先日La mer コンサート~谷原めぐみ with Friends in とよす~を聴きに、豊洲シビックセンターホールに行ってまいりました。

以前も述べたことがありますが、ひとりでコンサートに行くのは、ひとりでプールに行くようなもので誠に味気ない...そこでなるべくHさんとご一緒できる公演に伺うべく予定を組んでおりますが、どうしてもHさんのご都合が付かないケースが出てまいります。今回はそのケースです。
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音譜~出演・スタッフ~
 谷原 めぐみ(ソプラノ)
 吉田 静(メゾソプラノ)
 南雲 彩(ピアノ)
 吉野 翠(ピアノ)
 福王寺 大有(企画制作)
 吉田 明未(舞台監督)
音譜~セットリスト~
 第一部<海と魚に寄せて>
1. 作詞・作曲者不詳の文部省唱歌“海(松原遠く消ゆるところ)”(谷原、吉田、吉野)
2. 作詞:北原 白秋、作曲:團 伊玖磨『六つの子供の歌』より“さより”(谷原、南雲)
3. 作詞:宮澤 章二、作曲:平井 康三郎“フグなんて フグなんて”(吉田、吉野)
4. 作曲:サン=サーンス『動物の謝肉祭』より“水族館”(ピアノ:南雲、吉野)
5. 作詞:山上 路夫、作曲:平尾 昌晃“瀬戸の花嫁”(谷原、吉田、南雲)
6. 作詞:石本 美由起、作曲・編曲:上原 げんと“港町十三番地”( 〃 、 〃 、 〃 、吉野)
7. 作詞:石本 美由起、作曲・編曲:上原 げんと“石狩挽歌”( 〃 、 〃 、 〃 、 〃 )
8. 編曲:伊藤 康英?“うみ~唱歌によるファンタジー”<作詞:宮原 晃一郎、作曲者不詳の文部省唱歌“われは海の子””/作詞:林 柳波、作曲:井上 武士“海(海は広いな大きいな)”( 〃 、 〃 、 南雲)
9. 作詞:林 柳波、作曲:井上 武士“海(海は広いな大きいな)”(会場全員で合唱 、 吉野)
 第二部<オペラ名場面集>
10. オッフェンバック作曲:歌劇《ホフマン物語》第4幕より二重唱“舟唄(バルカローレ)”(ジュリエッタ:谷原、ニクラウス:吉田、吉野)
11. モーツァルト作曲:歌劇《コジ・ファン:トゥッテ》第1幕より三重唱“そよ風はやさしく”(フィオルディリージ:谷原、ドラベッラ:吉田、ドン・アルフォンソ:福王寺、吉野)
12. ビゼー作曲:歌劇《カルメン》第1幕よりアリア“ハバネラ”(カルメン:吉田、吉野)
13. プッチーニ作曲:歌劇《蝶々夫人》第1幕よりアリア“さあ、もうひと息よ(登場のシーン)”(蝶々夫人:谷原、南雲、吉野)
14. 〃 :歌劇《 〃 》第2幕より二重唱“花の二重唱”(蝶々夫人:谷原、スズキ:吉田、南雲)
15. 〃 :歌劇《 〃 》第2幕よりアリア“ある晴れた日に”(蝶々夫人:谷原、南雲)
アンコール. 作詞:村雨 まさを(服部 良一)、作曲:服部 良一“買物ブギ”(谷原、吉田、南雲、吉野)

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谷原さん、南雲さん、吉野さんは2023年10月、なかのZERO大ホールのBS日本スペシャルコンサート<出演/FORESTA:谷原めぐみさん、吉田和夏さん、池田史花さん、三宅里菜さん、小笠原 優子さん、財木麗子さん、吉田明未さん、南雲 彩さん、吉野 翠さん、石川和男さん、司会:石川牧子さん>に続いて。

吉田さんは2022年5月、としま区民センター多目的ホールのコンサート~谷原めぐみ with Friends in 豊島~<出演:谷原めぐみさん、吉田 静さん、南雲 彩さん、吉野 翠さん>以来です。

谷原さんは2011年3月、大手町の三井住友銀行旧本店(現在は建て替えられ三井住友銀行東館)ロビーの“N響ソロ・コンサートマスター堀正文と仲間たち&東京オペラシンガーズ”<N響コンマス/首席/次席:堀 正文さん、大宮 臨太郎さん、佐々木 亮さん、桑田 歩さん、吉田 秀さん、東京オペラシンガーズ:谷原めぐみさん、鈴木江美さん、工藤志州さん、岩田友里さん、戸邉裕子さん、志田理早さん、渡辺 大さん、大田 翔さん、与儀 巧さん、増原英也さん、狩野賢一さん、片山将司さん>が初聴きで、今回が8回目。

