昨日、表題のコンサート<出演:宮里直樹さん(テノール)、種谷典子さん(ソプラノ)、ピアノ:水野彰子さん(ピアノ)>を聴いて参りました。

Hさんもご一緒する予定でしたが、今回も用心のため回避されました(慎み深いご性格であらせられます)。
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 音譜~出演~
 宮里 直樹(テノール)
 種谷 典子(ソプラノ)
 水野 彰子(ピアノ)
 音譜~プログラム~
1. “愛の妙薬よ、全て僕のものだ!~ラララ!”G.ドニゼッティ《愛の妙薬》第1幕より(ネモリーノ:宮里、アディーナ:種谷)
2. “人知れぬ涙” 〃 《 〃 》第2幕より(ネモリーノ:宮里)
3. “あの眼差しに騎士は” 〃 《ドン・パスクワーレ》第1幕より(ノリーナ:種谷)
4. “わが愛は永遠に消えて”W.A.モーツァルト《魔笛》第2幕より(パミーナ:種谷)
5. “なんと美しい絵姿” 〃 《 〃 》第1幕より(タミーノ:宮里)
 ~休憩~
6. “貴族や王子様じゃない方がいいわ?”G.ヴェルディ《リゴレット》第1幕より(マントヴァ公爵:宮里、ジルダ:種谷)
7 “女心の歌” 〃 《 〃 》第3幕より(マントヴァ公爵:宮里)
8 “私が女王様のように歩くと”J.マスネ《マノン》第3幕より(マノン:種谷)
9. “やっと一人になった~ああ!消え去れ、優しい面影よ” 〃 《 〃 》 〃 (デ・グリュー:宮里)
10. “あなたが握る手は、昔のあたしの手じゃないの?” 〃 《 〃 》 〃 (デ・グリュー:宮里、マノン:種谷)
アンコール曲. “僕のラウレッタ”G.プッチーニ《ジャンニ・スキッキ》より(リヌッチョ:宮里、ラウレッタ:種谷)

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宮里さんは2019年9月、杉並公会堂大ホールの杉並リリカ公演OPERAMANIA4<ジュゼッペ・ディ・ステーファノに捧ぐ>以来。

2012年8月、文化会館大ホールで行われた第10回東京音コン声楽部門本選<歴史は浅いですが日本音コンに匹敵するステイタス。出場者:寺田功治さん、宮里直樹さん、嘉目真木子さん、藤木大地さん、指揮:梅田俊明さん、管弦楽:東京交響楽団>で初めて宮里さんの演奏を聴いて、ホント驚きました!

前々から数年にひとりの逸材(当時彼はまだ学生、院2)という評判でしたが(本選を担当するオケマンの間で「今回のテノールは凄い」という噂が立っていたとも…)、実際に聴いてみて、数年どころか十年にひとり出るかどうか…といった強烈な印象でした。以来、可能なかぎり追っかけをし今回で22回目。

種谷さんは2018年8月、文化会館大ホールの第16回東京音コン声楽部門本選<出場者:森野美咲さん、宮地江奈さん、小堀勇介さん、ザリナ・アルティエンバエヴァさん、種谷典子さん、指揮:現田茂夫さん、管弦楽:東京交響楽団>以来。

種谷さんの初聴きは2013年7月、新国立劇場小劇場で開催されたオペラ研修所試演会《魔笛》パパゲーナ役で、美声と美形振りが印象的でした。その後も試演会や演奏会などにも時々お邪魔しており、今回で9回目。

水野さんは2019年5月、紀尾井ホールの宮里直樹さん(テノール)、今井俊輔さん(バリトン)のジョインコンサート(ピアノ:水野彰子さん)以来。

水野さんには宮里さんの追っかけをしていて出会いました。2014年4月アート・カフェ・フレンズでの演奏会<塚本江里子さんSop、平山莉奈さんMs、宮里直樹さんTen、池内 響さんBr、水野彰子さんPf>が最初で(室内楽ピアニスト、声楽伴奏・合唱伴奏など、アンサンブルピアニストとして学生時代から実績あり)、今回で12回目、うち半分が宮里さん絡みですが、宮里さん以外の公演にも結構伺っています。

ここからが本題です~~~~~~~~~~~~~~~~~

“愛の妙薬よ、全て僕のものだ!~ラララ!”(宮里さん、種谷さん)...宮里さんのネモリーノは、オペラや演奏会で数え切れないほど聴いていて、聴くたび演唱に習熟度が増してきてるのを感じます。種谷さんもよく声が通ってました。

