秩父鉱山、赤岩西の転石。
スカルン母岩にピンク色のトゲトゲが特徴的な標本である。
ピンク色の真ん中に鎮座する半透明の塊は、たぶん方解石(カルサイト)だろうけど
トゲトゲの正体は単斜灰簾石(たんしゃかいれんせき)という緑簾石(エピソード)グループの一員。
その名が示す通り、単斜晶系であるが、「単」をつけず「斜灰簾石」と呼ぶ場合もある。
(その方が多いかもしれない)
で、緑簾石の結晶の格子をなす成分であるFe(鉄)が、Al(アルミニウム)に置き換わっていく連続した変化の反対側ゴールが単斜灰簾石。
微妙に変化していく成分を線で結んだ両端、あるいはその中間に名をつけて、便宜上それを一つの鉱物とみなすが、これらを一括りにして「固溶体」と呼んでいる。
つまり「緑簾石」と「単斜灰簾石」は「固溶体」ということ。
ちなみにMn(マンガン)に置き換わった「紅簾石」も固溶体であるが・・・
ここのヤツらは、結晶格子の一部がMnに置換されたというより、結晶中に微量に(つまり不純物として)Mnが混じったものらしく、そういうのは「紅簾石」とは区別して「桃簾石」と名付けられている。
どうせ肉眼でどうのこうのできるレベルではないし、なんかもう別に「きれいねー」でいいじゃん、という気もするし、でもやっぱりちゃんとしたい気もする。
んー、変なのがいるね、また。
大抵よくわかんない、説明もできない部分が、標本の中にはある。
なんだこの、取ってつけたような白いのは。
桃簾石が育った空隙に、ワンクッション置いて時間差で育った感じがするが・・・
スカルンで、この真っ白な錦糸光沢・・・あたしには「珪灰石」か「透閃石」ぐらいしか思いつかん。
それならどちらにしても、ブラックライトでオレンジ系に光るじゃろ。
やってみよう。
ドンピシャでしょ。
珪灰石か透閃石かは、そんなん区別できたら、しがないリーマンなんかやってないから知らんがな。
(苦灰岩スカルンだと透閃石が多いらしいので、あ揖斐の春日鉱山のあたりは確かに、割れば透閃石、割れば透閃石って感じだな、確かに、で秩父は石灰岩だから珪灰石かな・・・)
あ、そうそう。
単斜灰簾石と同じ組成で灰簾石というのがあって、これは洋名ゾイサイトと言ったほうが通りがいいかもしれないが、昔は緑簾石グループにいたけど、斜方晶系(直方晶系)だから追放されたらしい。
どうせ見分けなんかつかないんだから、いいじゃんという気もするし、ちゃんとしないとという気もする。
ところで「灰」は一般に「カルシウム」のことだが、特にカルシウムがこの石の種類を決めるのに決定的な役目をしているわけではない。
むしろアルミニウムやマンガンが主役だと思うのだが、なぜアルミニウムを表す「礬(ばん)」や、マンガンを表す「満」で命名しなかったのだろう。
「礬簾石」とか「満簾石」とか言ってもよさそうなものだが・・・。
まあいいや、ここからは自然が作り出す、鉱物という名の花たちを、ただただボーッと眺めてみよう。
珪灰石VS桃簾石
プロがこれを見ると、ああ単斜晶系だな、とわかるんだろうか。。。
いや、いかんいかん、ただただボーッと眺めて楽しむのだった。
多分、方解石だろうと先ほど言った塊。