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「競争に負けたオス」の負けグセが子にも…脳科学が突き止めた「格差が広がる」納得の理由

人間心理に脳科学から鋭く切り込む中野信子さんの連載第15回。
強い相手からの攻撃によって慢性社会的敗北ストレスを受けた親マウスの遺伝子が、子マウスへと引き継がれるという研究モデルは、人間社会ではどういうかたちで現れているのか─。さらに虐待する側には、虐待を起こす神経回路も発見された。認めがたい事実を知ることが未来のために必要なこともある─。

ストレスでマウスの遺伝子に影響が
慢性社会的敗北ストレス(Chronic social defeat stress、CSDS)と呼ばれる、広く用いられているうつ状態の動物モデルがある。

 たとえばオスでは、自分の縄張りに別のオスが侵入するとその個体を攻撃するが、侵入した側はその攻撃から自分の身を守るために回避的な行動をとる。この状況が長く続くとき、攻撃を受け続けた側が与えられる負荷は大きくなる。これを慢性社会的敗北ストレスといい、特有の行動パターンや身体的な反応が現れることがわかっている。
一般的な人間の行動パターンを前提に考えれば、必ずしも回避することが敗北とは限らないというイメージがあろうが、これは動物を用いた研究モデルの話であるので、根拠の不明な無意識のバイアスに引きずられることなく冷静に読んでもらいたいと思う。

 さて、慢性社会的敗北ストレスにさらされたマウスについて、糞便の菌叢(きんそう)解析や、腸管の遺伝子発現について解析を行うと、やはり腸内細菌の構成と腸管の上皮細胞において異常が見られた。メスでは、体重が減少して不安様行動を示すようになり、免疫系にも異常が生じることが明らかになっている。オスでは、精子に含まれる遺伝子の活性(DNAに対する化学修飾)の変化が起こり、子どもの性格にまで影響が及ぶことが明らかになった。

子どもマウスにまでストレス耐性が

 米国のアイカーン医科大学の研究チームによって行われた実験で、環境的な要因が父親の遺伝子に影響を与え、精子を経由して子どものストレス耐性に影響を与えるという報告をご紹介したい。

 研究チームは、体の大きさの異なる2種類のオスを同じカゴに入れ、体格の大きなオスが劣った側のオスを毎日10分程度ずつ一方的に攻撃するように仕向けた。そのうえで、さらに効果的にストレスを与えるため、攻撃が終わってからも相手の姿が見えるように、透明なアクリル板で間仕切りをした。また、透明なアクリル板には穴を開けておき、相手のにおいも届くようにした。

 劣った側のオスが十分に慢性社会的敗北ストレスにさらされたところで、精子を採取し、メスに人工授精を行った。人工授精が選択されたのは、オスが性的快感を得て慢性社会的敗北ストレスが軽減されてしまうことを防ぐためである。

 こうして生まれた子どもたちのストレス耐性を調べると、そうでない子どもたちと比較して有意に低いということが明らかになった。また、ストレスを与える環境に置かれる前後でのオスの精子を比較すると、1000を超える遺伝子で発現パターンが変化していた。

 

https://news.yahoo.co.jp/articles/725d6bfa5db934412876ac2789bcb05adeea2e53