先日、《天国と地獄(地獄のオルフェ)》初日キャストの2日目を聴いて参りました。
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  オッフェンバック:《天国と地獄(地獄のオルフェ)》
 指揮:大植 英次
 演出:鵜山 仁

プルート(地獄の大王でユリディスの浮気相手、ジュピターの弟):上原 正敏(Ten)
ジュピター(神々の王である雷神、無類の女好き、ユリディスにもちょっかい出す):大川 博(Br)
オルフェウス(バイオリン教師、妻ユリディスとは倦怠期にある):又吉 秀樹(Ten)
ジョン・スティクス(地獄の番人、ベオティア国の元国王):吉田 連(Ten)
マーキュリー(商人や旅人の守護神、神々の使い):升島 唯博(Ten)
バッカス(酒の神):峰 茂樹(Br)
マルス(戦いと農耕の神、ヴィーナスと恋仲):野村 光洋(Br)
ユリディス(絶世の美女、オルフェとの夫婦仲悪し):愛 もも胡(Sop)
ダイアナ(狩猟と純潔の女神、ジュピターの娘):小村 朋代(Sop)
世論(世論を代表する人物 ):押見 朋子(Ms)
ヴィーナス(愛と美の女神):山本 美樹(Sop)
キューピッド(恋の神):吉田 桃子(Sop)
ジュノー(ジュピターの妻):醍醐 園佳(Sop)
ミネルヴァ(智の女神):髙品 綾野(Sop)
 合唱:二期会合唱団
 管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

 装置:乘峯 雅寛
 衣裳:原 まさみ
 照明:古宮 俊昭
 振付:新海 絵理子
 合唱指揮:根本 卓也
 演出助手:上原 真希
 舞台監督:菅原 多敢弘
 公演監督:加賀 清孝 
 会場:日生劇場

全2幕/日本語訳詞上演・歌唱部分のみ日本語字幕付き/上演時間:約2時間55分(25分の休憩1回を含む)

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指揮の大植さんは2013年2月、東京文化会館大ホールの二期会公演《こうもり》<指揮:大植英次さん、演出:白井 晃さん、キャスト:小貫岩夫さん、塩田美奈子さん、三戸大久さん、青木エマさん、高田正人さん、宮本益光さん、李 宗潤さん、坂井田真実子さん、井関麻衣子さん。櫻井章喜さん、合唱:二期会合唱団、管弦楽:東京都交響楽団、他>以来。

上原さんは2018年4月、よみうり大手町ホールの青薔薇海賊団“陽春コンサート”<出演:井ノ上了史さん(テノール)、上原正敏さん(テノール)、片寄純也さん(テノール)、川口静華さん(ヴァイオリン)、荒庸子さん(チェロ)さん、北村晶子さん(ピアノ・編曲)>以来。

大川さんは2016年1月、日本橋三井タワーアトリウムのミニオペラ《カルメン》(ハイライト版)エスカミリオ役<キャスト:横井香奈さん、片寄純也さん、大川博さん、宮下あずみさん、ピアノ・音楽監督:北村晶子さん> 以来。

又吉さんは2017年1月、足利市山辺公民館・別館ホールの『足利オペラ・リリカ』公演<出演:大隅智佳子さん、田崎尚美さん、内山信吾さん、又吉秀樹さん、石塚幹信さん、小田知希さん、小林昭裕さん、斉木健詞さん、指揮:佐藤宏充さん、演奏:清水綾さん&足利オペラ・リリカ・アンサンブル>以来。

吉田連さんは昨年11月、大田区民プラザ 小ホールの「下丸子うたの広場」~秋~<山田武彦さん(ピアノ・進行)、後藤真美さん(ソプラノ)、山下裕賀さん(アルト)、吉田 連さん(テノール)、的場正剛(バリトン)>以来。

升島さんは2017年10月、東京文化会館 大ホールの東京二期会オペラ劇場《蝶々夫人》ゴロー役<指揮:ガエタノ・デスピノーサさん、演出:栗山昌良さん、キャスト:森谷真理さん、山下牧子さん、和泉万里子さん、宮里直樹さん、今井俊輔さん、升島唯博さん、鹿野由之さん、勝村大城さん、原田勇雅さん、管弦楽:東京交響楽団、合唱:二期会合唱団、他>以来。

