おだちんのこと。2回目「BLUFF」 | Gwenhwyval(グウェンフウィファル)の舞台日記

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鑑賞は生中心主義。自分の眼でライブで見たことを中心に、語ろうと思います。


2024年9月7日15時公演

これまた棚ぼたで拝見。というか、もう一度観れるのがとてもありがたかった!
ネタわかってると面白さ減少…という作品では全くないので、さらにお芝居の細部を観られて、楽しめました。

風間柚乃。
彼女のことは若い頃から聞いていました。もうずいぶん前に卒業したけど、この組に友人の親戚がいたのです。
いや、そんなことよりも彼女はその出自で入学前から話題でもありました。
美人女優で名高かった夏目雅子の姪…なんと27歳で旅立たれているのですね…。
宝塚のことを知らないのにあーだこーだと書くメディアは「この血筋、未来のトップスターか?」なんて言ってましたが、あのーそんなひとたくさんいますから。スポーツ選手の親戚やら芸能界のだれそれやら…。もちろんどっかの社長の娘とかも。

そんな事情が1ミリも影響しない…とは言いきれませんが、風間柚乃はその特異性で早くから役がついた印象です。
前述の月組子によれば、本当にお芝居が好きで、若い頃からお稽古初日までに完璧に他の人の科白まで入れてきて、暇さえあればの「なりきり」稽古。
学校でたばかりのなんなら17歳くらいの女の子なんて「みんなと一緒」がよい、まだまだ子どもで、変人扱い(?)は恐ろしいというもの。
でも彼女は、歯牙にもかけなかったんだな。自分の好きなもの、行く道がわかってたんだろう。
それには、芸能界やスポーツ界が身近で、そんな人たちが周りにたくさんいたという事実は影響してるだろう…とは思います←個人の妄想です。周りとの協調を最優先課題にしない。

そして今の彼女、たとえば「BLUFF」でいうと、ストーリー的にあっと驚く騙しやどんでん返しがあるわけでもなくて、なのに芝居で魅せる。
「演じてます!」というのがなくて、ひとときの劇場体験を楽しませてくれる。
あ、もちろんシェイクスピアとかギリシャ悲劇ならまた違った演じかたができるひとだと思いますけど、これは洒脱さが身上の正塚芝居ですから。

もっと「いいなー」と思うのは、主人公の芝居力量がずば抜けてみえるのではなく、周りもみなレヴェル感と風味を揃えてるとこ。
舞台でドノヴァンが圧倒的に目立つ!ってわけではないと思うのだけど(なにしろ1/3くらいは違う人になってるから)、その案配がまたいい感じ。バランスみて「引き」もできる風間柚乃。
そのための、裏の紐帯強いんだろうな。

私の周りには歌舞伎猛者みたいな人も片手くらいいて、みな、月組贔屓です。
宝塚に何を求めるかはひとそれぞれだし、私はどっちかというというと歌やダンス、かっこよさに目が行くほうなのですが、これだけ芝居好きの口うるさい連中が月を誉めるのは、やはり全員が緻密に脚本を読み込んで、舞台として成立させてるからなんだろーなーと。

芝居の面白さは、同じ科白でも演じる人で違ってくるところ。それは単純にいうと脚本の解釈の違い、役の性格付けの違いで、それを的確に表現できるかどうかは演技の技術。どちらも必要なんでしょう。知性と身体能力の併存。
友人が言っていましたが、この「BLUFF」と「リーフィー」、とっかえっこしてたら果たしてどうなっていたでしょうか…。想像してみるとなかなか面白い。

私は宝塚に、この世にないようなファンタジー感(←こんなひといないだろう!みたいな)を求めてしまうので、リアリティは少し優先順位下がる。
だから、舞台を観ていないときにはおだちんを
「上手いよねー」「月組っぽいなー」
とクールに評しがちなのですが、いざ舞台を観てみるとやはり惹き付けられてしまいます…彼女が描く演劇の世界に。

全組トップスターが全て彼女タイプでは宝塚らしさを喪失しまうけど、こんなトップスターがいるのはまた素晴らしい。宝塚歌劇が演劇界の一部をなしているのならば、こういう力量を備えておくのも必要だと思います。

「BLUFF」は本日東京千秋楽。いい舞台をありがとうございました。西でもたくさんの人を魅了してください!