吉田さんと、南雲さんの初聴きは2010年11月、四ツ谷ポプラ社ホールの“ジョイントリサイタル”<出演:杉本 恵津子さん(ソプラノ)、吉田 静さん(メゾソプラノ)、南雲 彩さん(ピアノ)>で、吉田さんは今回が24回目、南雲さんは25回目です。

吉野さんは2011年4月、きゅりあん8階大ホールの“フォレスタコンサート2011”<フォレスタ:澤田 薫さん、横山慎吾さん、榛葉樹人さん、今井俊輔さん、川村章仁さん、大野 隆さん、中安千晶さん、矢野聡子さん、白石 佐和子さん、小笠原 優子さん、吉田 静さん、ピアノ:南雲 彩さん、吉野 翠さん、司会:石川牧子さん、構成・演出:一条貴之さん、音楽監修:杉本貴之さん>が初聴きで、今回が10回目。

ここからが本題です~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「谷原めぐみ with Friends シリーズ」今回はLa mer <海>がテーマということです。会場に入って目に飛び込んできたのはステージ奥に拡がる東京湾、テーマに沿った海の情景です。

開演前に遮光カーテンが掛かってそれは閉じられましたが、観てる方も気が散らなくて、それが正解だったと思います。エイブラハム・リンカーン号が寄港してくれる筈はないですし。

この処、演奏中のメモは最小限(演奏者やアンコールの曲名などをプログラムに記すのみ)にしているのですが、レポを書くにあたって記憶違いが生じているかもしれません、その点はご容赦を。

いきなり(ステーキは出て来ません)偉そうですが、谷原さんの歌唱の特徴は大声量、高雅な音色、明瞭な口跡。そして歌う姿に慎み深い雰囲気が感じられます。これらは真似して創り出せるものではなさそうです。持って生まれた要素が大きいと思います。

吉田さんの歌唱の特徴は大声量と、艶のあるお声。どんな音域でも音色が変わりません(換声点が高い)。同じメゾでも高い音域になるとソプラノ声になっていて、ソプラノからの転向を思わせる方が結構多いです(それが良い悪いと言ってるわけではありません)。

“海(松原遠く消ゆるところ)”(谷原さん、吉田さん)...大正時代の小学校唱歌だそうですが、テレビもドローンもない時代にこんな俯瞰の曲をつくれた日本人て凄いと思います。

“さより”(谷原さん)...子供に語り掛けるように優しく歌われて。

“フグなんて フグなんて”(吉田さん)...14年振りに聴きました。吉田さんが大学の審査会で、師匠に「この曲はどうか」と勧められて歌い高い評価を受けたそうです。そら分かります、この大声量を聴いただけでも。資料の少ない珍しい曲だそうですが、さすが師匠です、吉田さんの歌唱の特徴を生かせる選曲であったに違いない。

“水族館”(ピアノ連弾:南雲さん、吉野さん)...なるほど、ヴァイオリンではこのキラキラ感は出せません。

“瀬戸の花嫁”(谷原さん、吉田さん)...私を含め瀬戸内海に行ったことがない人も、情景が浮かんでまいります。歌詞の一語一語が素晴らしく、本当に良い歌です.。o○

香川ご出身で、小豆島で一時教鞭を執ってらした谷原さんにとっては感慨もひとしおでしょう(灌漑事業でないよ←ムードをぶち壊すジョークですが、使命感から書かざるを得ません)。

“港町十三番地”(谷原さん、吉田さん)...リリースされたのは1957年とやら(私はそのとき幼稚園)。谷原さんたちにとっては、恐らく神代の時代の曲といった感覚でしょうでしょうが、こうして歌い継がれていくことに意義があります。

ところで、マドロスや波止場という言葉は、もうとっくに死語になっています。あと何十年かしたら現金が珍しいものになっているかもしれません。大相撲で受け取る懸賞金も、軍配のセンサーにタッチ。

“石狩挽歌”(谷原、吉田)...私事で恐縮ですが、高校時代夏休みは陸上の合宿を除いてずっと北海道札幌で過ごさせて貰っていて、時に長袖がいるような過ごしやすさ、ゴキブリがいないといった快適さが、私が持つ北海道のイメージでしたが、この曲でイメージが変わりました。

