先おとつい、作家の林 真理子さんと人気声楽家らによるコンサート仕立てのトーク&オペラ<出演:林 真理子さん、小林沙羅さん(ソプラノ)、西村 悟さん(テノール)、山下裕賀さん(メゾソプラノ)、ヴィタリ・ユシュマノフさん(バリトン)、浦久 俊彦さん(ナビゲーター)>を聴いて参りました。

~とちぎが誇る全国音楽コンクール「コンセール・マロニエ21」入賞者と共に~というサブタイトルが付いています。

昨年5月17日に開催される予定だった公演が延び、この日の開催となりました。

先月に予定をしていた足利オペラ・リリカ《ドン・ジョヴァンニ》が非常事態宣言により会場が使えなくなったため中止になり(3月のリサイタルも中止が決定)、こちらの公演が今年の初レポとなります。
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 音譜~出演~
 林 真理子(作家)
 小林 沙羅(ソプラノ)
 西村 悟(テノール)
 山下 裕賀(メゾソプラノ)
 ヴィタリ・ユシュマノフ(バリトン)
 河野 紘子(ピアノ)
 浦久 俊彦(ナビゲーター)
 音譜~プログラム~
 第1部 トークステージ
 <林真理子さんが語る~本とオペラのある人生>
 第2部 コンサートステージ
 <林真理子さんがセレクトする~オペラの名曲たち>
1. “ハバネラ”ビゼー《カルメン》第1幕より(カルメン:山下)
2. “祖国の敵”ジョルダーノ《アンドレア・シェニエ》第3幕より(ジェラール:ヴィタリ)
3. “冷たき手を”プッチーニ《ラ・ボエーム》第1幕より(ロドルフォ:西村)
4. “私の名はミミ”〃 《 〃 》 〃 (ミミ:小林)
5. “愛らしい乙女よ” 〃 《 〃 》 〃 (ミミ:小林、ロドルフォ:西村)
6. “美しい恋の乙女よ”ヴェルディ《リゴレット》第3幕より(マントヴァ公爵:西村、マッダレーナ:山下、ジルダ:小林、リゴレット:ヴィタリ)
 ~休憩~
 第3部 クロストーク・ステージ
 <オペラに生きる人たちとの対話>
 第4部 プレゼント・ステージ
 <「コンセール・マロニエ21」入賞者たちが作家に送るプレゼント曲>
7. “それじゃ私なのね?”ロッシーニ《セヴィリアの理髪師》第1幕より(ロジーナ:山下、フィガロ:ヴィタリ)
8. “さよなら故郷の家よ”カタラーニ《ラ・ワリー》第1幕より(ワリー:小林)
9. “誰も寝てはならぬ”プッチーニ《トゥーランドット》第3幕より(カラフ:西村)
アンコール1. “乾杯の歌”ヴェルディ《椿姫》第1幕より(小林、山下、西村、ヴィタリ)
アンコール2. “シャンパンの歌”ヨハン・シュトラウスⅡ世《こうもり》第3幕より“”(小林、山下、西村、ヴィタリ)

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小林さんは2012年12月、イイノホールで行われた留学審査会以来。

西村さんは2019年12月、山形テルサの「第九」演奏会<指揮:飯森範親さん、管弦楽:山形交響楽団、独唱:竹多倫子さん、在原 泉さん、西村 悟さん、大西宇宙さん、合唱:山響アマデウスコア>以来。

西村さんの初聴きは...忘れもしない2012年の1月8日、正月気分も抜けきれないなか開催された東京オペラシンガーズ・新春コンサート。千葉の郊外にぽつんと佇む会館で道往く人も殆どおらず、人知れず開催された感じ(オペシンの精鋭34名に対し、客席は精々その倍程度の人数)のコンサートでした。そこで聴いた西村さんのソロは衝撃的でした!その前の年の暮れにNHKの日本音コンのドキュメントを見て凄いと思ってましたが、実際に生で聴いて驚き、これからこの人の追っかけをしようと決めました。西村さんを聴くのは今回で18回目です。

山下さんは2019年5月、東大和市民会館ハミングホールのSHINZO KINEN OPERA《カルメン》メルセデス役<指揮:酒井俊嘉さん、演出:太田麻衣子さん、キャスト:鳥木弥生さん、秋山和哉さん、大山大輔さん、中江早希さん、上間正之輔さん、島田恭輔さん、髙橋駿さん、宮西一弘さん、長田真澄さん、山下裕賀さん 他>以来。

