昨日、表題のオペラを観てまいりました。
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  G.プッチーニ《ラ・ボエーム》全4幕より抜粋
 指揮:仲田 淳也
 演技指導:喜田 健司
 ピアノ:河野 紘子
 ヴァイオリン:工藤 ゆかり

ミミ(ロドルフォの恋人になる貧しいお針子)木田 悠子(ソプラノ)
ロドルフォ(ミミと愛の暮らしを始める詩人)堀越 俊成(テノール)
ムゼッタ(マルチェッロの元恋人、歌手)芝野 遥香(ソプラノ)
マルチェッロ(ロドルフォの親友、画家)高橋 宏典(バリトン)
ショナール( 〃 、音楽家) 山口 義生(バリトン)
コッリーネ( 〃 、哲学者) 杉尾 真吾(バス)
ベノア(ロドルフォ達が住むアパートの家主)泉 良平(バリトン)
アルチンドロ(ムゼッタのパトロン) 〃 ( 〃 )
合唱:ソプラノ:加藤 美帆、中森 美紀、福田 亜香音、山口 遥輝
アルト:安藤 千尋、長田 真澄、萩原 紫以佳、渡部 史子
テノール:井出 司、松田 健
バス:飯塚 学、平尾 啓

全4幕から抜粋/イタリア語上演・日本語字幕付き/上演時間:約2時間(途中15分の休憩1回を含む)
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《ラ・ボエーム》は2017年6月、日生劇場のNISSAY OPERA《ラ・ボエーム》<指揮:園田 隆一郎さん、演出:伊香修吾さん、キャスト:砂川涼子さん/北原瑠美さん、宮里直樹さん/樋口達哉さん、大山大輔さん/桝 貴志さん、池内 響さん/近藤 圭さん、デニス・ビシュニャさん/三戸大久さん、柴田 紗貴子さん/髙橋絵理さん、岸浪愛学さん/青栁貴夫さん、相沢 創さん/小田桐 貴樹さん、清水良一さん/押見春喜さん、合唱:C.ヴィレッジシンガーズ、管弦楽:新日本フィルハーモニー交響楽団、他>以来。

仲田さん、工藤さん、飯塚さん、平尾さん、大和田さくらホールは本年5月、藤原歌劇団・日本オペラ協会 オペラ・コンチェルタンテ《ラ・トラヴィアータ》指揮、ヴァイオリン、ドビニー役、合唱<指揮:仲田淳也さん、舞台表現アドヴァイザー:岩田達宗さん、ピアノ:松本康子さん、ヴァイオリン:工藤ゆかりさん、キャスト:佐田山 千恵さん、堀越俊成さん、高橋宏典さん、舛田慶子さん、濱田 翔さん、別府真也さん、飯塚 学さん、大澤恒夫さん、中原沙織さん、合唱:新井玲子さん、飯塚菜穂さん、江田 真姫子さん、高橋 亜矢子さん、長澤 みゆきさん、姫本紀子さん、細野 千賀子さん、劉 順香さん、米田七海さん、岡本 麻里菜さん、小原明実さん、勝又康介さん、平尾 啓さん、髙橋 雄一郎さん、他>に続いて。

堀越さんは先々月、アークヒルズ・カラヤン広場のミニコンサート<出演:堀越俊成さん(テノール)、池内 響さん(バリトン)、水野彰子さん(ピアノ)>に続いて。

高橋さん、杉尾さんは本年7月、東京文化会館小ホールの第58回日伊声楽コンソルソ本選<出場者:今井実希さん、田中裕太さん、本多信明さん、一條翠葉さん、澤原行正さん、喜納 響さん、高橋宏典さん、杉尾真吾さん、伊藤尚人さん、徐 大愚さん>に続いて。

山口さんは2015年10月、国立音楽大学大学院オペラ公演《コジ・ファン・トゥッテ》グリエルモ役<指揮:山下一史さん、演出:中村敬一さん、キャスト:高橋広奈さん、中川香里さん、渡邉公威さん(助演)、山口義生さん、大川 博さん(助演)、竹内伶奈さん、合唱:国立音楽大学合唱団、管弦楽:国立音楽大学オーケストラ、他>以来。終演後夕暮れの広場の光景が懐かしゅうございます.。o○

