルだらけ。

男3女1は、やっぱ怪しい感じ??まぁ元から人の目は気にしないタイプだから、いっかぁ~。何とか乗り物に幾つか乗り終えた時に

『あれ??もしや場所取りじゃない?』
『しまった…出遅れた!!』
『とにかくまだ背伸びすれば観れそうだしドリンク買いトイレ休憩!順番に』

『里桜さん!俺と行きましょうよ~1人じゃ危ないから。心配だし』

『あ、ありがとう。じゃ先に行くね〜』

フタリを置いてトイレ休憩。

『最近は光輝さんと逢ってます??芝居のレッスン以外で』

『うん。この前ディスコに連れてってもらったよ~!』

『デート?フタリきり??付き合ってるんすか〜!!』

『あ~、あ、4人で。男3女1。ん??今日のパターンと一緒だね~』

ハハハ……

話は途中で終わり、トイレの帰りにドリンクを買い戻ってきた。

『お待たせ~!!』
『じゃ俺らも』

さっきは迷った。ホントは光輝に告白されてオーケーしたこと、話すか…

別に話すのは構わないけど、光輝に許可をもらうか、やはりこういうのは女性はでしゃばらずに男性に任せた方がいいかな??と思い内緒にしたのだ。

この先、光輝が話してくれる。そう思い、お茶を濁した。フタリが戻って直ぐにパレードが始まった。

『カメラ、カメラ!!』
『そんな焦んなくて大丈夫ですよ~ま、俺も初だけど』
『みんなで撮れば誰か成功しますよ!』
『それもそうだな~』

缶ドリンク片手に悴む手でシャッターを。ゆったりときらびやか。そして優雅なパレードなのに自分の前は、あっと言う間に
通り過ぎた気がした。

『来て良かったね~!!』
『マジ久々に芝居以外で、めちゃくちゃ感動しましたよ~!』
『うん。だね~!!』

4人は帰りを急いだ。早足で歩く。

『あ!写真撮りません?みんなで』
『い~じゃん!みんなにも見せようぜ!』
『すみません!写真撮ってもらえます?
代わりにお二人のも撮るので!』

す、すごい…やっぱ役者向いてる。完全に帰りかけてる人を呼び止めて言えるんだ~感心。そんな訳でシンデレラ城をバックに1枚。

『あ、念のため、もう一枚いいですか?』

またまた勇気!!それも言えるのね。見習わなくては…陽きゃだけど一応、気はちょっとだけ遣えるんだよね、これでも。

4人のディズニークリスマスは想い出が詰まった2枚とともに終わった。