5年前、2016年の「コンセール・マロニエ21」で、最強と思われていたヴィタリさんを差し置き1位を獲得されたメゾの存在(それが山下さん)を知ったのが、聴くきっかけです。実際に聴いたのはその1か月後の新宿のミニコンサートで、そこで山下さんにすっかりはまり、これまで8回聴いています。

ヴィタリさんは2019年8月、ウェスタ川越大ホールの「ららら♪クラシックコンサート」<司会:高橋克典さん、金子奈緒さん、出演:森 麻季さん(ソプラノ)、ヴィタリ・ユシュマノフさん(バリトン)、宮本笑里さん(ヴァイオリン)、新倉 瞳さん(チェロ)>以来。

2016年の「コンセール・マロニエ21」における山下さんの情報を知る3か月前、日伊にヴィタリさんが颯爽と登場してきました。それがヴィタリさんの初聴きです。歌唱は群を抜いてました。が、外国からやってきて私が応援していたバリトン(その4年後に音コンを制覇)とソプラノを2位、3位へと追いやる、私にとって実に憎い存在でした、その時は...

しかし、ヴィタリさんが日本に根をおろし真摯に音楽活動されていることを知り、このバリトンを放って置く手はないと考えを改め(誤解してたのを反省)、追っかけを決意し今回が10回目です。

河野さんは2019年6月、上尾コミュニティセンター ホールの「ふれあいコンサート」<出演:工藤和真さん(テノール)、ヴィタリ・ユシュマノフさん(バリトン)、河野紘子さん(ピアノ)>以来。

ここからが本題です~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

第1部では林さんが登壇され、ナビゲーターの浦久さんを相手に仕事のこと、歌との関わり、宇都宮の印象などオペラから餃子の話にいたるまでユーモアを交え楽しく語られました。林さん、如何にも高そうなお召し物。

林さんは(弟さんは声楽家だそう)、今でも毎月のようにオペラに行かれているそうで、ドラマチックなオペラを観ていると「私はなんて平凡でつまらない人生を送ってきたのだろうと思う…」とのお話に、浦久さんが「とても平凡とは思えませんが」と突っ込まれてました。

“ハバネラ”(山下さん)...立体感のある歌唱で声量も十分。素人の私が言うのも何ですが、若手のメゾでは山下さんと藤井麻美さんの実力が抜けています。

“祖国の敵”(ヴィタリさん)...中低音だけでなく全音域にわたってお声を見事に響かせます、確か元々はテノールだったとか…長身で小顔ですが頭蓋骨の奥行きが東洋人とは異なります(骨格論で片付けたくないですが…)。

河野さんは、ヴィタリさんと工藤和真さん(テノール)とでプリヴェット・トリオというユニットを組んで活動されているので、息はぴったりです。

“冷たき手を”(西村さん)...このところ歌曲や第九を聴く機会が多かった西村さんの、久々に聴いた甘い歌い振り。高い「ド」の音も出てました。

“私の名はミミ”(小林さん)...演奏にクセがなく、お声が素直に出てくる感じ。ミミのお手本のような歌い振りでした。休憩時にHさんが「小林さん可愛い」を連発。私は『風と共に去りぬ』のスカーレット・オハラの印象。

“愛らしい乙女よ”(小林さん、西村さん)...小林さんの初々しさと、西村さんの歌も良かったですが、お二人の歌ってない時の表現、表情も良かったです。

“美しい恋の乙女よ”(西村さん、小林さん、山下さん、ヴィタリさん)...メジャーなオペラでも、これだけのメンツが揃うことは滅多にありません。

ノー天気なマントヴァ公爵(西村さん)、まんざらでもなさそうなマッダレーナ(山下さん)、胸が張り裂ける想いのジルダ(小林さん)、復讐を誓うリゴレット(ヴィタリさん)、それぞれの見事な演唱振りに、この1曲だけでも宇都宮まで来た甲斐があったと思いました。

第3部の林さんを交えてのクロストーク・ステージの内容を記憶とメモをもとに記すと...

