161ヶ国目モンゴル️自転車冒険旅★9日目 | 地球一蹴、ちゃりんこ世界一周の旅 ー Rio Cycling Around The Earth

地球一蹴、ちゃりんこ世界一周の旅 ー Rio Cycling Around The Earth

2007年3月9日より 約9年をかけて157ヶ国155,502kmを走る。
I am traveling around the world, over 157 countries on a bicycle from 2007 to 2016.

★Around The World : 3,401 days    : 世界一周3,401日間  

☆161 countries : in Nagano, Japan.    : 161カ国目・現在地:日本 長野県  諏訪地方

★Total Distance 158,406k km                : 総走行距離:158,406km

 

【161ヶ国目🇲🇳モンゴル🚲🏕️自転車冒険旅★9日目】


「勇退から持ち帰るモノ」

YouTubeチャンネル〜9日目ハイライト動画↓

 

 


Around, Terkhiin Tsagaan Lake,Khorgo, Arkhangai, モンゴル
距離:40km. 獲得標高:220mトータル距離:631km. 獲得標高:5,863m。   

 



「成功体験の質を上げるために、失敗体験の量を増やす。」

そして失敗体験を自己他者分析する必要がある。

今回は妻からもフィードバックをもらい、内省猛省している。

標高2,000mのタリアトの町の朝の気温は−2℃。

視界には雪原と雪山が増えたが、寒さは感じない。

今日の目的地は、モンゴル自転車冒険旅の最終ゴール地点「テヒカーン・ツェガーン湖」を一周することだ。

ここを最終目的地に選んだ理由は、外周が諏訪湖一周16kmと同じだと聞いたからだ。

諏訪湖周サイクリングロードが明日オープンするのと同時に、私もモンゴルから祝賀したかったからだ。

まずはタリアトの町からすぐにある、国立公園の入り口を目指す。

ゲートを越えると、早速ダート。

 



ここの積雪やオフロードを想定して、surlyのゴーストグラップラーを持ってきた。

私にはワンサイズ小さいのにも関わらず、妻の愛車「アロ(スペイン語で「輪」を意味する)」を持って来たのに理由がある。

積載量の違いと、なんと言っても2.5inchリム幅で振動緩和力の強いチューブレスレディを履いているからだ。

その効果が、今回の車の轍が作った氷結オフロードに柔軟に対応してくれる。

それでも何度か足を氷水に突っ込んだ。

凍傷の心配で、メンタルも落ちる。

まさにアドベンチャーバイク。

 



走り始めて、クエスト感がでてきた無数のトラック。

実はこのテヒカーン・ツェガーン湖一周の情報は、日本にいる間はぼんやりとしかゲット出来ていなかった。

現地に行けば情報が手に入るはず、そしてそれこそがクエスト感ある旅であり、今回のオフロード状況ならまさにアドベンチャーに相応しいはず。

先に話すが、これこそが今回の失敗の最大の理由。

事前準備を怠り、情報を過信し、自己バイアスにハマり込んだ事。

アドベンチャーロードを進むと、ホルゴ火山のトレッキングルートのトレイルヘッドが現れた。

上り30分、お鉢巡り30分、下り20分と、約2時間あれば休憩も写真もアクティビティも楽しめるようになっている。

軽アイゼンもなく積雪量が気になったが、進めるところまで進む。

LNTを学習するようなシーンもいくつかあった。

案内看板と、オボーの目印が無数にあり、かなりモンゴルのトレイルとして整備されている方だと思う。
 
お鉢巡り一周する事で、周囲の色んな景色が見えた。

冒険旅の目的地も見えた。

 



トレッキング後、さらにオフロードを進むと、目に見えて来たのは太陽光で反射した、真っ白に輝く湖。

テヒカーン・ツェガーン湖は、西洋人から別所でホワイトレイクと呼ばれている。

 



ツェガーンはモンゴル語で、白を意味する。

そしてこの湖は、先程トレッキングした火山で出来た火山湖である。

冒険旅のラストに相応しい美しさ。

積雪の中、感慨深い写真を相棒と共におさめる。

今思えば、ここが帰路のターニングポイントだったのかもしれない。

 



