帝劇「千と千尋」初日。ジャパニーズエンタメ炸裂! | Gwenhwyval(グウェンフウィファル)の舞台日記

Gwenhwyval(グウェンフウィファル)の舞台日記

鑑賞は生中心主義。自分の眼でライブで見たことを中心に、語ろうと思います。


2024年3月11日18時公演(初日)

今年ロンドンで公演するという、話題の舞台。初日にお誘いいただき、行って参りました!
2022年は観損ねていたので、初見です。

映画は一体いつ観たのか…人間世界に帰ってくるという予定調和以外、もちろん強烈な複数キャラは記憶しておりますが、ディテールはかなーり忘れておりました…多分テレビで観たんだなー…と、いうのが実にいい案配で、はい、めちゃくちゃ楽しめました!
これはロンドンで絶対受けると思う。
日本趣味の舞台美術といい、海外仕様といっても過言ではなし。

科白であーだこーだと語る西洋理屈の戯曲ではなくて、緻密な演出と職人芸に彩られたファンタジーの極北。
でも「アリス」を産んだ国だもの!演劇の国の観客はきっと楽しんでくれるに違いない。

これ、ケアードに頼んでるってことは、最初から海外公演が視野に入ってましたよね…(←単なる妄想です)

カオナシの意味するものやら、八百万の神々へのノスタルジアやら、既にさんざん語られている名作(が原作)ですのでそれは他の優れた語り手に譲るとして…。
私、いつもアニメってすごいなと思うのです。現実にないものを、イマジネーション頼りに描き出す。
でもこの「千と千尋の神隠し」は名作の誉れ高いアニメがあって…それをアイディアと演出と素晴らしい裏方(と言っていいのか既に分からない)のパワーによって、三次元に戻してる。
この、行ったり来たり。
アートと、知的な格闘技。
面白いなーと思う。これぞ、舞台や映画を観る楽しみ…。

好きなシーンは、千尋とカオナシが電車に揺られるところ。
少し長いのだけど、それが全く長くない。
いろんなことを考える。
今日の私は、母のことを想った…。
まだまだ元気な頃だったのに母はある日
「なんだかね、テレビのニュースでやってることが別の世界のことみたい」
と言った。
そうかもしれない。私も最近、そんなことを思う。少しずつ少しずつ、潮が引くように世間の喧騒の最前線から離れていく。関係ないことが増えていく。
「死ぬまで現役」も素晴らしいと思うけれども、そうではない現世からの離れ方も、あってもいいのかも…。
…なんて、想った。たいしてストーリーに関係ないのにね。
それともこの電車が、黄泉へ行く乗り物だから?

大切なメッセージ。
自分の名前を手離してはいけない。
昔の日本人は、本名を知られると運命を握られると考えていて、本名はごく親しい人にしか知らせていなかったという。
官職や住んでいる場所で呼ぶ。藤壺だの式部だの北政所だの。
名前を大切に…それは運命だから。

観たばかりなのに既にもう一度観たいくらいの、素晴らしくよく出来た舞台でした。
希望のキャストが東京で取れないからと、名古屋遠征の方もいるらしい。迷っておいでの方はぜひご覧くださいませ。深読み族も、楽しければよし層も、満足して家路につけると思います!