2002野球殿堂◇
<メジャーを震撼させたスティーラー>
福本豊(阪急ブレーブス)♯７外野手
左投左打 168㌢68㌔
日本プロ野球史上最高盗塁数1065を記録し常勝阪急ブレーブスの日本一を牽引したトップバッター・外野手(中堅手)
私が野球と云うスポーツの攻撃力に高い必要性を持つ[盗塁]戦略の魅力に惹きつけられたのは言うまでもなく福本豊氏の存在がプロ野球を華やかにしていたからだ。
上田利治監督を抜擢し70年代の阪急ブレーブスを三度の日本一に導いた阪急ブレーブスの球団代表・溪間秀典氏を古くから知人を通じ親しい間柄にあった事で野球に夢中な私は後楽園球場に遠征に来る阪急ブレーブスを観によく通った。当然主力選手に会わせて頂いた。当時、後楽園球場はセ・リーグは読売ジャイアンツと日拓フライヤーズ<現北海道日本ハム>がホームグランドとしていたのでパ・リーグの阪急ブレーブスを観る、いや福本豊氏の盗塁を見たさに一塁側、三塁側両方の席を行ったり来たりしては福本選手のプレーとスチールを食らいつくように観た。その盗塁術の美しさ。スタートしても上体、頭がブレない、走る時の腕の振りが素速い。
<相手投手の癖やクイックモーションを交わす分析力からの盗塁術>
スタートの速さ、リードオフの巧みさスタンスの取り方、スライディングなど憧れては自分も試合で試した。福本豊氏は理想的な一番バッターであり、出塁すると２盗、３盗塁し加藤秀司選手の犠牲フライで楽に先制点を上げた。とにかくすばしっこい。スピードに惹きつけられた。私も武器はすばしっこさだったので、お手本によく真似た。背番号７は阪急ブレーブスの中で一際輝いていた。
センターを守っていても守備範囲の広さ、打者の癖や風向きなど頭でインプットデータを引き出す事が当時の外野手の中でもずば抜けていた。
バッティングは特にコンパクトでパンチ力があり打球が速かった。タイカップ式(昔はつちのこバットと言った)の太く重く、またグリップエンドがグリップから繋がったバットは私の野球人生に欠かす事のないくらい影響を受けて高校野球部の寮にミズノさんから金属と木製、竹バット３本を無理を言って用意してもらいこの３本のバットを持って入寮した。私は小柄だったので中学から振り抜き易く短くバットを持ち、非力ながらもミート打法を軸に自分は少しでも福本氏のシャープなバッティングをお手本にしたかったのである。しかし福本モデルのバットは重いので体のバランスに合わせてバットも選んだ。
とにかく福本豊氏のベースボールスタイルはその後のトップバッターやスティーラー(盗塁を得意とする選手)に多大な影響を与えた。
近年では赤星憲広氏(元阪神)が近いスタイルだったが、残念な事に現在はいない。つまりそれだけ当時の野球選手、福本氏は物が違った訳である。あまり数字やデータは好きではない私だがこれだけは記載させてほしい。
福本豊氏は1972年に106盗塁している昭和の怪物選手である事が如何に凄い選手であったか数字を観てご理解できるだろう。
☆通算盗塁数1065/安打2543/本塁打208/115三塁打/291打率(通算成績)☆
福本豊氏のスチールテクニックは誰にも真似できない個性があった。創意工夫と努力、研究の賜物であるからだ。足の使い方もつま先はオープンで有るが股関節の左右バランスのとれたランニングは理想的なフォームをしていた。また怪我をしない確率を高めるためヘッドスライディングをしなかった。
如何に足先のベースタッチするスライディングが工夫されていたかが解る。
<軸線、頭から両脚の間を地面まで繋ぐ中心からスイング軌道に入ってもミートポイントまでまったく体にブレがない>この時代の打者は後ろ足に重心をかけた選手が多かった。福本氏は頭の位置が前脚の壁になるところにスイングのポイントを定めているためゼロポジションが深くならず後ろが小さくフォロー前は大きい理想的なスイングだ。如何にしてコンパクトにスイングするかがバッティングのコツである。
攻、走、守３拍子揃った大選手、福本豊氏の打力2000本安打は裕に超えたテクニックと小柄ながらコンパクトなスイングで208本の本塁打は驚異的としか言いようがない。
私は福本豊氏や大橋譲氏[遊撃手の名手]といった名選手を観て育った事は本当に恵まれていたと思う。
私は阪急ブレーブスにご縁が有り阪神タイガースにもしかりで有る。2011年から関西は宝塚に移住して一年になる。音楽家の仕事に万が一の事があったら昔からベースボールの盛んな地で地域の野球選手育成コーディネーターをするためいずれ何年か先に関西移住を計画していたが、昨年の東北大震災で千葉市に住めなくなった為、被災地として計画よりも早く憧れの関西に来てしまった。
私は数多くの名手を間近に観てきた経験とプレー実践。感性と分析力を生かした新たなる指導法で関西から名手を育成したい。
最後に福本豊氏は少年球児に語る『下手でも練習すれば必ず上手くなる』
福本氏らしい御言葉だ。メジャーリーガーの盗塁王:リッキー・ヘンダーソン氏に数字での記録は塗り替えられたが数字やタイトルなどを計りにかけたとしても間違いなく[世界の盗塁王]は福本豊氏でもある事を誓言して世界の盗塁王・福本豊氏をセイギョウ名手列伝で心から讃えたい。
<一流のトップバッター・盗塁王を目指す選手諸君の健闘を念じて>
SEIGYO M.#00
セイギョウ松林 拝
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