私の目的は湖一周である。

諏訪湖16kmと同じ外周であるが、道は湖岸にサイクリングロードのようにある訳ないので、50kmはある。

私が8歳の時に兄と一緒にした諏訪湖一周自転車冒険旅と同じ感動が、味わえると思った。

結果としては、それ以上だった。

 



今の時期はオフシーズン。

ロッジやレストラン等のリゾート施設はあるが、無人である。

水と食糧に不安を感じたのは、進めば進む程、オフロードがアドベンチャートレイルに変わって来たからだ。

 



とはいえ、栄養補給をしない訳にはいかない。

メンタルを上げるために、「日本から持ってきたお宝ソウルフード第二弾!」を取り出す。

 



故郷の岡谷市の宇宙一うまい鰻屋「観光荘」さんの「スペースうなぎ」だ。

社長の宮澤さん達と、南極自転車冒険で持っていく食糧について話した事がある。

高栄養価、美味、高味覚、個包装コンパクト、保存、衛生状態、ゴミの排出量、そして故郷を感じるソウルフードであること。

などの条件を談話していた。

その頃、宮澤さん達は本気で宇宙食を目指しており、数年かけてJAXAの宇宙食に合格した。

まさに夢の詰まったフード。

 



それをモンゴルの異国で日本を感じながら、かつ南極自転車冒険の夢を思いながら頂き、メンタルが爆上がり。

映像を見てわかったが、本当に美味いものを食べた時は、テレビのコメディアンのような解説は出ずに、ただ「美味い!」の連呼なのだと分かった。

決してボキャブラリー不足を誤魔化している訳ではない(笑笑)

しかし、笑えない状況がしばらくしてやって来た。

 



アドベンチャーロードはさらに酷道になる。

正午を周り、今いる自分の位置からすると、8歳の時の諏訪湖一周自転車冒険と同じで、丸一日かかることが容易に想像できた。

さらに天候は下り坂。

気温の高さから、降雨だ。

積雪の方がなんとなく、気持ち的にはラクなのだが。

一軒のリゾートエリアに管理人の夫婦がいた。

道の状況を聞きに行くと、飼い犬だが明らかにワイルドドック感満載。

執拗に追いかけられ、後方から威嚇程度にバックをひと噛みされた。

飼い主が500m向こうからやって来るまで、自転車を盾にしてのコートチェンジのディフェンス。

 



今回のドック感では最高にヤバかった。

さらにメンタルを落とすことは続く。

犬から逃げて来た後、焦りからロストウェイした。

積雪で轍が分からず、ポールもない道。

唯一の目印はオボーが遠くから見えたこと。

しかしルート沿いには川もあり、誤って落水する恐れもある。

情報過信と、準備不足。

スマホとモバイルバッテリーが切れた。

アナログの紙の地図も持たず、異国の地でスマホのGPS端末情報でアタックした愚者は、そのまま猛省をする事になった。

焦り始めると、ドロ沼化。

水と食糧、行程の行動計画の練り直しをするが、すればする程発狂してしまうばかり。

「俺はなんでこんなところに来てるんだろうか?こんな事して、本当に意味があったのだろうか?」

パニック状態で、独り言。

自分の生き方のリズム作り、南極自転車冒険の練習、今後のビジネスに向けてが目的であった。

「諏訪湖と同じ小浅のホワイトレイクは、自転車で渡れるほどの強度があるのではないか?」

焦りから、決して良くはない打開策を思いつくが、冒険家の安東さんの「白き轍」のバイカル湖の話を思い出し、留まる。

クリスタルブルーのホワイトは、美し過ぎて怖い。

 



