一昨日、ムジカーザ・オペラ《椿姫》大武組初日を聴いて参りました。
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  ヴェルディ:《椿姫》
ヴィオレッタ・ヴァレリー(高級娼婦、椿姫):大武彩子(Sop)
アルフレード・ジェルモン(ヴィオレッタを慕う青年貴族):渡辺大(Ten)
ジョルジョ・ジェルモン(アルフレードの父):藪内 俊弥(Br)
フローラ・ベルヴォワ(高級娼婦、ヴィオレッタの友人):山川真奈(Mez)
アンニーナ(ヴィオレッタの家のお手伝い):田中世怜奈(Sop)
ガストン子爵(アルフレードの友人):隠岐速人(Ten)
ドゥフォール男爵(ヴィオレッタのパトロン):押見春喜(BBr)
ドビニー侯爵(フローラのパトロン):星田裕治(Br)
医師グランヴィル(ヴィオレッタの主治医):小田川哲也(BBr)
合唱:ミューゼシード・オペラ・コーラス
 大森麗(Sop)
 吉川歌穂( 〃 )
 和久井恵津子( 〃 )
 山村晴子( 〃 )
 大野耕哉(Ten)
 阿部泰洋(Br)

演奏:ミューゼシード・オペラ・アンサンブル
  西田史朗(Vn)
 羽川真介(Vc)
 温井杏奈(Fl)
 篠宮久徳(Pf)

指揮:飛鷹佑依
演出/字幕翻訳:藪内俊弥
照明:足立恒、中村浩実(impression)
字幕オペレーター:八柳智美(MUSICASA)
企画:黒田珠世( 〃 )
制作:ムジカーザ/ミューゼシード

全3幕/イタリア語上演・字幕付き/上演時間:約2時間45分(15分の休憩2回を含む)

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大武さん、田中さん、小田川さんと合唱、演奏、スタッフの多くと会場は2016年10月、ムジカーザオペラ《魔笛》夜の女王役、童子Ⅰ役、ザラストロ役等…<出演:押見春喜さん、小田川哲也さん、倉本絵里さん、大武彩子さん、市川浩平さん、伊藤達人さん、富田沙緒里さん、大網かおりさん、渥美史生さん、大井哲也さん、水野友貴さん、松原典子さん、三浦大喜さん、藪内俊弥さん、宮本英一郎さん、清水多恵子さん、三橋千鶴さん、宮川千穂さん、田中世怜奈さん、新倉さやかさん、前山依加さん、浅原孝夫さん、清水那由太さん、音楽監督・指揮:飛鷹佑依さん、演奏:ミューゼシード・オペラ・アンサンブル、指揮:飛鷹佑依さん、合唱:ミューゼシード・オペラ・コーラス、演出:藪内俊弥さん、企画:黒田珠世さん、他>以来。

渡辺さんは2014年11月、足利市民会館の足利オペラ・リリカ公演《ノルマ》フラービオ役<出演:大隈智佳子さん、田崎尚美さん、城宏憲さん、斉木健詞さん、渡辺大さん、林眞暎さん、指揮:菊池彦典さん、管弦楽:足利オペラ・リリカ・アンサンブル、公演特別監督:直野資さん、音楽監督:大隈智佳子さん、合唱:足利市民オペラ合唱団 OHSUMI&PRODUCEオペラ合唱団、他>以来。

藪内さんは本年7月、東京文化会館 大ホールの《魔弾の射手》オットカール侯爵役<指揮:アレホ・ペレスさん、演出:ペーター・コンヴィチュニーさん、キャスト:藪内俊弥さん、伊藤純さん、北村さおりさん、熊田アルベルト彩乃さん、加藤宏隆さん、小貫岩夫さん、小鉄和広さん、杉浦隆大さん、大和悠河さん、合唱:二期会合唱団、管弦楽:読売日本交響楽団、他>に続いて。

隠岐さんは昨年12月、かなっくホールのクラシックイノベート“クリスマスコンサート2017”<指揮・プロデュース:岡田直樹さん、出演:小澤美咲妃さん、志田尾恭子さん、高橋広奈さん、唯野敦子さん、長勢ゆかりさん、佐藤慈雨さん、隠岐速人さん、木川翔さん、石井基幾さん、小野隆伸さん、小仁所良一さん、演奏:クラシックイノベート・アンサンブル(吉川真登さん、久武麻子さん、前田明子さん)、合唱:横浜ベイコール&クラシックイノベート有志合唱団>以来。

押見さんは2017年10月、日生劇場のNISSAY OPERA《ラ・ボエーム》ベノア役<出演:砂川涼子さん、北原瑠美さん、宮里直樹さん、樋口達哉さん、大山大輔さん、桝貴志さん、池内響さん、近藤圭さん、デニス・ビシュニャさん、三戸大久さん、柴田紗貴子さん、髙橋絵理さん、岸浪愛学さん、青栁貴夫さん、相沢創さん、小田桐貴樹さん、清水良一さん、押見春喜さん、指揮:園田隆一郎さん、演出:伊香修吾、管弦楽:新日本フィルハーモニー交響楽団 他>以来。

星田さんは本年5月、吉祥寺スターパインズカフェでのミャゴラトーリオペラ《ドン・パスクアーレ》公証人役<指揮:柴田真郁さん、演出:岩田達宗さん、ピアノ:浅野菜生子さん、キャスト:大澤恒夫さん、須藤慎吾さん、中嶋克彦さん、鵜木絵里さん、星田裕治さん、他>に続いて。


