
ミュージカルファンならほぼ全員名前を知っているような、12人の豪華なメンバーを揃えた、日生劇場60周年記念作品。観に行ってきました。
昨日の「千と千尋」とは打って変わった饒舌なブロードウェイ作品。
2001年9月11日の同時多発テロに巻き込まれ、行き先変更を余儀なくされたパリ発ダラス行きの飛行機が、カナダのニューファンドランド島に着陸する。
偶然乗り合わせた乗客たち、そして受け入れた島の住民たちの5日間の物語を、明瞭な科白と歌詞、そして動きができる俳優たちが畳み掛ける。
100分ノンストップなのですが、感じさせない構成が素晴らしかった。
前日観た「千と千尋」が演出の力ならば、こちらは脚本と役者の力量、と言えると思います。
スピーディな場の転換(全部役者がやる)と説明科白をパワー全開で目まぐるしく演じる役者さんたち。いったん始まったら止まらない(これはまあ、どの作品だってそうだけど)前へ、前への推進力。
何でも、12人で合計100くらいの役をやってるんだそうです。でもそれが不思議と混乱しないんですよね…これは凄い。もちろん全員「演じ分け」が上手い、ってのもあると思うんだけど、多少わからなくても大筋には影響しない絶妙なさじ加減というか、根底に流れるものが分かってればオッケーという骨太感というか。
宝塚OGは、瞳子さん、ちえちゃん、みゆちゃんの3名がご出演。
瞳子さんは何をやらせても本当に素敵。望海風斗のこれからは、彼女みたいな道を選んでいってほしいなーと、本当に勝手すぎて全国ののぞみファンから叱られそうですが、ずっと思っています。
ちえちゃんは、なんとなく雑味のあるパワフルな役どころがめちゃくちゃお似合い、ナイスキャスティング!ダンス(群舞だけど)シーンは飛びきりイキイキしていて、しみじみ懐かしかったです。
みゆ姫はすっかり細くなり、相変わらずの芝居巧者っぷり。私自身は多分退団後初めて観たので、活躍がとても嬉しかったな。のぞみさんの雪組2番手時代を思い出しました…。
ダンディな町長他の橋本さとしさんの素晴らしい滑舌やら、浦井&田代のカップルやら、もりくみさんの存在感やら…ほんとうに上手い方々ばかりで、ノンストレス(って、普段どんだけストレス観劇なのよ)。
中でも濱田めぐみさんのラスト近くの歌は白眉!
ジェンダーレスを語った歌なのですけど、私こういうのに弱くて…涙が勝手に噴出して困りました。ちからづよい希望の歌です。すぐに次の科白に移ってしまって拍手する暇がなく、本当に残念だった…喝采に値する熱唱でした。
9.11といえばアメリカとアラブの戦いの象徴であり、微妙な話でもあると思う。
そこに敢えて、切り口ずらしているとはいえ切り込んで作品を創出して世間に問う。その恐れのなさ。
アメリカという国には(個人的な好みとして)いろいろ文句はあるけれども、こうした面はやはり凄いなと思います。
日生劇場という、この麗しい劇場の周年作品だから、なんのかんのと言いつつも人間の善き面を信じる、明るい希望の作品を招聘したのだと思います。
本当によい時間を過ごさせてもらった。
泣いて化粧が崩れたね、といいながら、アフターの大衆酒場へと向かった私たちなのでした。