先日《ドン・ジョヴァンニ》を聴いて参りました。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
W.A.モーツァルト:《ドン・ジョヴァンニ》
 総監督・指揮:井上道義
 演出・振付:森山開次

ドン・ジョヴァンニ(女たらしのスペイン貴族):
 ヴィタリ・ユシュマノフ(Br)
レポレッロ(ジョヴァンニの従者):
 三戸大久(BBr)
ドンナ・アンナ(オッターヴィオの許嫁、ジョヴァンニに襲われる):
 髙橋絵理(Sop)
騎士長(ドンナ・アンナの父):
 デニス・ビシュニャ(Bas)
ドンナ・エルビーラ(ジョヴァンニに捨てられた貴婦人、復讐・復縁を期す):
 鷲尾麻衣(Sop)
ジョン・オッターヴィオ(ジョヴァンニの友人):
 金山京介(Ten)
ツェルリーナ(ジョヴァンニの誘惑される村娘):
 藤井玲南(Sop)
マゼット(農夫、ツェルリーナの恋人):
 近藤 圭(Br)
ダンサー:浅沼圭、碓井菜央、梶田留以、庄野早冴子、中村里彩、引間文佳、水谷彩乃、堀田千晶、南帆乃佳、山本晴美、脇坂優海香
  合唱:東響コーラス
  管弦楽:読売日本交響楽団
  チェンバロ:服部容子
  マンドリン:青山 涼
  カヴァーキャスト
  ドン・ジョヴァンニ:岡 昭宏
  レポレッロ&マゼット:寺田功治
  ドンナ・アンナ:醍醐園佳
  ドンナ・エルヴィーラ:西本真子
  ドン・オッターヴィオ:髙畠信吾
  会場:東京芸術劇場コンサートホール

  副指揮:辻博之
  音楽ヘッドコーチ・コレペティトゥア:服部容子
  コレペティトゥア:大町綾乃、志村真梨子、山下百恵
  ライブラリアン:田中 宏
  日本語歌詞監修:渋江陽子
  演出補:太田麻衣子
  振付補:美木マサオ
  振付アシスタント:引間文佳
  照明:櫛田晃代
  衣装:廣川玉枝(SOMA DESIGN)
  美術:柴田隆弘 
  サウンドデザイナー:石丸耕一
  ヘアメイク:フォレスタ
  英語字幕:横尾優美子
  照明操作:川崎 渉(RYU)
  音響操作:白石安紀
  字幕操作:上野詩織
  大道具制作:ステージワークURAK
  表紙アートデザイン・イラスト:森本千絵(goen°)
  表紙デザイン:髙橋 亮(goen°)
  舞台監督:酒井 健
  プロダクションマネージャー:關 秀哉

全2幕/英語字幕付、日本語上演/上演時間:約3時間20分(25分の休憩1回を含む)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
《ドン・ジョヴァンニ》は2015年9月、NHKホールの英国ロイヤル・オペラ公演<指揮:アントニオ・パッパーノさん、演出:カスパー・ホルテンさん、キャスト:インデブラント・ダルカンジェロさん、アレックス・エスポージトさん、アルビナ・シャギムナトヴァさん、ローランド・ヴィラゾンさん、ジョイス・ディドナートさん、ユリア・レージネヴァさん、マシュー・ローズさん、チャーリー・ブラックウッドさん、ライモンド・アチェさん、合唱::ロイヤル・オペラ合唱団 、管弦楽:ロイヤル・オペラハウス管弦楽団、他>以来。

井上さんは2011年1月の東京芸術劇場《イリス》<指揮・演出:井上道義さん、管弦楽:読売日本交響楽団、キャスト:小川里美さん、晴雅彦さん、ジョン・ハオさん、ワン・カイさん、市原 愛さん、西垣俊朗さん、合唱:武蔵野音楽大学、他>以来。

ヴィタリさんは昨年9月の東京文化会館オペラBOX《トスカ》アンジェロッティ役<指揮:須藤桂司さん、演出:粟國 淳さん、キャスト:上田純子さん、宮里直樹さん、須藤慎吾さん、ヴィタリ・ユシュマノフさん、鈴木俊介さん、高橋洋介さん、久保田真澄さん、清水理恵さん。プレトーク:朝岡聡さん、ピアノ:高橋裕子さん、他>に続いて。

三戸さんは昨年1月、足利市民会館大ホールの足利オペラ・リリカ公演《蝶々夫人》ボンゾ役<指揮:菊池彦典さん、演出:直井研二さん、キャスト:大隅智佳子さん、城宏憲さん、谷友博さん、中島郁子さん、新海康仁さん、小林昭裕さん、鹿野由之さん、 和泉万里子さん、原田勇雅さん、合唱指導:小林昭裕さん、ピアニスト:清水綾さん、演奏:足利オペラ・リリカ・アンサンブル、他>以来。

