ライトノベル感想:扉の外 | 逆転裁判合同ブログ1号店

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扉の外 /土橋 真二郎 
第13回電撃小説大賞<金賞>受賞

あらすじ:

修学旅行に行くはずだったクラスは、突然わけもわからず密室に閉じ込められる。

そこでソフィアと名乗る人工知能からある絶対ルールの下、生活することを強いられる。

クラスメイトがルールを受け入れる中、主人公は嫌悪感からその生活を拒否。

やがて孤立した主人公は出て行くことを決めるが・・・。


<密室><ルール><ゲーム>というオビ文に惹かれて購入。

このような舞台設定のもと、心理戦が繰り広げられる小説なのかなと思ってたんですが、違いました。


なぜか密室に閉じ込められた31人のクラスメイトの男女達。

主人公はルールの受け入れを拒否するが、そんな共同生活の中でトラブルが無いはずもなく。

クラスという‘集団‘で居場所を見つけられず抜け出した主人公が

他の集団を転々とし、それぞれの状況に身を投じていく。


特殊な状況下で露になってくる、侮蔑・悪意・優越感といった人間の醜い部分。

協調しているように見えて、実は危うい人間関係。

そういった「集団」における人間関係描写がメインの面白さになってる話でした。


全編通して人間の黒い部分が生々しいほどに浮き彫りにされていくので

暗い雰囲気ですが、そういった描写が好きな方には読んでみてもらいたい作品です。


ただ、舞台設定に関しての謎が謎のままで最後まで良くわからないのが残念でしたね。

それでもこの心理描写や話の展開なんかは、個人的には非常に好きな感じなので

ぜひ続編を出してもっと読ませてもらいたいと思った一冊でした。


「協力しないくせにずるいよな」「ルールを守れないなら。出て行けばいいのに」

生徒たちはもはや不快感を隠さなくなっていた。溜まったものは口に出し表現する。

(中略)

紀之は平然と水を飲み続けながら思い出した。学校生活のこと。クラスの中では割合上手くやっていたと思う。

合わない人間はいたが、他は普通に会話ぐらいこなした。

しかし、それらのコミュニケーションは虚像だったようだ。これが本来の人間関係。

学校生活での関係は所詮上っ面。                                     (本文より抜粋)


著者:秘密結社