ここからが本題です~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
2001年からほぼ隔年で開催されているムジカーザオペラシリーズ、今回は「椿姫」。初日から超満席の盛況です。

序曲に続き最初に登場してきた大武さん(ヴィオレッタ)、楽しかった思い出に耽っている様子、それが一転物憂げな表情に変わります。

ロールデビューだったそうですが、健闘されました。キレのある歌唱と豊かな表情、小顔、目にチカラがあります。

注目の♪<ああ、そはかの人か>ハッと我に帰り♪<花から花へ>このとき黒いロング手袋を脱ぎ捨てました「最後、勝負するわよ!」果たして見事なヴァリアンテ、ハイEsを楽々と決めておいででした。

ヴィオレッタの雰囲気も良く出ていたので、あとスタミナ(低音域と弱音)が身に付けば、新境地が開けると思います。

渡辺さん(アルフレード)、初聴きは2011年の東京オペラシンガーズ(トリプルカルテット)とN響(首席・次席)のコラボ。そのあともオペシン・トリプルカルテットで2度聴きましたが、オペラは2014年の《ノルマ》フラービオ役以来でした。

これまでご縁がなかったのが不思議なくらいで、豊かな声量と明瞭な歌唱、立派なアルフレードを演じられました。渡辺さんのアルフレードは大きな発見でした。

藪内さんのジェルモンも大発見でした。期待していた♪<プロヴァンスの海と陸>は、期待以上の出来でした。

持ち前の豊かな低音に加え、バリトンにとって鬼門の高音域の連続も、被せることなく見事にクリア。低音が効いて、かつ高音をあのように強く出せる美声バリトンは滅多にいません。演技も堂に入ってました。

第2幕のヴィオレッタとの二重唱♪<天使のように清らかな娘を神様は私に授けて下さった>~♪<どうぞお話になってください、美しく清らかなお嬢さんに>も素敵でした。

山川さん(フローラ)は初聴きでしたが、意外な発見と言うと失礼ですが、とても良かったです。容姿もお声もエキゾチック、独特の雰囲気をお持ちです。現在ヴェローナ音楽院に留学されてるそうで、将来が楽しみです。

終演後、お仲間が山川さんの胸のふくらみをツンツンつついてました←不要な記述でしたネ(他意はありません)

田中さん(アンニーナ)も柔らかな歌唱で、甲斐甲斐しい演技をされてました。田中さんもハイEを出せるソプラノです。

隠岐さん(ガストン子爵)は、張りのスピント系で、青年貴族を好演されました。

押見さん(ドゥフォール男爵)は役に見合った存在感、深いお声は魅力です。

星田さん(ドビニー侯爵)は、終始落ち着いた演唱振りでした。

小田川さん(医師グランヴィル)は、騒ぎを他所に粛々と演技されてました。ヴィオレッタが、グランヴィル医師は真の友人と呟くのが印象的です。厚い歌唱も健在で、アンサンブル時には押見さんと二人で低音十人力の働きでした。

6人の合唱も鍛えられていて、お馴染みの♪<乾杯の歌>や、第2幕<フィナーレ>等で厚みが創出されました。ビジュアル的にも女性陣は綺麗どころが集められていた感じです。

飛鷹さんの指揮も、早くもなく遅くもないベストな歌い回しと感じました。

どうしても大アリアの前奏に注意が行ってしまいますが、♪<プロヴァンスの海と陸>のフルートとピアノの同調、♪<パリを離れて>のチェロのピアノの同調にヴァイオリンが後を追う...こうした所が素敵でした。

演出で印象的だったのは、第2幕でアルフレードがドゥフォール男爵との賭けに勝った金をヴィオレッタに投げつけ、それを皆が非難するなか、フローラだけが黙って佇んでいたシーンです。

オペラではボヤかされてますが、アレクサンドル・デュマ・フィスの原作小説をちらっと読んだ感じからすると、アルフレードが金を投げつけたのは、愛の生活のため全財産を費やしたヴィオレッタへの借りを返すという以外に、娼婦としてヴィオレッタを買った代金の清算の意味合いもある感じです。

フローラのあの沈黙は、ヴィオレッタと同じ境遇に身を置く惨めさから来てるいるものではないかと...

あと第2幕と第3幕最終場に、ジェルモンがヴィオレッタを自分の娘として抱くチャンス(笑)があったのですが、演出を兼ねている藪内さんは役得を回避されました。紳士です。

中二階と階段を上手く生かし、狭いスペースを感じさせない立体的な舞台構成でした(来日でもドールハウスのような小さな建物ひとつで舞踏会から墓場まで賄ってしまうことがあるので、上等です)。第三幕冒頭で朝日が差し込んでくる照明効果は、この会場ならではものでした。

毎回感心する色分けされた字幕も見やすかったです。

得るものが多かった今回の《椿姫》。会場を出たら心配されていた雨も傘が要らない程度で、この調子で家まで持ってくれたら…と急ぎ足で駅に向かいました。来るとき思いましたが、花屋さんの前を通ると季節の変わり目を感じます。


次回のブログ更新はメモ近々(まっかな秋~戦後から70年代の童謡をあつめて~@東京建物八重洲ホール<出演:マキナ・アンド・カンパニー、駒井ゆり子さん>)を予定しております。



マタネ