髙橋さんと、読売日本交響楽団は昨年11月、日生劇場のNISSAY OPERA《コジ・ファン・トゥッテ》フィオルディリージ役、管弦楽<指揮:広上淳一さん、演出:菅尾 友さん、キャスト:髙橋絵理さん、杉山由紀さん、村上公太さん、岡 昭宏さん、腰越満美さん、大沼 徹さん、管弦楽:読売日本交響楽団、合唱:C.ヴィレッジシンガーズ、他>に続いて。

ビシュナさんは昨年6月、日生劇場 NISSAY OPERA《魔笛》ザラストロ役<指揮:沼尻竜典さん、演出:佐藤美晴さん、キャスト:デニス・ビシュナさん、西村 悟さん、福島明也さん、新海康仁さん、中江早希さん、森谷真理さん、髙橋絵理さん、吉田珠代さん、中島郁子さん、安斎里江さん、松原典子さん、藤井麻美さん、梅津 碧さん、石野繁生さん、大川信之さん、伊藤達人さん、北川辰彦さん、管弦楽:新日本フィルハーモニー交響楽団、合唱:C.ヴィレジシンガーズ、他>に続いて。

鷲尾さんは昨年6月のサントリーホール《イオランタ》ブリギッタ役<指揮:ミハイル・プレトニョフさん、管弦楽:ロシア・ナショナル管弦楽団、 キャスト:アナスタシア・モスクヴィナさん、ナジミディン・マヴリャーノフさん、平野和さん、大西宇宙さん、ヴィタリ・ユシュマノフさん、高橋 淳さん、ジョン・ハオさん、山下牧子さん、鷲尾麻衣さん、田村由貴絵さん、合唱:新国立劇場合唱団>に続いて。

金山さんは2015年4月の大田区アプリコ小ホール《メリーウィドウ》カミュ・ド・ロジョン役<出演:川越塔子さん、大山大輔さん、坂井田真実子さん、金山京介さん、ピアノ:吉田貴至さん、演出:太田麻衣子さん 他>以来。

藤井さんは一昨年7月、東京文化会館の二期会オペラ公演《ばらの騎士》帽子屋役<指揮:セバスティアン・ヴァイグレさん、演出:リチャード・ジョーンズさん、キャスト:林正子さん、妻屋秀和さん、小林由佳さん、加賀清孝さん、幸田浩子さん、栄千賀さん、大野光彦さん、石井藍さん、斉木健詞さん、吉田連さん、畠山茂さん、竹内公一さん、菅野敦さん、大網かおりさん、松本真代さん、和田朝妃さん、藤井玲南さん、芹澤佳通さん、大川信之さん、合唱:二期会合唱団、管弦楽:読売日本交響楽団、他>以来。

近藤さんは2012年7月、新国オペラ研修所試演会《コジ・ファン・トゥッテ》ドン・アルフォンソ役<指揮:天沼裕子さん、演出:伊藤明子さん、ピアノ:原田園美さん、キャスト:林よう子さん、立川清子さん 藤井麻美さん、高橋洋介さん、伊藤達人さん、菅野敦さん、吉田和夏さん、今野沙知恵さん、近藤 圭さん>以来。

チェンバロの服部さんは2016年8月、浜離宮朝日ホールの西村悟さんのテノール・リサイタル(ピアノ:服部容子さん)以来。

スタッフにも知った(聞いた)お名前があり、演出補の太田さんは昨年7月、東京文化会館 大ホールの東京二期会オペラ劇場《魔弾の射手》演出助手<指揮:アレホ・ペレスさん、演出:ペーター・コンヴィチュニーさん、キャスト:藪内俊弥さん、伊藤純さん、北村さおりさん、熊田アルベルト彩乃さん、加藤宏隆さん、小貫岩夫さん、小鉄和広さん、杉浦隆大さん、大和悠河さん、合唱:二期会合唱団、管弦楽:読売日本交響楽団、演出助手:太田麻衣子さん、他>に続いて。

副指揮の辻さんは2015年12月、Bunkamura オーチャードホールの《仮面舞踏会》副指揮<指揮:佐藤正浩さん、演出:粟國 淳さん、キャスト:西村 悟さん、牧野正人さん、小川里美さん、鳥木弥生さん、高橋薫子さん、和下田 大典さん、久保田 真澄さん、小田桐 貴樹さん、納屋善郎さん、狩野 武さん、飛鳥井 亮さん、上田誠司さん、江原 実さん、大塚雄大さん、合唱:藤原歌劇団合唱部、管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団、副指揮:辻博之さん、他>以来。