“人知れぬ涙”(宮里さん)...弱音の使い方に(これが最も難しいとされてます)、益々磨きがかかる宮里さん。

“あの目に騎士は”(種谷さん)...種谷さんは2015年7月、新国立劇場オペラ研修所試演会《ドン・パスクワーレ》でノリーナを演じ(聴きに行きました)、その後もコンクールでの勝負曲となっているようです。透明感のあるお声が素敵です。

“わが愛は永遠に消えて”(種谷さん)...哀しみのアリア。細い絹糸を紡ぐような演奏でした。

“なんと美しい絵姿”(宮里さん)...課題とされていた低音域もかなり響いていることが分かります。

“貴族や王子様じゃない方がいいわ”(宮里さん、種谷さん)...マントヴァ公爵(宮里さん)の救いようのないドン・ファン振り。ジルダ(種谷さん)の純な気持ちが愛おしい。

“女心の歌”(宮里さん)...伸びやかで輝くような歌唱、日本のテノールのなかでナンバーワンでしょう。他の追随を許しません。数年後迫る可能性のある若手は工藤和真さん、次に澤﨑一了さん辺りか。

“私が女王様のように歩くと”(種谷さん)...この日のメインディッシュ「マノン」言うまでもなく美形でないと歌えない曲。後半はリズミカルで耳に心地好いです。

“やっと一人になった~ああ!消え去れ、優しい面影よ”(宮里さん)...デ・グリュー(宮里さん)が、マノン(種谷さん)への未練を断ち切ろうと、思いを振り絞るようにして歌います。

“あなたが握る手は、昔のあたしの手じゃないの?”(宮里さん、種谷さん)...
「デ・グリュー、どうか許してください、私は罪深い女でした」
「やめてくんちょぱッ」
「愛し合った日々を、どうか思い出して」
「だから、やめてくんちょぱッ」
「それなら私は死にます。あなたを見つめたこの瞳、あなたを呼んだこの声、どうか思い出して!」
「ああ、神よ...マノン、僕はもう自分を偽れない。マノン愛している!」

気合が入ったお二人の迫真の演唱ぶり、この「どうかこの手を思い出して」は、死にかけているマノンを元気付けようと、ラストシーンではデ・グリューによって歌われる曲で、聴いていてそのシーンが頭に浮かんで参りました。

アンコール曲“僕のラウレッタ”(宮里さん、種谷さん)...最後は愛に酔いしれる甘~い二重唱でお開きとなりました。


左から宮里さん、水野さん、種谷さん。

~後記:公演の価値は器や料金では決まらない~

駅の改札を出て、ミューザ川崎に続くペディデッキを歩きながら、「ミューザはいつ以来だろう」と思い、スマホでチェックしてみたら(歩きスマホはいけないので小走りしながら)、2014年9月の<大山大輔さん(バリトン)、山田 華さん(ソプラノ)、山田 麗さん(ソプラノ)、宇根 美沙惠さん(ピアノ)>のコンサート以来でした。

向かう先はシンフォニーホール2階ホワイエ。この日シンフォニーホール(1997名収容)の方で、同じ出演者によってワンコインのランチタイムコンサートが開催されていたことは承知してました。

私が聴くのは夜の部で、チケット代は2,500円。演目は昼の2倍ということですが、演奏場所はホワイエ、ピアノはスタインウェイのフルコンではなく電子ピアノ。事情は色々おありでしょうが、「それはないんじゃない」というのが事前の正直な心境でした。

しかし、公演を聴き終えたときの印象は違ってました。条件が悪くても素晴らしいものは素晴らしいと...即ち器は関係ないということです。この日ホワイエにいらしてたのは3~40名くらいでしたが、皆さんそう思われたことでしょう。

抜群の力量を惜しげなく発揮された宮里さん、線の細さが消え自信に満ちたパフォーマンスを披露された種谷さん、強弱がつけにくい電子ピアノで奮闘されていた水野さんの姿にもこころ打たれました。

他方、ランチタイムコンサートについても、親しくさせていただいてるSheva氏のこのレポをご覧になれば、とてもワンコインで聴けるようなものでないことがお分かりになると思います。


3月に予定していた大和市やまと芸術文化センター サブホールの大隅智佳子さんのソプラノリサイタル<出演:大隅智佳子さん、ピアノ:末松茂敏さん>が中止となり、次回のブログ更新はメモちょっと未定です。


マタネ