コミュニケーション能力を高めたり、身体が不自由な方の思いに立ったりするための手だてというのだろうか?
「ブラインドウォーキング」というのがあって、先日それを体験した。
これは二人組になり、
一方は目をつぶって歩く。
もう一方は、声がけのみで歩く人を誘導するというものだ。
体に触れてはいけない。
この活動を通して二人はそれぞれ様々なことを感じ、学ぶ・・・というものだ。
私は中3男子A君とペアになり、学校の中を歩くことになった。
この生徒とは顔見知り程度で話をしたことはない。
活動の意味もわからないまま、いきなりブラインドウォーキングをすることになった。
ある教室を出て廊下を歩き、別の教室まで行って目印のトロフィーにさわり帰って来るというコース。
行きはA君が歩き、私が誘導。帰りは交代して歩いた。
【往路】
私は誘導するにあたってA君にできるだけ安心してもらおうと、心がけた。
「大丈夫、大丈夫」と言ってみたものの、彼はちっとも大丈夫でなく不安そうだった。
たくさんの生徒が同じようにして歩いていたので、実際危険もいっぱい。
色んな人の声やちょっとした悲鳴もあって、安心してもらうことは難しかった。
彼は校舎内を熟知しているだろうと思いつき、
今どこを歩いているとか、左に窓があるよ、廊下の真ん中を歩いているよ。
1メートル前に○○君が歩いているよ。
・・・などと声をかけた。
あとから思えば、周りには目が良くいった気がするが、A君の表情や歩く姿などはあまりよく見ていなかった気がする。
【復路】
今度は私が目をつぶって歩く。
よし、やってやろう!と心に決めて目をつぶるも、初めの数メートルは薄目を開けて歩いていた。
心の中で「よし、大丈夫そうだ。コースも見えた!」と思い、本気で目を閉じて歩く決心をした。
とたんに前方から何か押しつぶされそうな闇の固まりを感じ、足が前へ出ない。
頭がのけぞるようになった。
A君が
「右、もっと右です。あ、止まって、前に人がいます」などと誘導を始めた。
私は両手を前に突きだし少し?キャーキャー言いながら歩いた。
しばらくして目の前に何もないことがわかってやっとA君の声が聞こえ始めた。
その後どんな言葉をかけてくれたのかはよく憶えていない。
でも、少しずつ安心して歩けるようになった。
他の人の声もたくさん聞こえる中、A君の声だけを聞くようになっていった。
あと少しでゴールの教室だというとき、A君は
「足下に気をつけて!つまづかないように足を上げて下さい」と言った。
私はずっと両足を引きずるように地面から足を離さず歩いていたのに気がついた。
ゴール直前で緊張しているときに声をかけてもらって転ばずにすんだ。
前に突き出していた手はいつの間にか下がっていた。
目をつぶって闇の中にいるときに、自分だけのために言葉をかけてくれる人。
その人のことを知らないけれど、信じて歩き続けることができた。
この「ブラインドウォーキング」は
阿弥陀様のはたらきに似ているかもしれないと思った。
A君は自分の体験を通して私の気持ちや様子をよく見て声をかけた。
自分が怖かった足下をしっかり見ていてくれた。
声をかけ続けてくれていたA君
はじめはその意味に気がつかなかったけど、直面したときには助かった。
「二河白道の喩」とまで言うのはなんだが、
読んだり聞いたり想像したり・・・だけでなく、
体感したことで少し腑に落ちた?ような気がする。
なまんだぶなまんだぶ・・・