東京芸術劇場は2014年8月、第12回東京音楽コンクール声楽部門本選<出場者:清水勇磨さん(バリトン)、盛田麻央さん(ソプラノ)、相田麻純さん(メゾソプラノ)、岡昭宏さん(バリトン)、指 揮:飯森範親さん、管弦楽:東京交響楽団>以来です。


ここからが本題です~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

稀代の色事師、ドン・ジョヴァンニのやりたい放題と、哀れな末路を描いたオペラです。別名“罰を受けた放蕩者”

本プロダクションは新演出、英語字幕付、日本語上演。森山開次さん(振付師・ダンサー)による演出と、オール日本語上演がウリです。

森山さんという方は、世界のダンス界で彼を知らない者はいない、と言われるほどの存在だそうです。金髪ロングヘアのプロフィール写真は、とても銀行員には見えませんが、インタビュー動画を拝見すると、真面目そうで実直な印象さえ受けます。

オケピの床が嵩上げされていて、楽団員の腕から上の部分が客席から見えました。これは8年前の井上さんの《イリス》のときと一緒で、セミステージ形式と呼ばれてました。

ピットを囲むようにして張り出し舞台が設えられていて、それも《イリス》のときと一緒です。今回もオケは芸劇と事業提携を結んでいる読響です。

歌手、ダンサー、コーラスの入退場は、左右の袖、舞台中央バルコニー、バルコニー下の開口部、客席後ろドア等...アリアを歌い終えたソリストは、急ぎ足(駆け足に近い)で袖に引き上げていくケースが多く、さすがにアスリートの側面をお持ちの森山さんの演出だと思いました。キビキビしていて素敵でした。

レチタティーヴォに字幕はつかず、正確に聴きとれない箇所がなかったとは言えませんが、アリア・重唱では字幕がつき、重唱はフォントで区別され(ゴシック体と丸字系)観る者、聴く者への配慮がなされてました。

日本語の歌詞に関しては、そういうものと思って聴きました。ウェブにアップされている対訳より気の利いた訳も見られました、紙上再録は出来ませんが。

ヴィタリさんやビシュナさんにしても、日本語で話をしてくれている姿しか知らないので、むしろ自然で身近な印象を持ちました。ご当人たちは大変でしたでしょうが、第一線で活躍されてらっしゃる歌手による日本語オペラも悪くない、と私は思いました。

キャスチングはオーディションによるものだったようです。男性陣の選考基準は歌唱力・長身・イケメン、女性陣は歌唱力・気丈夫・美形と憶測しています。

ヴィタリさん(ドン・ジョヴァンニ役)は、素晴らしい美声の持ち主です。俗に酔っ払いの演技は下戸が…、悪役は善人が上手い…と言われますが、今回のヴィタリさんは正にそうでした。

第2幕Nr.16♪カンツォネッタ“窓辺においで”の、マンドリンと弦(コントラバスを除く)の超弱ピッツィカートを伴った、艶々としたバリトンヴォイスの歌唱は甘美の極みと言えます。

三戸さん(レポレッロ役)は太い声で、しかし演技は小心者の俗物に徹しきってました。ほぼ出突っ張りの熱演、熱唱。コミカルな面も覗かせておいででした。

髙橋さんは美声、広音域が要求されるドンナ・アンナ役を好演されました。第2幕Nr.23♪ レチタティーヴォとアリア“むごい女ですって”では、持ち前の声量と装飾技巧が生きました。

ビシュナさん(騎士長役)は、重低音でオペラを〆ました。後半の石造は、コスプレ騎士の格好で登場してきました。あのサイズですから特注でしょう。

鷲尾さん(ドンナ・エルヴィーラ役)は、明瞭な歌いぶり(力感、哀歓もあり)。エルヴィーラはドン・ジョヴァンニへの復讐に異常な執念を燃やしてますが(カタログ記載のあとの1,002人はどうしているんでしょう…)、根は人を信じやすくて母性本能の強い女性かもしれません。

第2幕Nr.21b♪レチタティーヴォとアリア“あの人でなしは私を欺き”は、跳躍音頻出の難曲ですが、踊りながら、ときに横になりながらのパフォーマンスに歌唱の乱れはみられませんでした。

ドンナ・エルヴィーラと、お付きの侍女がダンサーの動きにつられて踊り出してしまうお茶目な演出も見られました。

金山さん(ドン・オッターヴィオ役)は、貴公子然としていて優しい雰囲気です。根っからの悪ドン・ジョヴァンニには抗しようがありません。第2幕♪アリア“私の恋人を慰めて”の、技巧を伴った気高いパフォーマンスにウットリです。私が女性ならイチコロでしょう.。o○この日も熱心な金山さんファンがお見えでした。前日に続き連投だそうです。