谷原さん、吉田さんの熱唱も素晴らしかったですが、南雲さん、吉野さんの「この想いを何処にぶつければいいの…」の強い打鍵も印象的でした。

吉野さんによる曲紹介の際、「会場に北海道からお見えの方いらっしゃいますか?」の問いかけに、客席から2組の方の手が挙がったのに驚きました目

演奏家冥利に尽きるとは、正にこのことでしょう。「谷原めぐみ with Friends シリーズ」が、如何に魅力的かを物語っているとも言えそうです。

“唱歌によるファンタジー<われは海の子>”(吉田さん)...珍しいアレンジでした。海洋男児ここにあり。

子供の頃音譜われは海の子 シラミの子音譜なんて歌っていた自分が大変恥ずかしゅうございます。

“唱歌によるファンタジー<海(海は広いな大きいな)>”(谷原さん)...こちらはオペラチックに歌い上げて。とても短い曲ですがスケール感があり、深呼吸をしてみたくなります

“海(海は広いな大きいな)”(会場全員で合唱)...

太古の海で発生した原生生物の心臓は、波動によって拍動し始めた…と何かで読みました。私たちが寄せては返す波を飽きずに見てるのは、DNA(DDTでないよ)に組み込まれた遥か遠い太古の記憶が呼び起こされるから...というのが愚見ですが、最近の研究でこの説には科学的根拠がないことが分かってきました、ハイ。

“舟唄”(谷原さん、吉田さん)...考えてみたら不思議です、12の音の組み合させでこの様な浮遊感を生み出せるなんて.。o○鳥が恋のお相手を惹きつける鳴き声を、どの様にして見出したかも...鳥は音大は出てないと思うのですが。

“そよ風はやさしく”(谷原さん、吉田さん、南雲さん)...「コジ...」で最も好きな三重唱です。同感の方も多いと存じますが、上手に歌ってくれてこそです。特に要となるバリトンは、どの音域も強く声を出せることが求められますが、福王寺さんバッチリでした合格

“ハバネラ”(吉田さん)...聴くたび円熟味を増し、パフォーマンスに余裕さえ感じられる吉田さんの「ハバネラ」。

何せ、20代で東京文化会館大ホールの東京・春・音楽祭2010のオペラ《パルジファル》<指揮:ウルフ・シルマー、管弦楽:NHK交響楽団、合唱:東京オペラシンガーズ>において、花の乙女Ⅵ役(メインキャストは世界中から集められた錚々たるワーグナー歌手)に抜擢され春音オペラデビューを果たした大変な方なんですから。気安くしぃちゃんなんて呼んではいけませんよねッ、しぃちゃん。

カルメンの薔薇は苫小牧からいらしていた男性に贈られましたクラッカー

“さあ、もうひと息よ(登場のシーン)”(谷原さん)...最後に過酷な定めが待ち受けていると思うと、「こんなに喜んでいたのに」と、複雑な想いにかられます。欲を言えば、最後ハイDesに上げて欲しかった(二期会「椿姫」でハイEsを披露された谷原さんですから...ハイDes、ハイEsって何?と私に聞かないように)。

“花の二重唱”(谷原さん、吉田さん)...オペラのクライマックスと言えるシーンを熱演、熱唱されました。舞台にばらまいた花びらを、何方かちゃんとがお片付けしたか...気になって夜寝られませんでした(吉田明未さんのお仕事でしょうか)。

“ある晴れた日に”(谷原さん)...「あの方は必ず帰ってくる」と信じている蝶々さんの一途さが健気です。傍らでスズキ役の吉田さんが、ブランド物のハンケチで目を拭っておられました。

“買物ブギ”(谷原さん、吉田さん)...最後はこの曲で賑やかにお開きとなりました。

今回改めて感じたのは、周りを海で囲まれている日本には(日本で革命が起こらないのはその為という説あり←その理由:どこにも逃げ場がない)、いい曲がいっぱいあるということ。こうした公演は、第1回はあって2回目はない...というのが殆どで、4回も続いているのは凄いということ(いい音楽を届けたいという気持ちと、いい演奏を聴きたいという思いが一致)。来年のvol.5の日程も決まっているとの由。

カテコの様子クラッカー左から吉野さん、南雲さん、谷原さん、吉田さん。



今回、見送りが実施されました。谷原さん、公演中も楽しそうでしたが、終演後はことのほか嬉しそうでした。大柄で演奏もビッグスケールのソプラノはあまりいません。とてもお綺麗でした。