野村さんは2017年3月、HAKUJU HALLの二期会オペラ研修所第60期マスタークラス[大野徹也クラス]修了試演会賛助出演<出演:阿部祥子さん、新井英梨さん、今状華乃子さん、内田稚菜さん、斉藤真歩さん、酒井菜摘さん、砂村 郁さん、高原史乃さん、高山美帆さん、内藤淳美さん、畑中紫甫さん、花岡 薫さん、矢野敦子さん、中川香里さん、市川浩平さん、岡田淳志さん、澤井佑介さん、下村将太さん、田中 眞さん、寺西一真さん、的場正剛さん、賛助出演:小林秀史さん、野村光洋さん、清水宏樹さん、他>以来。

愛さんは2013年9月、六行会ホールのミラマーレオペラ公演《コジ・ファン・トゥッテ》フィオルディリージ役<指揮:松下京介さん、演出/構成:宮本益光さん、キャスト:愛もも胡さん、吉田 静さん、山口佳子さん、鈴木 准さん、高田智士さん、松山いくおさん、芸術監督:松山郁雄さん、ピアノ:巨瀬励起さん、中村文香さん、他>以来。

吉田桃子さんは2017年9月、東京文化会館 小ホールの“二期会新進声楽家の夕べ”<出演:阿部祥子さん、内田稚菜さん、菊地琴絵さん、斉藤真歩さん、島内菜々子さん、田浦彩夏さん、髙品綾野さん、高橋広奈さん、中野瑠璃子さん、村山舞さん、矢野敦子さん、吉田桃子さん、吉田愼知子さん、郷家暁子さん、中川香里さん、花房英里子さん、相山潤平さん、市川浩平さん、寺西一真さん、的場正剛さん、ピアノ:髙木由雅さん>以来.

髙品さんは昨年9月、新国立劇場オペラパレスの東京二期会オペラ劇場《修道女アンジェリカ》オスミーナ役<指揮:ベルトラン・ド・ビリーさん、演出:ダミアーノ・ミキエレットさん、キャスト:文屋小百合さん、与田朝子さん、小林紗季子さん、石井 藍さん、郷家暁子さん、舟橋千尋さん、福間章子さん、髙品綾野さん、高橋希絵さん、鈴木麻里子さん、小出理恵さん、中川香里さん、管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団、合唱団:二期会合唱団、新国立劇場合唱団、藤原歌劇団合唱部、他>以来。

東京フィルハーモニー交響楽団は昨年10月、神奈川県民ホール・オペラ《アイーダ》<指揮:アンドレア・バッティストーニさん、演出:ジュリオ・チャバッティさん、原演出:マウリツィオ・ディ・マッティア、キャスト:木下美穂子さん、城 宏憲さん、サーニャ・アナスタシアさん、モニカ・ザネッティンさん、上江隼人さん、斉木健詞さん、清水那由太さん、松井敦子さん、菅野 敦さん、合唱:二期会合唱団、管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団、他>以来。

日生劇場、二期会公演は昨年11月、《後宮からの逃走》<指揮:下野竜也さん、演出:ギー・ヨーステンさん、キャスト:安田麻佑子さん、宮地江奈さん、山本耕平さん、北嶋信也さん、斉木健詞さん、合唱:二期会合唱団、管弦楽:東京交響楽団、他>以来です。

ここからが本題です~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

上原さん(地獄の大王・プルート役)は、ちょっと近寄り難い雰囲気ですが、素顔は気さくで面白い方だと去年のコンサートで知りました。そんな訳で今回のオペレッタ、登場しただけでこちらの頬が緩んできます。地獄の大王としての貫禄も十分、高らかな歌唱も素晴らしかっったです。

大川さん(神々の王・ジュピター役)の声もよく響いてました。第2幕ユリディスとの<ハエの二重唱>は白眉でした。ハエに変身してユリディスを口説きにかかる有名なシーンですが、触覚をプルプル震わせる芸の細かさを見せてました。

又吉さん(バイオリン教師役)を初めて聴いたのは2016年5月、カワイ表参道「パウゼ」での日本ヴェルディ協会の公演で、その時からユーモアを発揮され、面白い方だと分かってました。声自体は深みのあるテノールで落ち着いた感じですが、オペレッタの舞台になるとスーパーマリオのような雰囲気で弾けます。

以上お三方は正にはまり役でした。

吉田連さん(地獄の番人、ジョン・スティクス役)には、このオペレッタで唯一と思われるアリア<かつてベオティアの王だった時>が与えられています。美声です。彼もユリディスに言い寄るのですが、今回はどこか世捨て人のような暗い影が感じられる人物設定でした。関西弁を使わせる演出でしたが、元国王としての重みが削がれ違和感がありました。

