男役の生れいこ姫、見納めた。 | Gwenhwyval(グウェンフウィファル)の舞台日記

Gwenhwyval(グウェンフウィファル)の舞台日記

鑑賞は生中心主義。自分の眼でライブで見たことを中心に、語ろうと思います。


2024年6月22日11時公演

生のれいこちゃん、男役月城かなとの見納めでした。千秋楽は都知事選挙と重なってますけど、そして月担友人は期日前投票行くって言ってますけど(えらい!)久しぶりに配信買おうと思ってる私。
やはり最後の姿は観ておきたい。

千秋楽チケットのツテなど消え失せた身としては、配信は本当にありがたくて涙が出そう。
ちらっと前記事にも書きましたが、配信は旅番組を見るのに似ている。見所を的確にプロがおさえてくれて、過不足なく分かりやすく提示してくれます。
…なんだけど、自分の見たいところがあるとは限らないです、人の目、大多数が見たいところの目、だから。
ああ、その角、右に曲がってほしかったな、みたいな。

もちろん、音波や光の波が生観劇とは違うのは仕方のないところ。
私なんかが、あのときはそうだったなーと繰り返し繰り返し反芻しては涙し、切なくも懐かしく思い出せるのは生観劇した舞台だけです。映像は「知識」としては機能するけどそれ以上はなかなか難しい…(と、思う)。
もちろん、電子的に処理された情報でも感動を呼べる作品や演者はいると思いますが。
旅番組で「なんて素敵なところなの!今度行ってみたい!」と思わせるような、そんな別軸の感動。

あら話逸れました。さて、最後のれいこ姫。
…うーん、私はね、やはり雪組時代からの彼女を思い出して涙が止まりませんでしたわ。
ガツガツした野心みたいなものはまったく感じず…なんというのかな、運命を享受します、という雰囲気があったと思う。
無理しているイメージがなく(←努力してないという意味にあらず)、いつのまにやら自然に路線スターの路を歩み、はーなるほどねという感じで月に異動して、いろいろあったカオス時代の月組もさらりと乗りきり…。
クールビューティ、というにはあまりにも華やかな出来すぎの美貌なのだけど、頭脳がクールなんだと思う。

だから、れいこ時代は本当に安心して見ていられました。どんなのが来ても(先生方、すみません)大丈夫!っても思えた。
月組子の咀嚼力めちゃすごい。脚本的に「あら?」みたいのもなんとか説得力持たせようとしますよね。だから初見では「あら?」なんだけど何度かみるたびに納得していまう。この力業よ。

私は…のぞみさんが雪組に異動してから本腰入れて雪組を見ておりましたので、あーれいこちゃん取られてしまったかー💦と思ったのも事実です。
でも、芝居の組に行ったのは結果的によかったと思います。彼女の資質なら月組にも馴染んだと思うし…って、どんな苦労があったか知りもしないのにこんなこと言ってはいけないか💦
彼女が雪組にステイしていたら、どんな風な組模様になったかな。2期上の咲ちゃんと、結局ほぼ同時期に卒業することになったわけだから、やはりどこかでどちらかが別組のトップスターになる筋書きだったのだと思うけど…。

宝塚は1組だけでは語れない。そこはやはり営利企業で、全組それぞれ集客できなくてはいけないんだから、バランス加味した異動は当然のこと。特定の組や学年に片寄るのは采配が下手なのだ。
(◯組が一番集客してる!とかファンがいうのはほんと、しょうもないと思う。あなたの功績か?)

そんな中でれいこちゃんは一見流れに身を任せたかのように、でも実は凛としてきちんと役目を果たし次期に繋げて、去っていこうとしています。
次の月組が果たしてどんなテイストの組、集客力があるのかは蓋を開けてみねばわからず、でも彼女は彼女の中で最善の選択をしたのだろう…。

と、お芝居の間中、つらつらと考えてました(笑)

ショーは、まあ、めちゃくちゃオーソドックスでよろしいねー。結局オーソドックス最強。卒業するひとたちにも温かいし。序列もきっちりわかりやすい。
れいこちゃんが雪の中(?)月にお戻りになるシーンときたら、一斉にオペラが上がるのに驚嘆でした。みなさま美しいものには目がない。当然ながら。
結局このシーンがショーの白眉で、月城かなとの最大の美点の表現なんだなと、強く思った。
静寂で日本的、清冽な美。

フィナーレの「宝塚賛美」や「仲間との絆」には、ごちゃごちゃいうかたもおいでかも知れぬが、110周年記念作品なんだから当たり前でしょう。

と、ぼーっと眺めているうちにショーも終わり、ライブでの月城かなとを見納めた私なのでした。
未練がましいが、も少しれいこちゃんの良さが引き立つお芝居ならよかったな💦彼女の美しさやお芝居の力…人間の弱さや過去の傷からくる葛藤とか、それを打ち破るさまとか、もっと分かりやすく見たかった…。
でもまあ、シックな英国調の背景と、淡々とした交情の物語はそれはそれなりで、もはや文句は言いますまい(言ってる?笑)

当代の宝塚を代表する男装の麗人、月城かなとはこうして、静かに泰然と、私の目の前から消えていきました。まるで夢だったかのように。