泉さんは2015年8月、高崎・群馬音楽センターの創作ミュージカル『おにころ』題名役<演出・作曲・脚本・指 揮:三澤洋史さん、出演:泉 良平さん、前川依子さん、田中 誠さん、内田もと海さん、大森いちえいさん、初谷敬史さん、余川倫子さん、新町歌劇団、高崎おにころ合唱団、管弦楽:群馬交響楽団、他>以来。

長田さんは2019年5月、東大和市民会館ハミングホールのSHINZO KINEN OPERA《カルメン》フラスキータ役<指揮:酒井俊嘉さん、演出:太田 麻衣子さん、キャスト:鳥木弥生さん、秋山和哉さん、大山大輔さん、中江早希さん、上間 正之輔さん、島田恭輔さん、髙橋 駿さん、宮西一弘さん、長田真澄さん、山下裕賀さん、合唱:Giovani Musici、管弦楽:TS Orchestra/コンサートマスター:伊藤 太郎さん、他>以来。

河野さんは2021年2月、栃木県総合文化センター大ホールの“林 真理子の劇場で愉しむ『オペラ』なるもの”<出演:林 真理子さん(作家)、小林沙羅さん(ソプラノ)、西村 悟さん(テノール)、山下裕賀さん(メゾソプラノ)、ヴィタリ・ユシュマノフさん(バリトン)、浦久俊彦さん(ナビゲーター)河野紘子さん(ピアノ)>以来。

ここからが本題です~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

《ラ・ボエーム》というオペラは、構成が素晴らしいです。若者の出会いと別れを描く一方で、そこにもう一組のカップルの愛憎劇と仲間との友情を絡ませ、ストレートな喜怒哀楽表現があるかと思えば、心の琴線に触れるような心理描写も巧みに織り込まれています。

今回のオペラは演奏会形式ですが、前回なかった字幕が付いて、喜田さんによる演技指導とあるので演技付き、お正月にはお餅つき、伴奏にピアノの他ヴァイオリン、合唱も入って本格的です。

序曲はなし(端折ったわけでなく、プッチーニのオペラは序曲なし、あっても申し訳程度)、ステージにマルチェッロとロドルフォが出てきて、屋根裏の下宿で冬の寒さに震えている様子からオペラが始まりました。

木田さん(ミミ役)は、艶のある円やかな声です。定番の♪<私の名はミミ>も良かったですが、第3幕でロドルフォと別れることを決意した♪<さようなら>の切ない歌唱が印象的でした。

「私の名はミミ」は、歌い終わったあと客席から拍手を入れるタイミングが取りにくいのですが、仲田さんが間を取ってくれました。

仲田さんは、おじさんが入ってきてません、永遠のマダムキラーですもじ

話を戻します。堀越さん(ロドルフォ役)は、こちらも定番中の定番♪<冷たい手を>を甘く歌い上げました。質量系のテノールですがハイC(ハイCって何?と私に聞かないように!)を、声量も十分に余裕でクリアしたのには驚きました。

第1幕の幕切れの二重唱♪<おお、愛らしい乙女よ>の最後Amore!Amore ! も、ミミ木田さんに同調されてました。「冷たい手を」ほど注目されず影歌なのでハイCを回避するテノールも見受けられますが、堀越さんは聴くたび凄くなってきています。

またこの部分、譜面上は歌唱も伴奏も弱奏とのことですが、歌唱は思いっ切り張るのが慣例になっているようです。今回伴奏はピアノとヴァイオリンでしたが、こちらは記譜通り消え入るような弱奏で余韻を生みました。

以上の定番アリア2曲は自己紹介といった感じですが、気のある人に対して自分のことを知って貰おうと一気にまくしたてるのは“恋愛あるある”です。

あと「彼(ロドルフォ)が最近冷たいの…」と仲間(マルチェッロ)に愚痴ったりするのも(第3幕)“あるある”です。

芝野さん(ムゼッタ役)は高音域が特に綺麗に響いてました。元彼マルチェッロの関心を引きたい一心で歌う♪<ムゼッタのワルツ>を歌い終えた時点では挑発的で、鼻持ちならない女性のキャラですが...