升島さん(神々の使い、マーキュリー役)は、「そこのけそこのけマーキュリーが通るぞお~」と叫びながら登場してきました。升島さんは軽いステップワークでコミカルな役を上手に演じられる方です。

峰さん(酒の神、バッカス役)は、出番は少なかったですが安定してました。最後にジュピターの裁定で、美女ユリディスを巫女として迎い入れるという美味しい役どころです。オリンポスで巫女というのは秘書兼愛人です。

野村さん(戦いと農耕の神、マルス役)は、太い声が出てました。

愛さん(絶世の美女、ユリディス役)は、オルフェ(夫)⇒プルート(浮気相手)⇒ジュピター(新しい彼氏)と気が多い女性の役。演技は乙女チック、輪郭のはっきりした歌唱で超高音やアジリタも自在に。

小村さん(ダイアナ役)は、質量系の声質ですが高い音もよく出てました。

押見さん(世論を代表する人物役)は数少ない良識派を演じ、口跡が良く、歌唱は温和、与論島に住んでいます。

山本さん(ヴィーナス役)は、愛と美の女神らしくそこはかとない色香を漂わせておいででした。

吉田桃子さん(恋の神、キューピッド役)は、甲斐甲斐しい演唱ぶりで大活躍でした。

醍醐さん(ジュピターの妻、ジュノー役)は、マダム風、最高位の女神らしい雰囲気が醸し出されてました。

髙品さん(智の女神、ミネルヴァ役)は、独身女神陣で唯一男っ気なしの真面目女子を演じ(恐らく髙品ちゃん、私生活でも男っ気なし!声楽一筋!←失礼しましたッ!余計な一文を挟んでしまいましたあ!)、歌唱面では声の透明性で群を抜いてました。

二期会合唱団も良く仕上がってました。第2幕が始まる前、係の方が私たちの列に「済みません、足元をお空けください」と注意し歩いていて、<ハエの二重唱>への導入部(キスの台詞とクープレ)で、女声陣がその狭いスペースにやってきて演唱しました。まさに目と鼻の先、改めて深く座り直して拝聴いたしましたが、最後の投げキッスは私の頭の上を通り過ぎていきました。ま、それはそれで構わないんですが、衣装がまんま化学防護服で、そちらは奇異に映りました。

大植さんも東フィルも良かったですが、序曲の途中、ワルツの部分(ギャロップへの導入部)で、急にスローテンポになった所はずっこけました。この部分、バレエ音楽「パリの喜び(ゲーテ・パリジェンヌ)」では優雅に演奏されますが「天国と地獄」においてはイン・テンポでないと全体の快活さが削がれてしまう気がします。気になる緩急は本編に入ってからも聞かれました。

でも、全体に愉しいプロダクションでした。

~余談~

この日は休日14時開演。私も翌日は朝市で売る「ニシンのみりん干し」の仕入れがあって早いので、先に食事をすることにしました...昼ご飯の候補として日比谷〔松本〇〕、有楽町〔ペニンシュ〇〕、銀座〔スケベニンゲ〇〕とあったのですが、銀座でHさんと待ち合わせ、パスタにしました。「フリッタータ」ミートソースを卵で絡めてオムレツ風に焼き上げたもので、こちらのお店が元祖だそうです。



食事のあと、日生劇場まで歩くか、地下鉄に乗るか(銀座⇒日比谷:駅間400m/所要時間:数10秒)で、Hさんと取っ組み合いの大喧嘩になり(体格的に私に勝ち目はない)、ホームの上り下りや電車の待ち時間などを考えると歩き出した方がいいと思ってる私は(今までこの区間一度も地下鉄を使ったことはありませんで)歩き、歩くスピードが遅い(いつも私の3、4メートル後を汗をかきかき着いてきている)Hさんは地下鉄と、別行動で現地合流となりました。

さて、夜も大分更けてまいりました。何か悪い予感がしますが、あなたを心地好い眠りに誘う心休まる演奏をお届けしましょう.。o○(音が小さいので必ずボリュームを最大にしてお聴き下さい)...



次回のブログ更新はメモ来月下旬(山形テルサの「第九」演奏会<指揮:飯森範親さん、管弦楽:山形交響楽団、独唱:竹多倫子さん、在原泉さん、西村悟さん、大西宇宙さん、合唱:山響アマデウスコア> 12/28 のレポ)を予定しております。


マタネ