女性の容姿とトイレットペーパーの紙質については非常にうるさい私が太鼓判を押すのですから、お世辞ではありません合格

以前、あるソプラノに「肌が綺麗ですね」と申し上げたことがあり、それをHさんにお話したら「言われて嬉しくないことはないけど、言わない方が良い」...案の定、次回そのソプラノさん、袖なしTシャツのような、がっちりガードのドレスでお出ましでした苦笑

コロナの影響もあって終演後にお話ができたのは、吉田さんは日本橋三越のミニコンサート(オルガンは山田佳奈さん)以来6年振り。吉野さんはデザインKホール六本木の南雲 彩さんとのピアノデュオコンサート以来、実に11年振りでした。

吉田さんは私の細やかな女子力を喜んで下さって、吉野さんは顔を覚えて下さっていて感激でした。南雲さんと3人は、結構長い付き合いですが昔と変わってません(自信を持っていいです)しあわせお顔が艶々していて、お三方に化粧水は何をお使いですか?と聞いてみたくなります。

南雲さんにファツィオリの感想を聞き忘れました(私には良く鳴っているように聞こえました)。思えば我が人生「あの時あれを言っておくんだった…」の連続。

南雲さん(読書がご趣味)が最近感動された本について、少しお話(私も半世紀以上前に読んで感動し、世代を超えて感動体験)できたのが嬉しかったです。

開場前、11階の区民広場(ホールは5階)からパシャリカメラ晴海大橋、豊洲大橋の向こうにレインボーブリッジが薄っすらと写っています(肉眼でははっきり見えてましたが)。その向こうは高輪ゲートウェイから品川インターシティにかけての高層ビル群...



会場には古くからの音友が何人かお見えで、昔話ができ楽しゅうございました。一人の方は、お互い別々にフォレスアの追っかけをしていて、琵琶湖公演で初めてお会いした方(2011年10月)。もう一人の方は、2008年に千駄ヶ谷にあった津田ホールのフォレスタ自主コンサートに行ってらしたとのこと。これは驚きました。

女性の音友で、大垣のフォレスタ公演(2012年4月)にご一緒した方もお見えでした(他にHさん、病院長夫人が同行)。新幹線からの乗り継ぎで、名古屋のホームに停まっていた案内板に表示されていない大垣往き列車に、その方のひと言「乗っちゃいましょ」で飛び乗りました。

最初のうちは皆さん調子良く「ねえ、これ静岡の方に向かってない?」、「本当に快速なの?さっき鈍行に抜かされたわよ」、しかし後でそれが大垣舟遊びツアーの貸切り列車だったということが分かり、お土産まで貰っちゃって、バスも用意されていて、大垣に着いたら船着き場に連れていかれそうな雰囲気。一同「どうしよう?…」叫びそこでその方がひと言「こういうことは男の人が言うべきよ」ガビーン「そうよ」、「そうよ」。「そうかひらめき電球私が女子会で飼われていたのは、こういうことの為だったんだ(笑)」

その女性が、八丁(南雲 彩さんの最初の勤務地)を挟んだ私の隣町で生まれ育ったということを、フォレスタコンサート終演後の女子会での何気ない会話で知りましたwowこれもフォレスタがもたらしてくれたご縁です。以来二人で決まって話題になるのは「荻窪マーケットのモヤシのさつま揚げ美味しかったねえ」.。o○

会場で悲しい知らせを聞きました。フォレスタの追っかけ仲間だった音友が、昨年7月に亡くなっていたということを...一昨々年の12月、さいたま市文化センター小ホールでの南雲さんと谷原さんのデュオリサイタルにいらしていて、少しお話をして、それが最後となってしまいました。




偶然...広大なる宇宙の、異なる時間系がたまたま接する所で、私たちは出逢いました。深遠な宇宙時間からすれば、それは一閃の光にもなり得ないささやかな出来事です。

でもそこで語ったり笑ったり、取るに足らないかも知れないその一つ一つの出逢いが、私たちにとって実は全宇宙的な価値のあるものだということに気がつきます。

何れまたそれぞれの時間系が、異なる軌道を描く時がやってきます。もうそれらが出逢うことはないかもしれません。でも、楽しかった思い出は残ります、そして、、、一瞬が永遠だったということに気がつくのです。

(玉露)



次回のブログ更新はメモ近々(歌劇「ロメオとジュリエット」垣岡敦子 AMORE 愛の歌 VOL.9<出演:垣岡敦子さん(ソプラノ)、宮里直樹さん(テノール)、 斉木健詞さん(バス)、村上尊志さん( 音楽監督・ピアノ)> 5/19 @銀座王子ホール)のレポを予定しております。


マタネ