藤井さん(ツェルリーナ役)は、芯の通ったお声です。もしドンナ・エルヴィーラが来なかったら第1幕Nr.7♪小二重唱“お手をどうぞ”のあと、ドン・ジョヴァンニにヤラれてしまっていたでしょう もじ

我に帰ったツェルリーナが、「あたしにはやっぱマゼットが一番」と尽くす演唱は出色でした。

女性陣は、それぞれお声に特徴があり視線を外しても聞き分けが可能でした。

近藤さん(マゼット役)は、よく通る声で純朴な農夫を熱演されました。ドン・ジョヴァンニにボコボコにされてしまい可哀そうです(痛みには近藤ロイチンが有効です←スルーしてください)

演出は端折った部分もありましたが、意外なほどオーソドックスなもので、ラストの地獄落ちのシーンが最も印象的でした。

最初は騎士長の石造に恐れおののいていた黒いコスチュームのダンサー全員が、いつしかドン・ジョヴァンニに絡みついて上半身の衣服を剥ぎ取り、新体操のリボンのような赤い長い布で絡めて地獄に引き込んでいきました。騎士長の怨念というより女性陣3人の怨念を表現されていたようです。最後の最後その3人が骸骨を男性に手渡した処で幕でした。

「これが悪者の終わり、死んで行くときはこの通り、救いもなしに死んで行く」の大団円に、私の空耳でなければ、地獄からドン・ジョヴァンニの声で「何も恐れずそのままで…」

鍛えられた肢体で表現されるダンスパフォーマンスに感銘を受けました。衣装替えも頻繁で“踊るオペラ《ドン・ジョヴァンニ》”の謳い文句通り、ほぼ出突っ張りの熱演でした。第1幕Nr.13♪ドン・オッターヴィオのアリア“あの人の心の安らぎこそ”はソロのダンスで、曲によっては敢えてダンスを伴わない演出も見られました。

ダンサーもオーディションで選ばれたとのことですが、プロフィールを拝見すると3、4歳からバレエやダンスを始められていて(新体操という方も)現在も夢を追い求めている方たち...今回芸劇という大きな舞台に立たれ、皆さんカテコでは晴れがましい表情をされてました。

井上さんもオケも気張ることなく自然体で素晴らしかったです。第2幕の晩餐会のシーンでは《フィガロの結婚》のバス・アリア♪「もう飛ぶまいぞこの蝶々」のメロディーが演奏されてました。合唱(東響コーラス)は若干ダンサーの陰に隠れてしまった感がありますが、良く仕上がってました。

“踊るオペラ《ドン・ジョヴァンニ》”で、ダンサーが何を表現しているのかを理解(までは恐らくいかず探る)には、もう一回観ないと分からない、そんな思いで会場をあとにしました。


~余談~
この日、私は前から2列目の通路際に座っていたのですが、村娘に扮したダンサーの一人が通路を引き上げていくとき、持っていた棍棒の先で私の胸をチョンと突く真似をしていきました sei Hさんと顔を見合わせましたが、どの世界にも悪戯っ娘はいるもんです ニコ

休憩時のパン。Hさんいつもありがとうございます お辞儀 これが全部ではありません。



現在東京芸術劇場が建っている場所は、昭和40年代普通の公園でした。それ以前には東京学芸大学の附属小学校があったようですが、池袋西口は怖い所と言われていて滅多に行かない場所でした。

Hさんは無類の暑がりで、真冬でも少し歩くとコートを脱いで手に持たれています。ご当人の言「暑がりの寒がり」←何処か寒がりなんだか…

帰りはSEIBUで「五目焼きそばセット」服が汚れるのでラーメン類は滅多に食べません(焼き肉も匂いが付くのでパス)。ネクタイ(シルク)のクリーニングは染み抜きを頼むと2,000円くらいになり、ラーメン一杯が高いものについてしまうことがあります←どうでもいい話でした



この日配布されたブックレット(あらすじや見どころが記されてました)を、Hさんに預かって貰ったままにして帰宅してしまいました。何かのついでで結構ですからと連絡し、その「ついで」が半月早く昨日訪れました。それにしても、いくら普段お世話になっているからといって(私もその自覚はございますが)奮発し過ぎです(Hさん曰く「しょうがない」)、大変嬉しいですけど、このような散財は平成で最後にしていただきとう存じます(お返しが大変です←ホンネ)。


ちょっと分かり辛いので



次回のブログ更新はメモ来月中旬(下丸子うたの広場~冬~<山田武彦さん(ピアノ・進行)、内田千陽さん(ソプラノ)、山下裕賀さん(アルト)、工藤和真さん(テノール)、的場正剛さん(バリトン)>@大田区民プラザのレポ)を予定しております。



マタネ