・山下さん「学部生のころ、ハバネラをカルメンの妖艶さを出そうと体をクネクネさせながら歌っていたら、先生にそういうものでないと注意され、それ以来歌に集中するよう心掛けている」

・ヴィタリさん「ロシアにいたとき友人に『日本に焦がれるのは実際に暮らしてみないからだ』と言われ、実際に住んでみたら日本が益々好きになった」

・山下さん、ヴィタリさん「メゾやバリトンはオペラで悪役や憎まれ役を演じることが多いので、第4部ではコミカルで明るい曲を林さんにプレゼントします」

・小林さんはオメデタ(6か月)だそうで4月からお休みされるとのこと「リハーサルでお腹の子供が男性の低音に反応して暴れてました。林さんが歌われたことがあるという『さよなら故郷の家よ』をお腹の子と二人で捧げます」

・浦久さんが、林さんと西村さんとは日大芸術学部の先輩、後輩だそうでと振ると、林さんがすかさず「どう見ても私が先輩」、西村さん「日芸といえば林さんか爆笑問題」、林さん「最近では三谷幸喜さん」、西村さん「僕も日藝賞を取れるよう頑張ります。今回はテノールといえばこの曲『誰も寝てはならぬ』を林さんにプレゼントします」

“それじゃ私なのね”(山下さん、ヴィタリさん)...山下さんは技巧を要する曲を歌いながらしたたかさを。ヴィタリさんは、押され気味ではあるが会話を楽しんでいる様子をリズミカルに。

“さよなら故郷の家よ”(小林さん)...しっとりと情感込めて歌われました。

“誰も寝てはならぬ”(西村さん)...私にとっても西村さんと言えば、この曲。張りのある歌唱でプログラムの最後を〆ました。

“乾杯の歌”(小林さん、山下さん、西村さん、ヴィタリさん)...アンコール1曲目は定番を華やかに。

“シャンパンの歌”(小林さん、山下さん、西村さん、ヴィタリさん)...最後の最後《こうもり》の終曲で、お開きとなりました。

西村さんの183センチの長身、林さんもうっとりのヴィタリさん、女性陣は小林さん、山下さん、河野さんと美形揃いで、歌だけでなくビジュアル的にも楽しめました。




全員写真(最前列からの撮影で浦久さんまでは入れられませんでした、悪しからず)。左から河野さん、西村さん、ヴィタリさん、林さん、山下さん、小林さん。

~余談~



往きの電車でお昼ご飯。鰆の西京焼き&鰻のおこわ。



デザートはHさんお持たせのチョコ。ひと箱は開けずに持ち帰るように...とのお言葉に甘え、そうさせていただくことにしました。食べ終わった箱も捨てるのは勿体ないのでリボンを元にように掛けてしまっておいたのですが、その空箱の方を手違いで私が持ち帰ってました wow



宇都宮と言えば高田正人さん(テノール)、黒岩航紀さん(ピアニスト)、次に餃子となるわけですが、人気店の餃子を一度に楽しめる店があるというので、公演の後そちらで餃子を食しました。



帰りの電車では、チョコレートケーキで有名な店の「チョコ&くるみワッフル」、そしてHさんと別れたあとエキュートで稲荷寿司を買って帰りました。

宇都宮はむかし、両親と日光見物を行った帰りに知り合いを訪れて以来およそ30年振りでしたが、その20年以上前に宇都宮には少年ラグビーの試合で一度訪れています。電車で来たのは今回が初めてで、バス乗り場の行き先表示を見てそれを確信しました。高校野球でも超有名な○○学院があったのは、やはり宇都宮だったんですね。

あれは小学校4年のときでした。私は兄と一緒に少年ラグビーをやっていて、当時小学校の部活でラグビーをやっていたのは全国で3校だけ、私たちの学校以外では、私も兄もお受験ですべってしまった○○義塾幼稚舎と、宇都宮の○○学院小学校です。

(当日あちらはメンバーに中学生を一人紛れ込ませていましたが、一応)小学校同士のラグビー試合はそれまで例がなく、史上初の対外試合ということで、翌日の朝日新聞にそのことが載りました。こぼれ球を拾った兄がトライして我々が勝利したということまで書かれていたのですが、その記事の切り抜きも何処かに紛れてしまい今は残ってません。


マタネ