目焼けしてしまうので、本来はサングラスを外してはならないのだが、薄暗く映る世界の方が怖くて、明るい白を見てメンタルを上げようと努力する。

妻のパワーバーも全て食べ切った。

ライドと言うよりは、プッシュバイク。

バッテリー残量一桁代のスマホで、かろうじてGPSで位置を確認する。

待受画面には、息子と娘の愛写真。

「そうだ、絶対にこんなところで死んではならない!」

死を意識した瞬間、人は底力がやって来る。

こんな時こそ冷静な考えになる。

「もしもの事を考えて、写真や動画を撮って、ダディの最期を伝えねば!あ、妻に財産の話をもっとしっかりして来れば良かった!いやいや、そんな話より前に進んで生きて帰ればいいじゃん!カウンターエクスピリエンスで、この経験を乗り越えれば、また一つ南極に近づくじゃん!」

今回のYouTubeにはすぐに載せらなかった、一眼レフカメラでの動画をどこかでアップしていきたい。

迫る危機感と、意外に冷静にセルフ動画を撮る自分がおかしく感じた。

「前に進めば、死ではなく必ず生に近づく!」

冷静さを取り戻すと、身体も底力が出る。

プッシュバイクだけではなく、ライド出来る場面でライドをし、ペースが上がって来た。

東側と西側の行き来が車やオートバイで物理的に出来ない峠の積雪の壁も、自転車を持ち上げて超えた。

湖の端が見えて来た!

おそらく残り2〜3時間で国道に出れる!

そこまで行けば助かる!

先程までは家畜もいなかった所に、ヤクなどが現れた。

人の存在があるはず。

すると一台の車が遠くから走って来て、手を振って止めた。

自力脱出できるの確認するために、道の不確かさの不安を消したかった。

車に乗っていたのは、ローカルの遊牧民系の方々。

言葉が通じないが、500m坂の上に家があり、そこに電気があるので携帯充電をすれば良いというような、言葉もない会話が生まれた。

 



自転車を車の上に載せ移動した先には、ゲルがあった。

ひとまず入ると、家の主人が待ってましたと言わばかりのタイミングでのディナータイム。

 



ヤクの舌や肉、馬のミンチのボーズ、ヤギや羊など、五畜の肉鍋だった。

乾燥した私の肌に、ギットギトの脂の入った肉は吸い込まれていった。

ゲルの中、そしてこの鍋で、気がつくとライドよりも汗をかいていた。

モンゴル民族の旅人や他人に対しての優しさが、心に染みる。

 



結果的に私がここで勇退を決めたのは、彼らのこの真摯極まる好意を無碍にしたくなかったからだ。

主人は言う。

「この先も積雪だ。オオカミもいる。車でタリアトまで戻った方がいい。」

そんな彼らが、自転車移動を単純に酷だと思っただけかもしれない。

自分でも不思議なくらい、彼のメッセージを天の声だと受け入れた。

自分の気持ちも、自走したい思いが薄れていった。

車が来るまでの4時間、ゲルの中で靴を温めさせてもらったり、彼らの生活の話を聞いたりした。

 



20時、陽の長いモンゴルにも帳が降りた。

車がやって来て、自転車を載せて町まで出発。

 



驚くべきことに、車はホワイトレイクの上を走り出した。

町までの最短距離20kmを雪上ライド。

しかもよく見ると、轍がしっかり出来ている。

彼らの通勤路になっていた。

ローカルでしか判断出来ない状況や、情報はそこで定点居住しているからなのだろう。

最後の最後まで度肝を抜かれる体験だった。

夜にわざわざ町まで送り届けてくれ、宿も手配してくれた。

タクシー代が100ドルあってもおかしくない状況なのに、これからもモンゴルを楽しんで行ってねと、カッコよく夜の湖に消えていった。

「今度は夏、リベンジしに来るよ!」

勇退と言うからには、何を持ち帰ったか、これから冷静に分析して行かねばならぬ。

時間をかけて。

人は、経験値こそ最大の武器だ。

私の好きな冒険家のライボルト・メスナーさんが言っていた。

「冒険家とは、限界到達点を見誤らない者だ。」

限界値を上げるのに、“少しずつ”が大事なんだと、私は受け取った。

「少しずつ、少しずつ。」

妻に怒られながら、この日記を残す(笑笑)