ひんやりしたマイナスイオンいっぱいの
土や竹の香りがする空気。
ここはホントに横浜なのか。
昔よりは自然が減った。池や小川には
裸足で入りザリガニを、凧糸に括りつけた
煮干しで釣りみんなでよく遊んだ。
その公園に今は、おじさん、おじいちゃんが釣り竿で魚を釣っている。恐らくコイかボラみたいなのしかいない。果たしてここは釣って良いのか?
そんなくだらないことを考えながら、
公園を通りすぎ自宅に着いた。
『ただいま~ラジオ聴くから2階行くね』
『珍しいわね~ラジオなんか聴いたことあったかしら?お夕食は?』
『遅番だから駅ビルで食べちゃったぁ。社食。今日はキャラクターのうちの店舗以外に、新店の人が居て混んでたけどね~』
トントンとん…階段を駆け上がる。
『はい!みなさん、こんばんは~!!DJ光輝です!一週間ぶり〜元気?みんな〜』
あ、ホントにDJだった。
里桜は、彼が芝居や広告代理店、DJすべてにおいて一生懸命なことに感心していた。
自分が中途半端な気がした。
親にも言えずにいることも気になっていた。親の言いなりはやだ。けど…言ったら…
仕事があるのにと反対される。
『今夜のオススメは古内東子。逢いたいから…この曲は男性の切ない気持ちを歌った
のではないかな?と自分なりの解釈ですが皆様はどうでしょうか?それでは聴いてください!』
恋をして
きれいになってく
君を見ているのは
辛いから もうここには来ないで
言えないよ それでも逢いたいから
ん?…不倫??二股???
彼氏じゃないんだ…この歌詞。元彼??
え〜!!元彼のところに手料理を作りに来てる感じの設定??だから…彼は悲しいから…来て欲しくない。けど…それでもやっぱり逢いたい…愛してるから…
ん??私の解釈は合ってるのか??
合ってると仮定したら…
へぇ~こんなに切ない歌詞あるんだ。
『はい!どうでしたか??では2曲目は
小泉今日子。木枯らしに抱かれて…』
恋に落ちたあの日から
気づかぬうちに心は
あなたを求めてた…
ん~そっかそっかぁ。なるほど〜ん??
恋に落ちたあの日から…
あれ??私の今?
確かに大晦日、恋人岬に行く約束したよね。断らなかったよね…私。
気づかぬうちに心は あなたを求めてた
今、今じゃない??やっぱり…
えっ??気づかせるためにかけた!!
この曲をわざわざ??…な訳ないか〜
企画とかあるだろうし〜アハハ
私って単純。
しかも私が聴いてるかも向こうは知らない訳だし。深読みしすぎ。恥ずかしい…
あっ…ん??あれ??
六本木のナンバー1ホスト上がりだと話してたよね~。あるかな??もしや。私なんか手の上で転がされる簡単に。
恋の駆け引きとか苦手だし…
顔に出るし…
その前にわりとコレでも素直だから
好きな人に『すき❤️』て言っちゃうし…
分かりやすすぎるし…え??恋とか下手な人ランキングとかで1位になってた!!
ヤバいヤバい完全におちてる?ん?え?
思考回路バグってるし。
遠隔パワーすごいし。
ブルーライトカットみたいな
遠隔パワーカットとかないかな??
勝手にキャッチしすぎて困っちゃう。
『はい!木枯らしに抱かれて…でした〜』
そんな色んなことを考えてたら
時間は、あっという間に過ぎた。
『ではまた来週!光輝とお付き合い
くださいね~里桜さん!!』
え?えっ??里桜さんて…
終わっちゃったけど…呼ばれた??
なわけないかぁ~リスナーさんがたまたま
同じ名前だよね~きっと。そうそう。
あるアル〜!!
ブーブー。
テーブルの上のスマホが揺れた。
『はい』
『里桜ちゃん!聴いてくれた??ラジオ』
『あ、光輝くん!うん。聴いたよ~』
『最後に呼んだ名前も??』
『聴いたよリオさんって』
『良かった!聴いてくれてたんだ〜。タイムリーにradiko。1番肝心なとこ!!俺んなかでは』
えっ??じゃぁ、やっぱりリオって私?
私のことだったんだぁ~!!
ストレートはテレる。
自分もストレートなくせに。
どんなリアクション??
やっぱ無難に…
『ありがとう』
里桜も気づかぬうちに光輝を好きになっていた。
『古内東子の歌詞。どう??もし…自分が愛人の子だったら。色んな解釈できるけど、例えば…結婚してる彼の家に手料理を作りに
来て帰るとか…』
『え~!!そんなこと出来ないよ〜いやムリムリムリ〜私には』
『そっか。だよな。この歌詞は、そんなんじゃないと思うけど??たとえな。あと、あと一つ。もし自分が愛人の子ならどう?
どんなキモチ??…』
里桜はドキッとした。
そんなの想像したことないし…
けど考えた。
『いやかな??ん~やっぱやだ。なんか…けど…その子には何の罪もない。うん、私なら引け目を感じずに生きる!陽きゃだし、いやかもだけど気にしても仕方ないから。事実を受け止めて生きる。自分なりの人生歩む!何か母にも理由があるかもだしホントに愛してるから産んだのかな?と思う。女性の立場で考えると…』
『やっぱりな。初の合格!!ありがとな。出逢えて良かった!!ありがとう…正式に俺と付き合って!』
『ん??え??…うん。よろしくお願いします!こちらこそ』
『俺、愛人の子なんだよ。まぁ色々あって
。だから六本木のホストやった』
『そっかぁ。わかったよ。ありがとね〜大事なこと私に教えてくれて。聞けて良かった』
『今まで客の女はみんな、え??って感じで態度も変わり見下してきたり。恥ずかしくて誰にも言えないよ~よく言えるよね!あんた!アハハ〜だってよ。けど里桜は違う。思ってた通りの子。1年プロダクションで過ごしてきてそう思った。ずっと好きだったよ里桜』
『ありがとう…』
夜中、布団で考えた。どんなキモチで生きてきたのかな。辛かったのかな…
けど…何も変わらない。私には。
ただ…光輝くんが父親を恨んでいるのなら
それは変えてあげたい気がする。
もちろん光輝くんの気持ちが一番大切だから無理にではないけど…恨まないで自分のことだけを見つめて生きてほしい。
ただ…それだけを望みたい。