第4幕になると、打って変わって例えようのないほどの優しさが発揮されます。控えめで可愛い一方の(一部にしたたかキャラ説もあり)ミミより、演唱し甲斐のあるムゼッタを演りたがるソプラノ歌手が意外に多いというのもわかる気がします。

ローカルネタで申し訳ないですが、芝野さんはNHKテレビ総合「首都圏ネットワーク」(月~金曜午後6:00~)上原光紀アナの雰囲気です。

高橋さん(マルチェッロ役)は、深みのある声が素敵で、何だかんだ言いながら姉御肌のムゼッタと似合いのカップルぶりでした。仲間のリーダー的な存在ですが(それも人格者然したものでなく人間臭さが感じられる)、頼りにされていたミミの最期に殆ど何もしてやれない悔しさが演技に滲んでました。全音域で音色が変わらない点、直ぐに高橋さんの声と分かる個性は大きな財産です。

4人のなかにあって一番世渡り上手で、ムードメーカーでもある。ミミが事切れたのを最初に気付いたのはショナールで、そこで騒ぎ立てたりしない落ち着いた面もある。山口さん(ショナール役)は今回が藤原デビューとのことですが、それらを巧みに演じ分けました。

杉尾さん(コッリーネ役)は、インテリの雰囲気がよく出てました。でも冷たい人間ではありません。ミミを救うため慣れ親しんだ外套を手放す決意をし、温かみのあるバスボイスで歌う♪<我が古き外套よ>は、青春の終わりを告げているようでした。説得力ある歌い振りは、イケメンだけが売りでないことを物語っています。

泉さん(ベノア役/アルチンドロ役)は、若者たちに丸め込まれたりする役回りですが、それはそれ、声量も素晴らしく達演が光りました(オペラが何処にスポットを当てているか心得ておいでで)。若者が年配者を手玉にとる処は“逆上から目線”と言えそうです。

仲田さんは甘美な部分と、激しい部分のメリハリをつけた指揮ぶりで、早くも遅くもない歌い回しも良かったと思います。

伴奏はピアノ(河野さん)にヴァイオリン(工藤さん)を加えることによって音が広がり(プッチーニの音楽の特徴)、より哀歓が増しました。

合唱には、他所でよくお名前を拝見する方も乗ってらして充実のパフォーマンスでした。合唱の場合、横隔膜の上下に合わせ眉毛も一緒に動かすのが基本のようです←是非スルーしてください

真面目な話、行く行くは今回のような若い方たちが、他所にはない独自の感性で日本のオペラが進むべき新しい途を探って行って欲しいと願っています。


帰り来ぬ、あの日々...

   あの盛りの時 燦然たる煌めきは
   もはや永遠に見ることは出来ない

   あの草原の輝き 花園の饗宴を
   呼び戻す術はない

   だが嘆くまい 不滅なるもの残れると知れば
    
   ~ウィリアム・ワーズワース『不滅なるもの』~拙訳



カテコの写真、雰囲気だけでも。



ソリスト陣。向かって左から高橋さん(マルチェッロ)、柴野さん(ムゼッタ)、堀越さん(ロドルフォ)、木田さん(ミミ)、山口さん(ショナール)、杉尾さん(コッリーネ)、泉さん(ベノア/アルチンドロ)。演奏会形式でしたが、のっぺらぼう形式ではありませんでした、念のため(のっぺらぼうに写っているのはスマホの性能が劣っているせいです)。

席を立って出口に向かう際、感に堪えずrenomaのハンカチを目に当てているご婦人の姿が見られました。

会場を出て渋谷の駅に着いたのが9時前、コロナのリスクもあるので何処にも寄らずHさんと別れました。Hさん「足が悪いので、さくらホールに来るのはこれが最後かも」と。


帰宅してから遅い晩ご飯でした。スーパーで売れ残っていた餃子とサバ、サツマイモをチーンしました。ご飯が残ってないので(ついつい生活が出てしまいます)これで一食。これでも多いくらいです。もともと小食、慎み深いご性格です、ハイ。




今朝方、コロナワクチン5回目の接種をしてまいりました。今回の注射が一番痛く感じました。その後体調変わりなしです。

次回のワクチン接種、じゃないブログ更新はメモ大晦日に、今年一年を重めに振り返る予定です。


マタネ